第一章:禁じられた洞窟
第一話 禁じられた洞窟
数年前の事である。
都会の街から離れた山奥に、一つの集落があった。
交通機関の整備もままならない不便な土地ではあったが、集落の住民は明るく、互いに支え合う精神で平和に暮らしていた。
いたって普通の田舎の村。
…しかし一つだけ、その土地には『特別』なことあがった。
付近の山麓にある洞窟の存在である。
その洞窟について、村には一つの言い伝えがあった。
『絶対に近づいてはいけないよ』
『洞窟に喰われるぞ』
その口伝は、この村ができる遥か以前からの伝承であった。
◆
人間、生きていれば不幸は平等に訪れる。
きっかけやその大きさ、置かれた状況は違えども、必ず不幸はやってくる。
その集落で暮らす男性に、一つの不幸が訪れた。
最愛の息子を不幸な事故で失ってしまったのだ。
誰が悪いわけではない。運の悪い事故だった。
村近くの崖から滑落し、その若い命を失ってしまったのだ。
息子を失った現実に、やり場のない悲しみを抱え、男は茫然自失としたままで、山麓の森を彷徨う。
鬱陶しい程の日差しが、森の木々の隙間から木漏れ日を差し込ませている。
そして男は…偶然にも『絶対に近づいてはいけない』洞窟の付近に足を踏み入れてしまった。
「あ…。」
自身が禁忌の場所にいる事に気付いた…その瞬間。
男の視界の隅に、ゆらゆらと揺れる黒い影が映った。
「あれは…?」
男が、その奇妙な黒い影を注視した時。
その影はぐにゃりと霞み…。
男にとって馴染みのある形にその姿を変え…。
「まさか…。」
男は息を呑む。
「お前なのか?」
…亡くした息子がそこにいた。
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