第15話
その悲惨さに同情する気持ちはあったが、それでもサックスだけが取り柄の平凡な高校生に何ができるというのだろうか。
「いや、そう言われても、俺は……」
「よし! 皆のもの! 大魔法使い様のおもてなしの宴を開こうぞ!」
キダケ村長が村人たちに呼びかけた。返事を待たずに村人たちは三々五々に散っていき、どこからともなく椅子やテーブルや食料を持って戻ってきた。
「さあ、大魔法使い様にエルフ様、お二人はこちらへ。呪いを解いていただいたせめてものお礼です。さあ、食べて飲んで」
俺とフラウは用意された席へと座った。村人たちがうやうやしく食事を運んできてくれた。目の前に皿が置かれ、そこに乗っていたのは、パンひと切れに干し肉ひと切れだけだった。お礼の宴と言うわりに、食事が質素すぎて切なくなった。
俺はフラウの方を見た。フラウはエノ村に来たばかりの時の難しい顔をしていた。俺は小声でフラウに話しかけた。
「どうする?」
内緒話をするようにコソッと話しかけた俺に対して、フラウは俺の方をガッツリ見て言った。
「タダシはどうしたい?」
あまりにも強い眼差しでフラウが俺を見るので、真剣にならなければいけないと思って、フラウにしっかり向き直った。
「俺は……」
給仕をしてくれた村人が俺の傍で俺が食べ物に手をつけるのを待っていた。この食事をいただくということが四季成獣退治を引き受けるという返事なのだろう。
少し離れたところで幼い子供を連れた母親が立っていた。母親は子供に何かを諭すように話しかけていた。
「ダメよ。あれは勇者様の食べ物なのよ」
子供は泣いていた。ひょっとしてなけなしの食料を俺に差し出しているのではないか。容易く想像できて胸が痛んだ。それだけ必死にエノ村の人たちは俺に助けを求めているんだ。こんな、なんの取り柄もない平凡な高校生に。藁をも縋っているのだ。
フラウは俺をじっと見つめていた。食事に口をつけず、俺の返事を待っていた。
「フラウ、俺にできるかな? 魔物退治」
「できるかできないかじゃなくて、やるかやらないか」
「そうだよな。俺でも、フラウの魔物退治のお手伝いならできるかな?」
「一緒に戦う、の間違いでしょ?」
フラウは笑った。俺は覚悟を決めて干し肉に齧りついた。
「キダケ村長、俺、四季成獣をやっつけます」
俺の言葉を聞いて村人たちが歓喜の声をあげた。キダケ村長は俺に向かって拝むように手を合わせた。フラウは笑いながら干し肉に齧りついた。
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