第12話
「これは恐怖で我を忘れているというより、何かの呪いを受けたのかもしれない」
フラウが難しい顔をした。
「呪い? どうやって解くの?」
フラウの難しい顔が一層の深みを増した。
「呪いを解くなら僧侶を連れてくるしかない」
「僧侶はどこにいるの?」
「クルエド王国のお城に行って派遣してもらうか」
俺たちの目的地、クルエド王国のお城まで行かんと僧侶はいないのか。フラウの村を助けてもらうお願いをするついでに、エノ村の呪いを解くお願いもすれば。そこまで考えてふと思った。
「夜にさ、クルエド王国の加護の話してたじゃん」
「ええ」
「エノ村は加護を受けられる範囲だよね。この状況はすでに伝わっていて、すでに騎士団が派兵がされているんじゃない?」
「そうだといいけど……」
フラウの難しそうな顔は元に戻らなかった。村人たちはまだ阿鼻叫喚を続けていた。泣き続けたり叫び続けたり怒り続けたりするのもツライだろうな、叫び続ける体力もやがて尽きて死に至るのではないかと思うとゾッとした。呪われた村人たちをなんとかしてあげたいと思った。呪いに関する知識がまるでないのを歯痒く思った。
「タダシ、それ吹いてみて」
フラウが俺のサックスケースを指差した。
「え? サックスを?」
「そう。昨日さ、タダシのサックスを聞いて心が穏やかになったんだよね。タダシのサックスにヒーリング魔法って備わってない?」
俺は顔の前でブンブンと手を振った。
「ないない、絶対ない。俺、ただの高校生だし」
コウコウセイ? 聞き慣れない言葉に首を傾げながら、フラウが俺の顔を覗き込んできた。
「でもさ、タダシのサックスを聞いてる時、昔、教会で僧侶に祈ってもらった時の感覚があったんだけど」
俺はもう一度ブンブンと手を振った。
「ないないないない!」
「でも、ものは試しで一回吹いてみてよ。呪いが解ける気がするの」
フラウがずいっと俺に顔を近づけて超至近距離で見つめてきた。薄い毛色の長いまつ毛に大きな緑色の瞳。その上目遣いは反抗期の少年の頑なさを壊すには、十分な威力を持っていた。
「しょうがないなぁ」
俺はニヤけ顔をフラウに見られないように後ろを向いて、そそくさとサックスを組み立てた。
村人たちはまだ阿鼻叫喚を続けていた。なんてうるさいオーディエンスだ。まず村人たちを黙らせよう。いきなりトップノートで、俺は馬がいなないたようなデカい音を吹いた。
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