第11話
そのまま湖沿いを歩いていくと、やがて死の森が終わった。その先には、死の森のおどろおどろしさとは打って変わって、爽やかな風の吹く草原が広がっていた。ここまで来るのにかなりの時間がかかった。朝早くに出発したのにもう日が暮れ始めていた。
「腹へった〜」
「なによ。情けない」
「だって今日は、朝つゆを飲んだ以外なにも食べてないし」
「情けない。日本の人間族の男ってのはこんなにもひ弱なの?」
あ、バカにしたな。日本はこの世界みたいにワイルドな生活しなくても生きられるんだよ。なにせ日本にはコンビニがあるし、腹へってもすぐ食べ物があるし、男って言っても俺はまだ高校生で子供だし。と思うことは色々思うところはあったが、これまでの逞しいフラウを見すぎていて、面と向かって文句が言えな買った。俺はブツブツと不満を漏らした。
「もう少し行けば村があるから、がんばれ!」
ウジウジする俺をシャキッとさせるためか、フラウが俺のお尻を蹴った。ううう、なんでこんな目に。俺はあまりの旅のツラさと、自分の不甲斐なさに泣いた。
「ほら行くよ」
時折フラウにお尻を蹴られながら、俺はなんとか村へとたどり着いた。
「え? なんだか、すんごいお取り込み中な感じなんだけど」
村の中は泣き声と悲鳴と怒声とが入り混じり、混沌の世界となっていた。ある村人たちは身を寄せあって泣いていた。ある村人たちは村の奥を指さして恐怖に震えていた。ある村人たちは輪になって武器を手に拳を突き上げて吠えていた。
村の中を見ると、ほとんどの建物は壊されていて、奥の方は吹雪でも吹き荒れたかのように雪まみれ、氷漬けになっていた。
「なにがあったんですか?」
フラウが近くにいた村人に話しかけた。
「も、もう終わりだ!」
村人は怯えて震えていた。
「一体なにがあったんですか?」
「も、もう終わりだ」
「だから、なぜ終わりなのか聞かせてください」
「も、もう終わりだ」
その村人はそれ以外のことを言わなかった。恐怖に頭を支配されて我を忘れていると言ったところだろうか。他の村人に話を聞こうにも皆同じように恐怖に囚われているのか、誰も話を聞いてくれない。
「なるほど。RPGのNPCはこんな状態の人たちなんだな」
「RPG? NPC? なにそれ?」
「いや、なんでもない」
壊された門柱に「エノ村」と書かれた看板が残っていた。俺は異世界転生でパワーアップした肺活量を活かして大声で呼びかけた。
「エノ村の皆さ〜ん!」
近くにあった建物の窓ガラスを震わせるほどの大声が出た。村人たちは俺の声に一瞬動きを止めたが、声が途切れるとまた同じ行動を繰り返すのだった。
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