第8話 武器屋の親父と、現実
狩りを始めてから随分経ったのだろう、日は傾き、空はオレンジ色に染まっていた。私は15匹目の一角うさぎをインベントリへしまう。
たった15匹だったのには理由がある。一角うさぎを狩ると、矢は2回の使用で壊れるのだ。矢筒に刺さっている矢は20本。地面に向かって放つことで、5回は壊れない『スライム』を多く狩ることになってしまったのだ。
それにしても、千匹斃すとなれば、矢はいくらあっても足りない。帰りに武器屋へ寄って、矢の素材を聞き、今狩れる魔物から素材を得て……自分で作ればタダだよなあ。昔から、手先はそれなりに器用だったんだ。若い頃に流行ったプラモデルが好きで、大量に作ったりしたなあ。最終的には自分のオリジナルまで作ったり……。こんなところで役に立ちそうだなんて、やはり、人生に無駄は無いのだろうと思えた。
★★★
「こんばんは」
私は武器屋の扉をノックする。中から親父さんが出て来た。
「お、シュンじゃないか! 狩りはどうだった? まあ、中へ入れ! そこの椅子に座って待ってろよ!」
親父さんは、わざわざ奥から飲み物を持ってきてくれた。そして、クロスボウのことや魔物のことを細かく聞いてきた。
「ほお、一角うさぎでは2回でダメになるか。スライムで5回は多いほうだぞ! ふむ、お前さんはクロスボウと相性が良いんだな。それで、何が気になったんだ? そのために来たんだろう?」
「あ、はい。矢が二十本では足りないようなので、矢の素材を教えてほしいのです。明日からは、素材を中心に狩りたいな、と」
「ガハハハハッ! お前さんは面白いヤツだなあ! ん? まさか……な。もしかして、自分で矢を準備しようと思っているのか?」
「あ、はい……。やはり、素人が道具を作るなんて、無謀でしょうか?」
「ガッハッハ! なるほどなあ! お前さん、消耗品だから金がかかると思ったんだろ? 本当にお人好しなんだな、気に入ったぞ!」
相変わらず「バンバン!」と背中を叩かれ、私はまた咳き込んだ。
「良いだろう。特別だぞ? お前さんには矢の素材と作り方を教えてやろう! そうだなあ、お前さんが狩れるレベルの魔物で矢の素材だな? 矢じりは『ゴブリンの歯』が使えるな。羽には『爆走コッコの羽毛』辺りか? まあ、森の手前にいる魔物たちだから、明日にでも狩ってくるといい。ああ、そうだ。矢は何本残った? たった一本!? 明日は倍、持っていけよ!」
親父さんは矢を四十本渡してくれた。本当に有り難い。
「ありがとうございます! 頑張ります!」
いつも通り、深く頭を下げて受け取ったのだった。
★★★
早朝の水汲みを終え、クタクタになりながらも森へ向かう。クロスボウも矢筒の中も問題なし! さあ、森へ入ろう。しっかりと『指差し確認』してから森へ入る。
最初に目の前に現れたのは、スライムだった。昨日の後半に気がついたのだが、どうやら魔物の左上に浮いている文字は、次のレベルまでに必要な魔物の数らしい。スライムの数字は六十九。昨日までに、スライムは三十一匹斃したことになる。
「悪くはない数字だよね。スライムは素材がないから問題ないけれど、素材としてインベントリに入れるなら、大量に狩っても持って帰れないもんね」
そんなことを考えながら、森の入り口から少し奥へ入る。ジルからは、入り口から五百メートル奥に進むと、上級の魔物もいるから気をつけるようにとのことだった。今は百メートルの目印となっている木から先には進まないように気をつけている。
「うわあ、人型の魔物もいるのか……」
少し遠くにいる魔物を見つけると、緑色で二足歩行している魔物がいた。パッと【図鑑】が立ち上がり、説明を開いてくれる。慣れてくると、『こうだったら良いのに』が、実際に反映されるらしい。そして、ゴブリンを斃して得られるスキルは風魔法だった。
だが、素材となるゴブリンは人型だ。あの魔物の歯を使うのか……。
「ええっ、ゴブリンは人型!? ち、ちょっと、あれを加工するのは……」
仕方ない。恐らく私には無理だと諦めて、狩りはするがギルドに買い取ってもらおう。どちらかといえば、爆走コッコをメインで狩れば無駄にはならないだろう。
そうやって、狩りを続けていると、あっという間に太陽が真上に来ていた。もう昼か……。矢が残り二本になったところで、親父さんの武器屋に戻ることにしたのだった。
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各魔物1000匹でMAXスキルらしいけど、ドラゴン1000匹は無理だって! 月城 蓮桜音 @ayu0218
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