第2話 短剣で探検?
目をギュッと閉じて、気持ち悪さに耐えていた私は、体に衝撃が走った瞬間に気を失ったらしい。目を開くと、子猫と共に草むらに倒れ込んでいた。
「いたた……、すごい衝撃だったなあ。ああ、君も、本当に小さくなったんだね」
私は可愛らしい子猫を片手で抱え上げようと手を伸ばす。ん? 私の手のひらには乗りきれないな。ああ、私も小さくなっているのを忘れていた。子どもになった私の手は小さく、片手では心もとなかったので、両手で優しく抱え上げた。子猫は「みゃー」と鳴いて、手に頭を摺り寄せた。
「さて、まずは何をすべきだろうね? 魔物を斃すとしても、武器が必要だよね。持ち物を確認しようか」
私は腰に下げているバッグを開け、顔を近づけて覗き込むが真っ暗で何も見えない。少しビビりながらも、バッグの中に手を入れてまさぐる。最初に手に当たったのは、刃渡り二十センチほどの短剣だった。思っていたより重いな。武器があることに安心した私は、他の持ち物も確認していく。
バッグに入っていたのは、『傷薬』と『水』だった。え? もうすぐ日がてっぺんに来るのだが、昼飯はどうするんだろうか。私は貴族っぽい猫が言っていたセリフを思い出す。『分からないことがあれば、ステータスの【図鑑】を――』ああ、図鑑ね。その前に、ステータスの見方が分からないんだが……。たしか、部下が『声に出して詠唱する必要があるんですよね!』って言ってたな。
「ステータス」
「フォン」という音と共に、目の前にモニターのようなものが現れた。ほお、これがステータス画面か。ふむふむ、私の名前がカタカナで表記されているな。『シュン=コーダ』あの猫が登録してくれたのだろうか。とりあえず、【図鑑】を見てみよう。そっと【図鑑】の文字をタップする。ん? 反応しないね。これも声に出す必要があるのかな?
「【図鑑】」
ステータス画面が【図鑑】の画面に切り替わった。まるで、検索ソフトの画面のようだ。下の方に、簡単な説明が書いてある。
『この図鑑は、実際に見た魔物のみ、説明文が現れます。頑張って魔物を探してみましょう!』
「おいおい、これこそムリゲーってやつじゃないのかい?」
私は溜め息をつき、皮の防具の隙間に収まっていた子猫に気づいた。
「ああ、こんなに小さいのでは、私が食事を用意するしかないよねぇ……」
困った顔で覗き込む私に、子猫が森に向かって指……ではなく前足を向けた。
「あそこで狩りをしろと言っているんだね?」
苦笑いする私に、容赦ない子猫は大きく頷く。
「仕方ない……少しずつでも慣れないとだね。いつまでもお腹を空かせておくわけにもいかないからなあ」
私は大きく息を吸って、バッグから短剣を出して構えた。当たり前なのだが、端から見れば、へっぴり腰で頼りないだろうなと自嘲しながら、森に向かって足を進めるのであった。
★★★
森に入って五分。私が初めて見た魔物は『スライム』だった。【図鑑】を開くと、『スライム(ノーマル)』と表記があった。ポヨンとしたフォルムの絵と、説明が書いてある。
『跳ねて攻撃してきます。核を壊してください。食べられません。斃すと、水魔法が使えるようになります。【詳しくはこちら】』
ん? 【詳しくはこちら】が気になるな。つい、いつもの癖でタップする。スマホにやっと慣れた世代の私には、タップすれば開くイメージが強いのだ。そんなことを考えていたら、タップした【詳しくはこちら】が開いた。
『毒:なし。素材になる部位:なし。食用ではない。次のスキル、※※※※※』
次のスキルがモザイクになっているね。斃してみれば解放されるのだろうか?
私は短剣を大きく振りかぶり、スライムのもとへ走って行って攻撃した。
「ひょいっ」
スライムが私の攻撃を避けた。何ということだ。スライムとは、こんなに俊敏だったのか! 私はこのスライムを一匹斃すのに、三十分を要したが、何とか核を破壊することができたのであった。
「うわ、ぐちゃぐちゃになっちゃった……」
ゼリーを落としてしまったかのような崩れ具合に、少し気持ち悪くなる。これを千回? 千匹斃せば最強って言ってたけど、本当にこれでいいのだろうか? 悩む私の懐から飛び出した子猫は、ぐちゃぐちゃになったスライムを食べ始めた。
「うわっ! こら、そんなもの食べちゃ駄目だよ! お腹壊すから、ペッてして、ペッて!」
子猫はコテンと頭を傾げたが、すぐに食事を再開した。
「ま、まあ、これを食べて生き延びられるなら……良いんだろうか? 【図鑑】には食用ではないとあったし、私の食事は他の魔物を狩るしかないのだろうね」
溜め息をつきながらも、子猫が腹を空かせずに済むことが分かって、少し安心したのであった。
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