第2話:運命の選択
『究極秘奥義:魂の完全委託(ソウル・デポジット)』を発動させますか?
※効果:受取人は全ステータスが999倍となる。
※注意:この勝利による全功績・全名声は、魂の提供者(リアナ)に帰属します。
※契約条項:受取人は以後、提供者に対して「魂の負債」を負い、生涯にわたる従属関係が構築されます。
▶[ はい ] [ キャンセル ]
(……え?)
カイトの思考が死の淵から急に引き戻された。文字が読める。はっきりと読むことができる。この究極秘奥義を発動させれば、自分の全ステータスが999倍となる。そうすれば、いま巨剣を振り下ろそうとしている魔王にも勝つことはできるはずだ。魔王を倒せば、全人類が救われる。世界に平和が戻るのだ。
しかし、カイトは素直に「はい」を選ぶことができなかった。
それは効果の下に書かれている、注意と契約条項のせいだった。
(全功績・全名声がリアナに……。魂の負債……。生涯にわたる従属関係……。なんなんだ、これは)
血を多く失い過ぎているせいか、考える力も、判断する力も、鈍くなってきていた。
これはどういうことなのだろうか。そう考えようとするカイトの脳裏に、ここで「はい」を押した場合の救われた後の世界の映像が差し込まれてくる。
王都へと戻った勇者一行。白馬が引く馬車に乗り、民衆たちが歓声をあげて出迎えてくれる。凱旋パレードだ。民衆たちは口々にリアナを称賛する言葉を投げかける。その声に応えるように、民衆に手を振る……。
(ちょっと待て。どういうことだ。なぜ、民衆はリアナのことばかりを称賛するのだ。魔王を倒したのは、俺。そう、勇者カイトではないのか。どういうことなんだ)
※注意:この勝利による全功績・全名声は、魂の提供者(リアナ)に帰属します。
(そうか。そういうことなのか。もし、俺がここで魔王を倒したとしても、すべてはリアナの手柄となってしまうのか)
場面が切り替わり、豪華な家具などが置かれた部屋の中となる。
クッションがふかふかなソファーに腰を下ろし、少し居眠りでもしようかと思っていると、豪華なドレスを着たリアナがこちらへとやってくる。
(そうか。魔王を倒した後、俺とリアナは結婚するのか……)
カイトの前へとやって来たリアナは、まるで虫けらでも見るような目でカイトのことを見ると、その口を開いた。
「ねえカイト、まだ掃除が終わってないわよ。あの時、私が命をあげてなきゃ、あんた今頃はまだ魔王城で何度も、何度も、魔王に殺されて、魔物たちに蹂躙されている状態なんだからね。何サボっているのよ。あたしの命令は絶対でしょ。忘れたの?」
悪魔のような顔でリアナは言う。
※契約条項:受取人は以後、提供者に対して「魂の負債」を負い、生涯にわたる従属関係が構築されます。
(……こんなの、世界が滅びるより嫌だ!)
カイトは残る力を振り絞って、指を選択肢へと延ばす。その指先は震えながらも確固たる意思を持っていた。
[ はい ] ▶[ キャンセル ]
そのボタンを選択すると、ガラスが砕け散ったような甲高い音が響き渡り、ウインドウは消えた。
「え……?」
リアナの間の抜けた声が闇の中に響く。
次の瞬間、魔王の大剣が振り下ろされ、カイトの意識は闇の中へと叩き落された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます