第6話 対決! 悪食の暴れ鳥
悪食の暴れ鳥がアタシの眼前に迫る。
近くで見るすごい気迫が感じられる。眼光が鋭くて嘴から涎が垂れていて、いかにも空腹で気が立ってますって面をしてやがる。
アタシはこの気迫に思わず気圧されそうになるも、目的のためにこの鳥野郎をぶちのめさなければならない。
アタシを信じてここに配置してくれたギルド長のためにも。
「おい。鳥野郎。ここは通行止めだ!」
鉄鉱石の匂いに釣られてやってきたであろう鳥野郎。鉱山の入口を守護しているアタシを見て睨みつける。
だが、鳥野郎はダッシュをしたままアタシに突っ込んでくる。
こいつ、アタシにタックルを仕掛けるつもりか? 上等だ。そのタックル。アタシの蹴りでぶち抜いてやるよ。
アタシは左脚に力を込めて鳥野郎を迎え撃とうとした。
しかし、鳥野郎はクエエと鳴きながらアタシの頭上を大きく駆け抜けた。
「なにっ……! 飛べないはずじゃ……」
いや、飛んでない。これは跳躍だ! 発達した脚の筋肉を使ってアタシの身長以上にジャンプをして飛び越えたんだ。
なんて跳躍力だ。脚の筋肉を鍛えれば走り高跳びでここまで飛べるのか。
鳥野郎が着地をする。一瞬ドスっと音が聞こえて鳥野郎も着地の衝撃で怯んだものの、そのまま前へと走っていき鉱山に向かっていく。
まずい! この鉱山は現在は作業中だ。鳥野郎に入られると危ない。
「おーい! 作業員たち! 避難しろ!」
アタシは中の作業員たちに向かって大声で声をかけた。鉱山内は響くからアタシの声は聞こえるはずだ。
だが、作業員でも監督でもないアタシの声を聞いて素直に避難してくれるのだろうか。
かと言って正直にモンスターが侵入したと言えばパニックになる。落ち着いて避難誘導。そんなことできるわけがない。
ギルド長も鉱山管理者に作業を中断するように求めたものの、根拠が薄すぎて信じてもらえなかったと言っていた。
だから、アタシが入口付近で待っていることしかできなかったが……
それにしても、この鳥野郎は本当に何でも食うんだな。鉄鉱石すらもかみ砕いて食うつもりなのか。
そもそも鳥に歯はあるのだろうか。アタシは生物について詳しくないからその辺はわからない。
ならあいつを討伐して、あの嘴の中に歯があるのかどうか確かめてみてやろうじゃないか。
アタシは走って暴れ鳥を追いかけた。
当然、鳥野郎の脚はとんでもなく速い。アタシも脚に自信はあるが、とても追いつけるスピードではないだろう。
だが、幸いにしてこの鉱山は閉鎖空間である。
入口が1カ所しかないなら、まさに袋のネズミというわけだ。鉱山内でなら追いかけっこをしても捕まえられる可能性がある。
待ってろよ鳥野郎。今すぐぶちのめしてやるからな。
しかし、鉱山内はいくつもの通路があり、鳥野郎がどこに行ったのかわからない。
こういう時はどうするんだっけか? 音を聞くべきか? たしか土は音を伝いやすいと聞いたことがある。
アタシは土に耳を当てて鳥野郎の足音を追うことにする。
…………そんないきなり言われても音の方向なんてわからない。
でも、なんとなくこっちから聞こえているような気がする……?
アタシはその方向に行こうとしたが……
「た、助けてくれー!」
鉱山作業員たちが別の方向から逃げてきた。
大慌てで走っていて明らかにあの方向に鳥野郎が向かったのだろう。
アタシの読みは外れた……っつーことか。まいったなこりゃ。
しかし、作業員たちが走って避難している時に逆走するのは危ない。
避難が終わるまで待つしかないか。
「落ち着いて避難するんだ。走りすぎるなよ。全力疾走して転んだらいてえぞ!」
アタシは作業員たちを避難誘導した。作業員たちはアタシを見て「誰だこいつ」みたいな顔をしていたけれど、とりあえず避難指示には従ってくれたようだ。
避難も落ち着いてきたところで、アタシは鳥野郎が進んだ先へと向かった。
コツンコツンとなにやら金属音が聞こえる。アタシがその方向に進むと鉱山の暗闇に紛れている鳥野郎がいた。
奴は鉄鉱石を嘴で突いている。それで食事をしているのか?
嘴で鉄鉱石を細かくしているってことは……やっぱり歯はねーのか?
「ひ、ひい……」
逃げ遅れた作業員たちが端の方で固まってぶるぶると震えている。
しかたねえ。世話が焼けるな。
「おい、お前ら。ここは危険だ。アタシが奴の注意を引き付けている隙に逃げろ」
「ひ、ひい。なんだよ。このモンスターは。それにアンタも」
「アタシか? アタシはアイシャ。冒険者だ! この指名手配の糞鳥を倒しに来た」
アタシは近くにあった石を鳥野郎の頭に向かって投げた。
これでもコントロールには自信がある。見事にアタシの投石は鳥野郎のどたまにぶつかった。
鳥野郎はアタシの方向を見る。そして、鋭い眼光を見せて近くにあった石を蹴り飛ばした。
土煙が舞うと同時に石つぶてがアタシに飛んでくる。
アタシは脚でその石を弾いてやつの攻撃をかわした。
「ふんふん! へっ……! お前の脚力は大したことねえな。アタシの脚技の方がつええんじゃねえのか?」
アタシが鳥野郎と対峙している間に鉱山作業員たちはそそくさと逃げ出した。
女1人置いて逃げ出すなんて情けねえ野郎たちだとは思うが、まあ戦闘の訓練を積んでないやつなら仕方ねえ。
一般人を守るのもアタシたち冒険者の仕事だ。
「クエエエ!!!!」
鳥野郎はアタシに対して怒りを向けて走ってきた。
近くの鉄鉱石を嘴で食わせて、そしてそれを投げてくる。
アタシはその鉄鉱石の投石を左右に跳躍することで避ける。
「ふう。地形とか周囲のものを利用して戦う知能はあるってわけか。鳥らしくちいせえ頭しているのにやるじゃねえか」
鳥野郎はアタシに向かって走ってくる。
そして、物凄く速い。馬が遅く見えるほどだ。
このタックルを食らったらひとたまりもない。アタシはまた跳躍して鳥野郎の攻撃を避けた。
鳥野郎が壁に激突する。ガコンと大きな音が鳴り、壁が大きく削られた。
鉱山内の壁に穴をあけるほどの強烈なタックル。生身の身体で受けたらどうなるのか。想像すらしたくねえな。
さてと。アタシもスピードと脚力には自信はある方だけど、こいつは多分アタシよりも上回っているだろう。
ただ、小回りはあまり効かないらしく方向転換が苦手のようだ。直線的な動きでのタックルばかりならうまく避けられる。
だが、回避ばかりじゃ勝てない。こちら側もどうにかして奴の隙をついて致命的な一撃を与えないといけない。
投石は有効な攻撃手段だとは思うけど、その勝ち方はなんか美しくない。
それに投石は怯ませることはできても、あまり効いているような感じでもねえな。
だったら……シドの言う通りに鍛えたこの足業を奴の脳天に叩き込んでぶっ殺すしかねえようだな。
「クエエエ! クエエエ!!!!」
鳥野郎がまたアタシに狙いを定めてタックルをしてくる。
単純だけどかなり効果的な戦法じゃねーか。避ける側は当たったら終わりという緊張感でかなり精神的に疲弊する。
何度も何度も避け続けるのは構わないが、回避成功率は100パーセントじゃない。
もし、万一タックルが当たったらアタシは終わりだ。
くそ、負けたくねえ。多分シドだったらこいつを楽に倒しているんだろうなって思うとなんだかイラついてくる。
アタシだったから倒し損ねたって言われたら末代までの恥じゃねえか。
アタシは鳥野郎のタックルを避けながらどうにかして隙を伺っている。
だが、鳥野郎のスピードは速くて中々隙ができない。
「おい! 鳥野郎! タックルばっかしてんじゃねえ! アタシと蹴り技で勝負しろ!」
蹴り対決ならまだ楽に倒せる。アタシはそう踏んで鳥野郎に挑発を仕掛ける。
しかし、人語を理解できるわけもなくアタシの挑発は虚しくするスルーされて、またしてもタックルが飛んでくるのであった。
最弱ギルドの立て直し 下垣 @vasita
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。最弱ギルドの立て直しの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます