神(仮)からの贈り物

「面白え男(笑)」


愉快な声が響く。


暗闇の中で、俺は漂っていた。

痛みはない。肉体の感覚もない。


「だ……れだ……」


「ンッ!? ゴホンゴホン。これは失礼。一ノ瀬純一。貴様の命は尽きた。だが、その魂には『観測者オブザーバー』としての資質がある」


命が、尽きた? 観測者オブザーバー……?


「貴様に二度目の生を与える。舞台は貴様が望んだ『空白の歴史』。……ただし、条件がある」


声の主は、冷酷に告げた。


歴史けっかを変えてはならない」


「変えようとすれば、タイムパラドックスが生じ、貴様は消滅する。史実という大河を、一滴もこぼさずに泳ぎ切ることだなフハハハ」


そこまで言うと、声の主は急に口調を崩した。


「……ってこのキャラマジで私に合わん(笑)。てかさっきの嫌いなやつ助けて死んだとこ、超超超ウケるんですけど。せっかくその知識があるのにもったいねえ~(笑)。私なら無視して一問一答やるね(それは草!)」


俺は笑い転げている神(のようなもの、いや悪魔か)に問う。


「俺はどうなる? というかここはどこだよ」


「ここは、んー……天国的な? でも君、『あの世』に行きたがってたじゃん。だから送ってあげるよ、君の大好きな『過去』へ」


……過去。


フィクションによくある転生系?ってやつか……。

しかしなんだこの落ち着かない感じは。

不思議と気持ちが昂っていた。鼓動が早くなるのを感じる。


歴史の世界なら、俺の知識ホームだ。

神宮寺もいない。俺だけの物語が始まる。


「んー、普通なんか特殊能力とか授けるんだけど、めんどいからいいや。……ああ、でも丸腰じゃすぐ死ぬか(笑)」

神(仮)はニヤリと笑った。


直後、視界に【絶対参照ワールド・アーカイブ】という文字が表示される。


「それは君に授けられた特殊能力。古代から現代の全ての歴史のデータが君の頭に入ってるってこと。歩く歴史、ここに爆誕!(笑)」


手の中から光が漏れている。

手の中のレプリカに目をやると、そこに刻まれた楔形文字の意味が脳内に流れ込んでくる。

これは3000年前の遺跡から出土した、古代の条約文のレプリカのはずだ。


だが、そこに刻まれていたのは、条約文ではなかった。


『我が親友、ジュンイチに捧ぐ』

『どうか、この世界を……許さないでくれ』


(……は?)


ジュンイチ? 俺の名前?


それに、この筆跡……震えている。

まるで、血の涙を流しながら刻みつけたような、凄まじい執念を感じる。


誰だ。紀元前の世界で、俺の名前を呼んでいるのは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る