さいしゅくえすと?
「前衛、拾った! 直人! 盾、拾ったよ!」
「……元の所へ、戻してきなさい!」
行き倒れに大喜びな翼へ、精一杯の怖い顔で返す。
しかし、確かにダンジョンの街から出てすぐ、街道の真ん中で甲冑姿の男が突っ伏していた。
俺達は、悟の金策案を試しに来ただけだというのに! はた迷惑な!
「皆は五体投地というのを聞いたことがあるか? おそらく現地の類似した宗教的な儀式で――」
「み、水を……――」
「どうやら日本人のようですよ?」
悟の容赦ないツッコみへ、溜息を返しておく。そして――
「可哀想だから、本当に
と叱っておく。
見た目よりも腕白というか……男子っぽい大雑把な笑いのセンスは、明確な欠点だと思う。
「よし、引っ繰り返すぞ? 身体、自分で起こせるか? あと水筒ならあるぞ?」
そして陽平の方が面倒見よさそうまである。これじゃ拾い役と世話役だ。
「なんどでも礼を言わせてくれ! 本当に助かった! 正直、あのまま死ぬかと思ったぞ!」
原 健太郎と名乗った甲冑男は飯屋の席へ着くなり、またも感謝の言葉を口にした。
古臭くて濃ゆい見た目通りに、義理堅い奴なのかもしれない。
ただ、それでいて堅苦しい感じではなく、なんともいえないユーモラスさを醸し出してる。……きっと貧乏クジを引かされがちなタイプだ。
しかし、そんな健太郎を翼は軽やかにスルーした。
「おばちゃん! 今日は五人分! あと
……お前が拾ったゲストだろうが!?
「とにかく健太郎! とりあえず飯にしよう! 遠慮しないで良いぞ! いまの俺達は懐が温かいからな!」
やはり懸念通り、陽平が面倒を焼いて!
ただ懐が温かいというのは、決して
なんと金策が、大成功したからだ。
「あの故売商、味を占めたのでしょうか? かなり買い叩かれてしまいました」
などと当の悟は納得してない様子だったけれど、使いさしのノート数冊が金貨何十枚もで売れたのだ。これで文句をいったら罰が当たる。
……先に相談したという奴らは、どれだけ荒稼ぎしたんだか。
「あと一応、いわせてもらうけど――
転んだら起き上がれなくなるような甲冑は、やり過ぎだと思うぜ?」
「いや、これは故があるようだ。突っ伏していた間中、考え続けたのだが――
どうやら俺は『強さ』を喪ってしまったらしい。それで
怪訝顔な俺達を安心させるように健太郎は何度も頷き、それから説明を続けた。
「俺の所属していたパーティは、そろそろ修業を締めくくり、遅ればせながらも魔王討伐軍への合流を考えていた。
しかし、そんな矢先に出会ってしまったらしい。イレギュラーと呼ばれるモンスターに」
「イレギュラー?」
「知ってるのか、陽平!?」
驚く陽平に問い質す翼。……でも、どうして嬉しそうなんだよ!?
「聞いたところによれば、本来の出現階と違う――一、二階ほど深いところで出現するモンスターが、浅い階層にいることがあるらしい」
選抜組は三階あたりで切り上げてたはずだから……つまりは五階か? もう深層といっても差し支えないはずだ。
「あのようなモンスターとは、初めての対峙だった。黄色く光る死人としか言いようがなく、ゾンビにしては俊敏で、スケルトンにしては力が強く――
なによりも、その瞳に邪悪な意思が宿っていた。亡霊の類というべきか?
そして、あれに殴られるたび、身体から何かの抜け落ちるような喪失感があった。いまにして思えば『強さ』だったのだろう」
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