ざせつ
が、俺達三人は、何の成果も得られなかった! というか、死にかけた!
最初は上手くいって調子に乗るとかすらできず、這う這うの体で逃げ帰ったどころか、虎の子である『緊急帰還の羽根』を切らされる始末だ。
ちなみに王のくれた金貨のほとんどが、これの購入費で吹き飛んでいて、大赤字なだけでなく、ほぼ素寒貧にまで落ちぶれている。……まさに踏んだり蹴ったりだ。
「まったく! いくら異世界人は強いといっても、教わりもせんうちに突撃とは何事か!」
まあアッシュの説教は尤もか。
なにより二人が運よく通り縋らなかったら、神殿への治療費も払えなかった。
それを出世払いで立て替えてくれた上、さらに飯まで食わせてくれるあたり、口の悪さに反比例な優しさを感じる。
「普通は師匠と一緒に、迷宮の入り口近くで、とにかく一回だけでも『強さ』を得るまで地道に鍛えるものなんです」
甲斐甲斐しく注文の料理を食卓へ並べながら、そうレオンも教えてくれた。
なるほど。それなら道に迷ったりしないでいいし、いきなり大勢に囲まれたりもしなさそうだし、撤退にも『緊急帰還の羽根』は不要だろう。
「大方、先の選抜された奴らに影響を受けたのであろう! だがな? 本来、あのような短期育成は危険きわまりないのだ! そう進言もしておるのだが、しかし、どうにも王は……せっかちであられてな」
そこまで口にしたところで、アッシュは溜息を漏らす。なにか鬱屈した思いがあるようだ。
が、まだ説教もしたりないらしかった。……もしかして酒入ってないか?
「だいたい! 少人数では危ないと、先にもツバサは分かっていたで――」
「悪いけど、後にして、アッシュ先生! いまは、この肉に集中したい! 嗚呼、まさか、こんな風に一生の夢が成就されるなんて!」
まるで熱に浮かされたかのような翼が手を伸ばすは――
なんとマンガ肉! 円柱状な肉の中心を太い骨が貫いている、アレだ!
「ツバサ? それは皆でシェアの料理で! ナイフで自分の分を切り分けて――」
が、レオンの制止より先に、翼はマンガ肉に齧りついてしまう!
なんと伸びた! 誰もが夢想するみたいに、噛みついたところから肉がビョーンと!
「王は異世界人に食事を与えておらんのか!?」
アッシュとレオンはドン引きだけど、これは
ようやく噛みちぎりに成功した翼から、ひったくるようにして奪い取る。
が、なぜか陽平は微妙そうだった。
「……また肉か。この世界は肉とパンばっかりなんだよなぁ」
「でも、マンガ肉だよ! 想像してたのより、わりと味も良かったし! 陽平はテンション上がんないの!?」
やっと咀嚼し終えたのか、不満たらたらの陽平を翼が叱る。……口の周りが肉汁だらけで、なんちゃって美少年が台無しだ。
「俺は魚の方が好きなんだよ! どうやら内陸らしくて、ぜんぜん見掛けないし!」
なんとか噛み千切れたので、マンガ肉を陽平へと回す。魚好きといっても、これの誘惑には勝てまい。
「たったいま、解決策を思いついたぜ!」
「ぼ、ぼんとうか!」
「噛みつきながら話すんじゃねぇ! それに魚の方じゃない!
アッシュさんの御小言は全くに正しいと思う。つまり、人数だ。俺達は人数が足りな過ぎる。
ならパーティメンバーを増やせばいい。実に簡単な理屈だろ?」
しかし、なぜか二人からは胡乱な目つきで応じられる。……失礼な奴らだな、まったく!
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