ニセ医者を裁く
「今日は私が生まれ育った村にやってきています!」
今日の配信はいわゆる外ロケだ。
拠点としている宿からかなり離れた場所までやってきたが、それだけの価値がある。
クロには説明していないが、それは〝撮れ高〟というやつだ。
ちなみに本来なら配信者の実家情報も出さない方がいいのだが、この村ではクロが人気になったことでキャラクター商売的なものもしているので……。
「おっ、クロ! 戻ってきたのかい!」
「あ、お菓子屋のおばさま。配信中です」
「それなら宣伝に丁度いいねぇ。クロまんじゅうを食べていきな!」
「く、クロまんじゅう……?」
「絶賛販売中だから、リスナーの皆さんもお近くにお寄りの際は是非!」
<まんじゅうとか最先端のお菓子を売ってるんだな>
<たしか配神が広めたって菓子だろう>
<もう貴族以外にもレシピが広がってたのか>
<クロたんの顔が入っててかわいい>
……まさか前世で自分が広めたまんじゅうが、キャラクターグッズ的に使われるとは夢にも思わなかった。
どこの世界でも商魂たくましい人はいるものだな。
そんなお菓子屋のおばちゃんからもらったまんじゅうをモグモグしながら、クロは道を進んでいく。
どうやら全員と知り合いで、ひたすらに声をかけられていく。
小さい村あるあるだ。
クロの人気を知っているのか、ピースしてくる子供たちが映ったりと賑やかな配信となっている。
同接も穏やかに上がっているな。
正直、これだけでも外ロケとしては成功の部類であるが……本番はこれからだ。
クロは実家に辿り着いた。
かなり小さくて古い家で、経済状況というものが知れてしまう。
ようするに……貧乏だったのだ。
<こ、これがクロたんの実家かぁ……>
<
<コンパクトで……掃除がしやすそうだね……>
<オレ、スパチャするわ>
リスナーも察して、言葉に気を付けながらコメントしている。
「そうなんです! いつも頑張ってピカピカにお掃除していました! あ、でもお母さんは動けなくなっちゃってるし、弟一人だから大丈夫かな……汚れてたらまた私がお掃除してあげなきゃ!」
クロからしたらこの実家が普通なので、気遣われているとは思わないのだろう。
まだ都会暮らしが短くてよかったかもしれない。
京言葉的に裏側を読んでしまったら、メンタルがいくつあっても足りない。
まぁ、本当に誹謗中傷してくるアンチ野郎がいたら俺が――。
「ただいまー! いきなり帰ってきてサプライズ――って、カリメン先生もいらっしゃってたんですね!」
クロが実家のドアを開けたら、奥の方に見える部屋に病床に伏せる母親と、看病している弟、それと医者――カリメンがいた。
痩せ気味で目の下にクマがあって、ウェーブのかかった長髪は陰鬱な雰囲気を醸し出している。
しかも、カリメン……仮免……名前からして怪しいが、クズカメラという種族名の俺が言えたことではない。
「クロお姉ちゃんだ! お帰り!!」
「クロ、元気そうでよかったわ」
母親と弟は満面の笑みで出迎えてくれた。
どちらもクロに似て純粋そうだ。
一方、医者のカリメンは――。
「クロさん、少しご相談が……」
「あっ、治療費のことですね! 大丈夫です!」
クロは金貨が入った布袋を開けてみせると、カリメンはニヤニヤと汚い笑みを浮かべていた。
「ええ、治療にはお金がかかるので……。ワタシも本当ならもっとお安くしたいのですが、薬がとても高くて……」
「あの、それでお母さんの石化病は完治するんですか?」
「それはもう、はい……。時間はかかりますが、このワタシが作った薬を飲み続ければ……」
<石化病?>
<たしか大昔に流行ったっていう珍しい
<でも、おかしくないか?>
<たしかにおかしい>
「え? コメントの皆さん、おかしいっていったい何が……?」
「く、クロさん。誰と話しているのですか? ああ、コメント欄の方ですか。そんな人たちの言うことは聞かない方が――」
「いえ、コメント欄――クロ巣ファミリアの方々は大切な恩人さんなので。しっかりと見たうえで私が判断します」
「ちっ」
<なんか舌打ちが聞こえた?>
<あやしい>
<石化病の有識者ー!!>
<司書ですが、石化病の薬は一般では流通していないはずです。現在確認されているのだと登録者数が百万人で許可が出るダンジョンで得られる薬のみです>
「そ、その薬をワタシは以前手に入れていて、格安で飲ませてあげているんですよ!?」
<その薬、外界に持ち出してから三日で効力がなくなりますね。古き竜の騎士が資料を残しています>
「えっ、いったいどういうことなんですか……カリメン先生……」
「で、デタラメだ!! その資料がデタラメなんだ!!」
たしかに情報元がきっちりと確認できるまでは、どちらが正しいかはわからない。
ここからはただの水掛け論になってしまうだろう。
だから、俺は事前に調査していたのだ。
前前世で経験したレスバの不毛なる争いから……!
クソみたいな匿名掲示板のやり取りが役に立ったぜ!!
「クズカメラのヤマダだ。ちょっといいか?」
「ランクDのクズカメラが口だししないでください!! ワタシは医者ですよ!!」
うっ、たしかに医者はエリートで偉いという概念が前前世から染みついているので一瞬たじろいでしまった、情けないが。
しかし、権力にはまけん! 恐ろしい歯医者と違ってドリルも持ってないしな!!
「その薬、ちょっと見せてもらえるか?」
クロの母親に飲ませていた薬が、丁度ベッドの脇に置いてある。
「こ、これは大変貴重なもので……素人が下手に扱うと成分が変化して……」
「じゃあ、素人じゃなければいいんだな?」
「へ?」
「王宮医師、カモン」
普通の医師と違って、かなり仰々しい格好をした医師が背後から登場した。
俺以外の全員が驚いているが、誰にも教えていないサプライズだ。
「げぇっ!? お師匠様!!」
「カリメンよ……十年前、見習いのお前が逃げ出して何をしているかと思えば……」
「こ、これは……その……」
「医師の資格も持たないのにか?」
「人助けで……仕方なく……」
「では、その薬を見せてもらおう」
「あっあっあっ」
カリメンは、師匠である王宮医師に対してヘビに睨まれたカエル状態となっていた。
「この薬、ただの安物の栄養剤ではないか」
「あーーーーー!!」
カリメンは慌てすぎたのか、まともに言葉も発せないようだ。
<すげぇ急展開だな>
<こんな劇みたいなことになるなんて想像できなかった>
実は俺は予想していた。
事前にミミルに調査させて、カリメンの素性も洗ってもらっていたし、薬を入手して成分調査もしている。
本当ならすべてぶっつけ本番でライブ感を出したいが、それだと俺が勢いでカリメンを殺してしまう可能性もあった。
それはダメだろう。
これは俺の問題ではなく――クロが解決すべき問題だ。
俺はその選択肢をクロに与える。
(ヤマダさん……どうしたらいいんですか……)
(俺が何とかするから、自分でしたいようにやってみろ。突発的な状況に対処するのも配信者のスキルだ)
絶望の表情で固まっていたクロは、俺の声を聞いて意を決したように話し出した。
「殺したいです」
<うわ、目がマジ>
<大切なお母さんだから仕方がない>
<ずっと騙されていたんだ……貧乏なのに病気が治る希望を餌に金を取られ続け……>
<オレたちクロ巣ファミリーの金もコイツに……こっちも殺意が湧いてくるわ>
「ひぃぃぃ!! 助けて!!」
クロは剣を抜いて、カリメンの首筋に当てていた。
俺は正直、ハラハラした気持ちで見ている。
どう行動しても、対処できるルートは考えているが……。
「殺したいですが、やっぱり止めます」
「へっ?」
「お母さんのために人殺しをしたら、お母さんが悲しんじゃいますから」
「そ、そ~ですよねぇえええ!! 出来たお子さんを持ってお母様も幸せに違いない!! うん、きっとそうですよぉ~!」
カリメンは早口でまくし立て、掛けてあった上着を取り、ついでに金貨の入った布袋も取ろうとしたのだが――。
「ダメです。それはクロ巣ファミリーの皆さんからの大切なお金です」
「ぎあっ!?」
クロは無表情でカリメンの腕を斬りつけた。
<こわっ……>
<絶対に敵に回しちゃいけない女クロ>
<でも、オレたちのことで怒ってくれているのなら嬉しい>
<まだ腕が繋がってるから、これでも手加減してるな……>
<モンスター相手だったら全身バラバラだったしな>
「じょ、じょーだんですよ、じょーだん! では、ワタシはこれにて失礼させて――」
<コイツ、うやむやにして逃げるつもりだぞ>
<サイテー>
<でも、クロたんは殺さないだろうしなぁ……>
そこで俺の出番だ。
外に兵士の皆さんを待機させておいた。
「えっ、あれ? なんでこんなに兵士が……あのぉ……ワタシが外に出られないんですがぁ……」
「カリメンだな。医師資格を偽ってのSランク治療は殺人に次ぐ重罪だ。話を聞かせてもらおうか」
「あっあっあっあっ」
カリメンは再び脳がフリーズしたのか、意味のある言葉を発せなくなっていた。
同接と登録者数がとんでもなく伸びているな。
雑談配信に続き、外ロケ配信も大成功だ。
――――――
あとがき
か、カリメーン!!
ちなみに医療資格を偽っただけではなく、それでしてしまった医療行為の結果などが考慮されるとリアルでもかなり重い複合的な罪になるらしいですね。
医療詐欺ダメ、絶対!
特にファンタジー世界だと簡単に復讐で、クロ以外なら即クビが飛んでいたかもしれませんね。
まぁ、この世界の罪的にどうやっても飛ぶかもですが。
あ、それで今日は大事な投降初日なので……!!
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そこにいかないと、今後どうするかも決めにくくて、絶望的なんですううううう!!
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