うみのそこの はかせ

Shiromfly

うみのそこの はかせ

しろい ゆきが ふる、うみの ふかい ふかいところに

ちいさな さかなが すんでいました。


さかなは ひかりが すきでした。

でも ふかい ところには

ひかりが あまり おちてきません。


あるひ、うえのほうから

ふしぎな ものが

ひらひら おちてきました。


それは だれかが すてた “ほん”の ページでした。


すこし にがかったけれど

さかなは それを たべました。

すると あたまのなかが

ぽうっと ひかりました。


それは ちいさくても あたたかく やわらかい ひかりでした。


それから さかなは

たくさんのことを かんがえられるようになりました。

みんなは さかなを

「はかせ」と よぶようになりました。


はかせは、うみの そこのことも

うみの うえのことも

わかるように なりました。


でも うみの うえには いけません。

そこは はかせには

あかるすぎるのです。


あるひ、せんすいかんが やってきました。

くらい うみのそこを

ライトで てらしながら

めずらしい さかなを さがしています。


にんげんたちは はかせを みつけて、まぶしい ひかりを むけました。


はかせの ちいさな ひかりは

すぐに みえなくなってしまいました。


「やめてください。ぼくの ひかりが、みえなくなっちゃう」


はかせは なきながら

にげて にげて

もっと ふかい ところへ いきました。


ふかくて とおいところへ にげたので 

あきらめた にんげんたちは、もうおっては きません。


いつのまにか、しろい ゆきは

やんでいました。


はかせは、ずいぶんと とおくまで きてしまいました。



そこで、はかせは

じぶんよりも、ちいさな さかなを みつけました。


そのさかなは

おなかを すかせて

ふるえていました。


「こんにちは。こんなところで どうしたの?」

はかせは、はなしかけます。


「こんにちは、はかせ。ぼくも、にんげんから にげてきたんです」


はかせは そっと、ちいさな さかなに、じぶんの ひかりを むけました。


「ありがとう、あたたかいよ」

「どういたしまして」


はかせは はじめて

ともだちが できた きがしました。


ふたりは うえを みあげました。


ここは、しずかで しずかな

しずかすぎる、うみのそこよりも ふかい そこです。


はかせの ひかりは ちいさくても やさしい ひかりです。


そのひかりは

ふたりを ぽうっと あたためました。


そして ふたりは

しずかな うみのそこで

そっと ひかりを

ともしつづけました。

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