第23話:絶対王者の帰還
芸能事務所のメインエントランス。
かつての「絶対王者」ルシアが戻ってきた時、周囲の反応は冷ややかなものだった。
「負けを引きずって失踪していた女王様のお帰りだ」
「時代はもう、あの人間(クリーチャー)に移ってるっていうのにね」
陰口を背に受けても、ルシアの歩みは揺るがない。弁明もせず、彼女は真っ直ぐに美優のいる控室へと向かった。
扉を開けると、そこには台本を手に沈黙している美優がいた。
「……元気そうね、ミユ」
「ルシアさん……? 旅、どうでした?」
予期せぬ再会に、美優は一瞬、言葉を失った。それでもすぐに表情を整え、問いかける。
ルシアはいつも通りの傲慢な、しかしどこか晴れやかな微笑を浮かべた。
「悪くなかったわ。……ようやく、自分が負けた理由が分かったから」
再会の余韻に浸る間もなく、部屋にプロデューサーたちがなだれ込んできた。彼らは美優への「言論統制」を進めつつ、ルシアの復帰をビジネスチャンスとしか見ていなかった。
「ルシアさん、いいタイミングだ! 早速、美優との『再戦リベンジ企画』をぶち上げますよ。今度はもっと際どい、種族の優劣をはっきりさせる内容で……」
「……それ、私の方から断るわ」
ルシアの声が、冷徹な魔力と共に部屋を凍らせた。
「え……? しかし、これは事務所の意向でもあり……」
「勘違いしないで。あの子はあなたたちの使い捨ての商品じゃない。……そして、私の獲物でもあるの。潰したいなら、私を先に倒しなさい。……できるものなら、ね?」
サキュバスの女王としての圧倒的な威圧。プロデューサーたちは蛇に睨まれた蛙のように硬直し、這いずるように部屋を去っていった。
静寂が戻った控室で、ルシアは美優に向き直る。
「……いい、ミユ。あなたを守るつもりなんて、これっぽっちもないわ。……でもね」
ルシアは美優の顎を指先でクイと持ち上げ、その瞳を覗き込んだ。
「あなたがこれから、この歪んだ世界のすべてを敵に回して、最高の舞台に立つのなら。……その横に並ぶ資格があるのは、世界で私一人だけでしょ?」
守られるのではなく、並び立て。
その「言葉」に、奪われていたはずの美優の瞳に、再び強い光が宿った。
【観測者領域】
遠く離れた場所で、モニターを見つめる観測者たちの手が止まった。
「……イレギュラーだ。ルシアの行動は予測モデルに含まれていない」
「依存でも対立でもない、第三の共鳴……。龍族、人間、そしてサキュバス……」
画面上で、美優、リナ、ルシアを示す三つの点が、激しく点滅しながら一つに重なり合おうとしていた。
世界のシステムが「異常」と見なすその重なりは、同時に、絶滅した「人間」の再臨を告げる、最も美しい不協和音だった。
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