第3幕
B
浅川の話す首吊り死体の幽霊の外見的特徴はぼんやりしていた。
どんな顔?
顔はよく見えない
服は?
黒っぽい服
髪型は?
長めかな
「首吊り死体の幽霊」以外の性質がほとんど存在してないみたいだった。
A
田中は霊と会話してみると言い出した。大丈夫か? とも思ったが「それしか手がかかりがないから」と、ミーエディタのバーチャルキーボードを立ち上げると
「あなたは誰ですか?」
と打った。画面は沈黙した。
C
私ははじめから首吊り死体として生を受けました。それ以外の記憶は持ち合わせていません。恨みがあったのか、悲しかったのか、苦しかったのかもわかりません。ただ田中は部屋に入ってきたとき暗い印象を受けたようです。明かり取りの窓に私が引っかかっているためでしょう。窓には蜘蛛の巣が張っていて蜘蛛と蜘蛛の巣は次第に大きくなっているようです。これも幽霊の発する電磁波のためでしょうか。
B
しばらく待つと、また画面に文字が流れてきた。
どうぞ当ててみてください怖れを知らないあなたわたしは一体だれなのでしょうどうぞ当てみてくださいにください
A
田中は追いかけてバーチャルキーボードでタイプした。
「あなたは浅川ですか?」
B
「バレたか」
「浅川は喉仏がはっきりしてるから……動いてたから」
浅川が腹話術もできるとは知らなかったよ。
よくわからない嘘をついてしまったから気まずくて言い出せなくて。
C
私は正体が明かされたようです。バケモノの多くがそうであるように、正体が暴露されたと同時に役割を失いました。しかし私はどこかでそれを望んでいたように思います。現れたいような、消えたいような感じです。あとは蜘蛛の巣にくるまって眠りたいです。
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