第4話 革命と崩壊 (1978―1991)
1970年代後半、東西両国家は異なる形で限界を迎える。
1978年、東オワリア王国では王族と特権階級の腐敗が露呈し、港湾都市の労働者を中心とした大規模抗議運動が発生した。
港は燃えていた。
クレーンが倒れ、倉庫が爆ぜ、人波が波のように押し寄せる。
若い労働者の女は、王宮の方向を睨みつけながら叫んだ。
「腹が減ってるのに、祈れだと?」
群衆が門を破る。
銃声。逃げ惑う衛兵。
泣き崩れる官吏。
王族の肖像画が引きずり降ろされ、踏みつけられる。
誰かが仏像を掲げ、誰かがそれを殴り落とす。
カトウは、宮殿の奥で銃声を聞いていた。
――私は、何を守ってきた?
王冠は重く、もはや誰の頭にも乗らない。
彼は抵抗しなかった。
王制は、民衆に殺されたのではない。
誰にも必要とされなくなっただけだった。
流血を伴う動乱の末、王制は崩壊し、国家はオワリア共和国へと移行する。
一方、西オワリア民主人民共和国は慢性的な経済停滞と統制社会に苦しんでいた。
地下では、女性アナウンサーのオカダ・ルミが秘密放送を通じて自由と人権を訴え、象徴的存在となっていた。
1991年、ソ連崩壊という外的衝撃が西オワリアを直撃する。
物資供給は途絶え、飢餓と混乱が民衆蜂起を招き、社会主義体制は急速に瓦解した。
放送局は暗かった。
停電。暖房なし。壁にはひび割れ。
オカダ・ルミは、マイクの前に座り続けていた。
もう誰が聞いているかも分からない。
「……こちら、自由放送……」
外では人々が倉庫を襲い、空の棚を叩いていた。
「食べ物を出せ!」
「党は嘘つきだ!」
彼女の声は震えていたが、止まらなかった。
――沈黙したら、すべてが無かったことになる。
最後の放送を終えたとき、ラジオは、ただの箱に戻った。
彼女は外に出て、崩れかけた党本部を見上げた。
革命は、静かに終わっていた。
拍手もなく、英雄もなく。
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