第3話 断絶の時代――二つの国家(1963―1977)

1963年、内戦は国土の分断という形で一応の終結を迎えた。


北方の険しい山岳地帯を境界線として、オワリアは二つの国家に分裂する。


谷を挟んで、敵は見えていた。

いや、かつての同志が。


イトウ・シンジは双眼鏡を下ろし、歯を食いしばった。


向こうの塹壕にいるのは、昨日まで同じ釜の飯を食った者たちだ。


砲撃が始まる。

山肌が崩れ、悲鳴が反響する。


「裏切り者を撃て!」


その言葉が、誰に向けられているのか、もう分からない。


撃たれた兵士が倒れ、顔を覆うと、同じキモナの模様が見えた。


イトウの胸に、奇妙な空洞が広がる。 


――革命とは、誰を救うものだったのか。

――理想は、いつから人間を踏み潰す理由になった?


彼は命令を出し続けた。


止まれば、すべてが無意味になるからだ。


東オワリア(オワリア王国)

平野部と港湾都市を掌握し、カトウ・ケンジを国王に推戴。伝統的仏教文化を国民統合の軸とし、自由主義経済を導入した。


西オワリア(オワリア民主人民共和国)

鉱山地帯を基盤に、オワリア民主社会党による一党独裁体制を確立。イトウ・シンジを指導者とし、ソ連と連携した重工業化政策を推進した。


国境地帯には地雷原が敷設され、同じ言語を話し、同じキモナを着る人々が、互いを「敵」として憎悪する冷戦構造が固定化された。

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