第2話 独立の火、そして分裂(1947―1962)

1947年、異なる立場にあった二人の指導者が歴史的な協力関係を結ぶ。 


王室の血を引く保守派のカトウ・ケンジと、急進的な思想を持つ若き左派論客イトウ・シンジである。


両者は「オワリア独立解放戦線」を結成し、イギリス軍に対する武装闘争を開始した。


この独立戦争は11年に及ぶ苛烈なゲリラ戦となり、農村・山岳地帯は戦場と化した。


イギリス側ではニコラス・ペンバートン大佐が弾圧の象徴的存在となり、反乱軍を「野蛮なキモナの群れ」と呼んで徹底掃討を行った。


山は、夜になると人の声を拒んだ。


湿った霧が足首に絡みつき、草を踏む音すら銃声のように響く。


カトウ・ケンジは、銃床を胸に引き寄せたまま、息を殺していた。


彼のキモナはすでに泥と血で重く、王家の血など何の意味も持たない色をしている。


前方――

英軍の哨所に灯りが揺れた。


合図は、梟の鳴き真似だった。

次の瞬間、森が破裂する。


銃声。悲鳴。


英語とオワリア語が、同じ恐怖の音色で混じり合う。


初めて人を撃った若者が、叫びながら膝をついた。


「当たった…当たった…!」


死体は倒れたまま、誰にも見られずに冷えていく。


勝利でも敗北でもない。ただ、もう戻れない一線を越えたという実感だけが、全員の胸に残った。


カトウは思った。


――この戦争は、独立のためではない。

――もう、終われなくなった人間たちのための戦争だ。


1958年、ついにイギリス軍は撤退し、オワリアは独立を勝ち取る。


しかし、共通の敵を失った瞬間、解放戦線内部の亀裂は急速に拡大した。


王制と伝統を重んじる右派と、社会主義革命を志向する左派の対立は修復不能となり、同年、内戦が勃発する。

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