第3話
『順番は問いません、空いている検査機から試験を受けてください』
どれから行こうが結局何やるか分からない。
適当に空いている所から回ってくか。
とりあえずなんか見たことのないポット型の機械の前に来る。
「ここは高重力下での検査を行う場所です、こちらにお座りください」
「ソーマいきなりコレから行くんすか? これはヤバいっす、どの受験生もこの項目は最後に残すんすよ」
「確かに誰も並んでないから来てみたけど、そんなにヤバいのか?」
「これは高重力下を耐えられるか確認するんすよ、高速回転する機械の中はまさに人をバターにするミキサーっす」
「そんな殺人的な機械を検査項目にするなよ」
とにかく遠心力的なやつか、宇宙は無重力空間だし打ち上げとかでも宇宙船内で動くためにも必要な能力だよな。
大きな装置内は両手を広げてギリギリ端が届かない位の広さ、高さも3メートル程か。一体この中でどんな試験が起こるんだ。
言われた通り真ん中にある椅子に座ると、ベルトや何やらを付けさせられる。そして扉が閉まると、機械音声が流れ始めた。
『それでは試験を開始します。まずは耐重力適性を確認します』
機械から大きな音がなったと思ったら、小刻みに揺れ始める。
何か絶叫マシーンに乗っている気分だ、風は感じないのに身体に重力は感じる。なんか新鮮ではあるがこれでいいのか感が拭えない。
『続いて壁のボタンが赤と緑に光りますので、緑に光った時だけボタンを押してください』
つよい重力がかかっている状況で適切な反応ができるかとかそういうのか。
なんかミニゲーム感覚で楽しいな。本当にこれでいいのか?
しばらくボタンを押していると機械が停止した。
機械の扉が開くと、目を丸くした監督官がこちらを見てきた。
「こ、こちらでの試験は終わりました、凄いですね満点です」
「そ、そうですか」
意外と重力検査って緩いのか。俺の絶叫マシーン好きがいい方向に作用したか。いやでも宇宙船の適性検査って超きついはずだよな。エリートだもんなパイロットって。
もしかしたらこの星の宇宙船は地球の宇宙船より快適なのか。必要なレベルが低いかもそれない。
「す、すごいっすねソーマは……オイラ、うぷっ……吐きそうっ!」
「やめてくれ! ここでリバースだけはやめてくれ! てかそんな調子でパイロットになれんのか?」
「ま、まだまだこれからっすよ」
リュドはおそらく合格できないな恐らくだがこの試験編が終わる頃にはおさらばであろう。
次の空いてる機械は、あのランニングマシーンか。
「ソーマはキツイやつからやるタイプっすか、お弁当も苦手な食べ物から食べるタイプっすね」
「いや、お弁当の中身全部異国の料理過ぎてどれから食べていいか分かってないんだよ」
持久力に自信はないが根性で乗り切るしかないよな。元喫煙者と言っても蘇生中にニコチン抜けてるだろ、肺もまっさらだろ。
「それではこちらを胸と腕に貼り付けてください」
何やら五百円玉くらいの大きさのシールを三枚渡された。これを胸と両腕に貼り付けて、ランニングマシーンに乗る。
「こちらは受験生の生体信号を受信し、強度が自動的に上がっていきます。また終了時間も受験者によってかわります。それでは始め。」
ゆっくりとランニングマシーンが動き始めた。
最初はジョギング程度、普段はジョギングですらしないからこの程度でも……あれ。
「しんどくない、うそだろタバコやめたらこんなに身体が軽いのかよ」
徐々にスピードが上がっていく。それでも脚はまだまだついてくる。そう言えば俺昨日まで寝たきりのはずだよな、異星の技術凄すぎだろ筋力が落ちるどころか維持、いや、これは。
「強化されすぎじゃね!?」
マシーンのモニターに映ってる数値単位が地球と違うからわからないけどなんか30って出てんだけど、俺もしかして原付の速さで走ってるのか?
「おい、あいつヤベーぞ」
「なんだあの速さ」
「何処の星のやつだよ」
「どっからどう見てもメトイド系なのに」
なんかめっちゃ噂されてる、やっぱりおかしいですよね、周りで誰もこんなスピード出してないもんね。
「73番もういいです、持久力満点です」
「ゼェゼェ……流石っすね……ソーマは……ハヒュー……宇宙一のかっぺだよ」
「お前はもう辞退しろよ、死にかけてるじゃねーか、田舎に帰って母ちゃん安心させろよ」
さっきの重力テストと相まってマシーンの周りゲロまみれだぞ、監督官も退場させろよ。
「ま、まだまだ……オイラは絶対にパイロットになるんすよ、おっかぁを楽させるんすよ!!」
「いや、そんなシリアスな場面じゃないけどね!? ゲロ撒き散らしてる奴のセリフじゃないけどね!?」
リュドと一緒にいるとただでさえ目立ってるのに余計に目立ってしまう。
それにしても俺の身体一体どうしたんだ。前までこんな身体能力高くなかったぞ。
前までジャンプしてもヤク〇ト位の高さしか飛べなかったのに、今ではヤク〇トの自販機位飛べてしまってる。
「ま、まさか……重力の違いか!?」
確かに重力の違いで身体能力に差が出ると何かのテレビで言っていた気がする。
つまり地球人の身体能力はここでは超人ということか。
「次は……筋力テストっすね」
「歯はちゃんと磨いたか? 口くせーぞ」
「ガム食ったっす」
それからも俺は全てのテスト項目で満点を叩き出した。自分自身では身体能力が強くなったとかそう言うのは感じない。まさか地球人スペックがこんなにハイスペックとは思いもしなかった。
『これにて身体能力テストを終了します、次に筆記テストを行いますので、次の試験会場に移動してください』
館内音声と監督官に案内されながら筆記試験会場に移動する。
長机に筆記用具が置かれた部屋が用意されていた。
自分自身の番号が書かれた机に着席し試験の開始を待つ。
「流石のソーマでも頭となると別かもしれないっすね、負けないっすよ」
「本当に頑張った方がいいと思う、じゃないと多分落ちるぞ」
『問題用紙と答案用紙を配ります、開始のチャイムが鳴ったら一斉にスタートしてください』
パット型のデバイスとかで試験しそうなのに、何かこういう所は地球と変わらないんだな。
試験用紙が配り終えられると、数秒経つと開始の合図が鳴った。
問題用紙をめくり問題文を確認する。
最初は基礎的な計算問題、初めて見る数式のハズなのになぜだかわかる、こんなの見たことないのになぜわかるんだ。
これはまさか、睡眠学習の成果なのか。
いやいや、さすがの睡眠学習でも数学問題は習得できないだろ。え、できるの。嘘だろ。
てか何で睡眠学習で数学を教えてくれたんだ、もしかしたらこの世界の最低限の知識は学習させてくれているのかもしれない。まぁ睡眠学習だし流すだけでいいから楽なのかもしれない。
と、そんな事考えてる場合じゃなかった、真面目に解かないと。
次は言語問題。流石は近隣一帯の星の言語を学習しただけあってこれもスラスラ解けれる。
大体は次の〇〇星の言語を翻訳しろ的な奴だ。
走り出したペンが止まらない中、俺はある問題で手が止まってしまった。
「うそ……だろ?」
その文章は見覚えがあるというには身近な文章ではない。しかし、その文章は俺が地球で生きていたことを証明するには十分な文章だった。
ローマ字で書かれた文章。明らかに英語が書かれていた。
「わっかんねぇ……」
この辺り一帯の星の言語はわかっても、俺の英語能力は英検3級にも満たないままだった。
無情にも終了のチャイムが鳴る。
スペース・リターン:宇宙の果てに行ったっきり、は嫌なので時空転移装置を探します @kinki4594
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