第五話 アパート七号室

 古びたアパ―ト前に車は到着する。駐車場がないため、路地裏でハザ―ドを焚き、左端に停車した。


「長居すると、周辺住民の混乱や、王宮警備隊に目を付けられますので、便捕らえて、戻ってください」


「わかってる、行くぞ。嬢ちゃん」


 コウジは赤いコ―トを翻し、車外に出る。路地裏を通行していた自転車は急ブレ―キの高音を響かせる。


 自転車の運転手は、コウジのコ―トよりも顔を怒りで赤く染める!


「ば、馬鹿野郎! って! あ、赤いコ―ト! て、天器てんき使いだぁあ!」


 運転手は顔を青ざめ、チェ―ンが千切れんばかりの勢いで、自転車を漕いで去っていった。


「待って下さい! コウジさん!」


 アスカは周囲の安全を確かめて、車外に出る。


 コウジは振り返らずに、目的の部屋を目指す。


「コウジさん! 私、まだ自分の天上神器てんじょうしんきの能力も理解できてないんです」


「ああ、わかったわかった。嬢ちゃんは隅でしとけ」


 コウジは目的の部屋の前に立つと、扉を蹴り破り、アスカに不敵な笑顔で振り返る。


便俺が済ますから」


 周辺の住民が、突然の轟音に窓から顔を覗かせ、ざわつき始める。


 コウジは部屋で倒れているドアを指さし、周囲を見渡す。そして、笑顔で掠れた声を住宅街に響き渡らせた。


「どうした、このドア。欲しいのか?」


 住民は赤いコ―トと、コウジの有無を言わさない迫力に肝を冷やし、顔を引っ込めてしまった。


「いくぞ、嬢ちゃん。便だ」


 奥へ乗り込むコウジに圧倒され、リラックスどころか放心状態のアスカであった。

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