第3話 意地っ張りなマージへー兄の想い

 やがて学院で、卒業式の答辞を読む生徒の推薦が始まった。成績最優秀のマージは真っ先に候補に挙がったが、彼女はそれを断った。


「どうして断るのか、まったくわからないわ。ミス・マーガレット=ライズン」


 教師は、マージの頑くなさにほとほと困り果てたようにため息をついた。


「貴女の成績はずば抜けて優秀なのに…。代々の首席卒業生は皆、答辞を読んで、中央都市で活躍しているのよ。中央の新聞だって、誰が答辞を読むのか、我が校に注目しているわ」


「…わからなくて、いいです」


 教師がその価値を熱弁するほど、マージの心は冷えていく。

 壇上に立ち、華やかなドレスに身を包んだ生徒たちに囲まれる自分を、何も持たないまま晒されるようで、どうしても想像できなかったのだ。




「中央女学院、今春飛び立つ少女たちの青春!!」


 中央都市の新聞スタンドで、売り子が声を張り上げる。


「おぉい、“1枚”くれ」


 声をかけたレオに、売り子はププッと吹き出した。


「“1枚”売りはしてねぇなァ、“1紙”だろ、にいちゃん。田舎がバレるぜ」


 小馬鹿にしたような少年の口ぶりに、一緒に歩いていた同僚たちからもニヤニヤ笑いが漏れる。

 カッと来た拳を、グッと抑えてレオが唸った。


「妹が中央女学院で頑張ってンだよ。バカなこと言ってねぇで、さっさと売れや」


 途端に、周りにいる男たちが声を立てて笑い出した。


「おいおい、レオ。ホラも休み休み吹け」


「ド田舎出身のお前の妹が中央女学院なんて、下働きの間違いだろ」


 ゲラゲラと渦巻く笑い声の中で、レオは歯を食いしばって耐えた。ここで暴れ出したら、もう逃げる先はない。――いや、逃げてはいけない。マージだって慣れない学院で頑張っているのだ。


――俺も甘ったれちゃいられねぇ。マージ…


 殴る代わりに小銭を突き出して、売り台から新聞をひったくる。

 新聞では、卒業式に答辞を読む生徒の下馬評が載っていた。筆頭は、


マーガレット=ライズン。


 そして少し堅く唇を結んだ、マージの写真。レオの頬が緩む。

 妹は、確かに夢に向かって歩んでいるのだ。そう思えば、質素な作業着姿の自分だって、何か祝ってやりたいと思えた。


–つづく–

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