6.狂気
真夜中。クロードの寝室にそれは現れた。
どこから侵入してきたのか、冒険者仲間のサムソンが立っている。しかし目に生気がなく、一目で
「
ひとまず危険を排除することを優先する。
白い炎は瞬く間にサムソンの全身を焼く。しかし一件落着──とはいかない。炎に焼かれた彼の腹部から黒いものが飛び出してきて、それは床に落ちたかと思うと、みるみるうちに
「パメラか」
「久しぶりね、クロード。あなた以外は全員殺してきた……意味は分かるわよね?」
返事もせず、クロードは右手を突き出す。その手から魔法が放たれるより早く、パメラはまた形を変える。
それはクロードの娘の姿だった。意図を察して、彼は魔法の詠唱を中断する。
「理解が早くて助かるわ。あたしはあなたの家族まで巻き込むつもりはない。というわけで、ちょっとお散歩に付き合ってくれる?」
クロードは少し迷ったが、そもそも負け筋などないことに気付いて、彼女の言葉に従うことにした。
*
タルクラルの森の奥地。パメラを追って歩き続けたクロードは、彼自身の作った不可視の領域に辿り着く。
そこに修道服姿の女がいた。彼女はランタンを持ち、背後に白骨化した──かつてクロードが殺した女たちを従えている。
「パメラ、連れてきてくれてありがとう。あなたはラディのところに行きたいですよね」
パメラが頷く。今は生前の姿をしている彼女は、振り返ると……クロードには一瞥もくれず、来た道を戻るように走り出した。
「誰かと思えば、外道シスターのマリスか」
「あなたに外道と言われる筋合いはないですよ。これ……全部あなたがやったんですよね?」
マリスがランタンを揺らす。それによって彼女たちの影が揺れた。
「さあて、何の話だか」
「卑劣ですよね。ダンジョンの中では何もせず、街に帰還する直前……気が緩んでいるところを狙って襲うのですから。何か理由をつけてこの場所に誘い込むのでしょう? まさかこんな散歩道の延長線上で襲われるとは思わないから、女性の側も油断している」
「ははは、だから何の話をしているのか分からないな」
「浄化の結界が張ってあるのも手が込んでいますよね。殺して埋めた彼女たちが
「マリス、この会話には何の意味もない。事件を立証できるのは、パメラとそこにいる彼女たちだけだ。そしてその証拠は俺がすべて消してしまう」
無音で詠唱を終えたクロードは、女どもを一掃する魔法を放った。
風が起こり──
「
光の暴風がマリスもろとも死者たちを吹き飛ばしたはずだった。しかしマリスは修道服をはためかせただけで無傷。その背後に立つ白骨死体たちも、少しバランスを崩しただけで無傷。
バランスを崩しただけ?
さすがのクロードも焦る。
「あなたは勘違いしているみたいですね。ここに
は──?
「彼女たちは闇よりも光に近い存在です。だから聖属性魔法は通用しません」
「意味が……分からない」
「分からなくたって良いのですよ。だってあなたはこれから死ぬのですし」
その言葉を契機に、再びクロードが動く。彼は無音詠唱していた
しかしマリスはその刃をあっさりとはたき落とした。それから彼の腕を掴み、彼を彼女たちに向かって投げ飛ばした。
あまりの出来事に受け身も取れず、クロードは地面に叩きつけられた。それでも彼は即座に体を起こそうとして──
眼前に頭蓋骨があった。その口がカクカクと動く。
『嬉しいわ。やっとあなたを殺せる!』
*
全身の骨を一つずつ丁寧に砕かれ、心臓以外の内臓を穴だらけにされて、あらゆる筋肉をズタズタに斬り裂かれ、それでもクロードは死ねずにいた。
その彼にマリスは尋ねる。
「答えれば楽にしてあげます。何故、女に不自由していないはずのあなたが、こんな犯罪に手を染めていたのですか?」
彼は無いはずの肺から息を吐き、
「ひひ、パメラみたいなプライドの高い女がよ、サムソンみたいな小汚い男に
答えに満足したマリスは、クロードに治癒の魔法をかけて、彼の体を元通りにしてあげた。
「ああ? 何を──」
「答えてくれてありがとう。お礼にもう一回、また最初から彼女たちに壊させてあげますね」
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