第3話 解き放て! 伝説の八畳敷き
ボォン!!!!
境内を揺るがしたのは、爆発音というより、巨大な何かが一気に膨張する破裂音だった。
境内の時間が止まる。
俺を掴もうとしていた黒狐の手が、空中でピタリと静止した。
「……な、なんだ?」
全員の視線が、俺の下半身に集中する。
まず、俺自身が驚いた。
お尻が涼しい。
恐る恐る振り返ると、裂けたズボンの隙間から、茶と黒の縞模様が入った、ふさふさとした極太の尻尾が飛び出していたのだ。
まるで丸太のような立派な尻尾が、ブンブンと勝手に揺れている。
「し、尻尾!? ケン、あんた尻尾生えてるわよ!?」
「うそだろ……本当にタヌキだったのかよ俺……」
だが、異変はそれだけではなかった。
真の恐怖(サプライズ)は、前からやってきた。
ズズズ……ッ。
不穏な音と共に、俺のベルトが悲鳴を上げる。
股間の奥底で燻っていた熱が、一気に質量を持って具現化したのだ。
「う、わ、わっ!? なんか出る! なんかデカいのが出るッ!」
俺は慌てて股間を押さえようとしたが、もう遅かった。
学生ズボンの前股部分が、内側からとてつもない圧力で膨れ上がる。
まるで、バランスボールを一瞬で膨らませたかのように。あるいは、丸ごとのスイカを二玉、無理やり押し込んだかのように。
学生服の生地が極限まで引き伸ばされ、パツンパツンに張り詰める。
俺の足は、その巨大な質量を支えるために、強制的に大きく開かされた。
見事なまでの、仁王立ちのガニ股である。
「お、重っ……!」
俺は呻いた。
重い……とにかく重い。まるで米俵をぶら下げているようだ。
その場に沈黙が落ちた。
雨音すらも遠慮して止んだかのような静寂。
その沈黙を破ったのは、狐たちのリーダー格である長老狐の、引きつった悲鳴だった。
「ひ、ひぃぃぃッ……!」
長老狐は、俺の股間のシルエットを指差し、ガクガクと震え出した。
「み、見ろ! あの神々しいまでの膨らみを! 地を這い、富を吸い上げるという、
八畳敷き……それは日本の民話において、タヌキが持つとされる変幻自在のキャンバスであり、富と繁栄の象徴である「
広げれば八畳にもなるというその袋は、タヌキ族にとってのステータスの頂点だ。
「馬鹿な……あのような巨大な袋を持つ個体は、数百年前に絶滅したはず……」
「ま、まさか、こやつ……ただの家康の末裔ではないぞ!」
「あの大妖怪・
狐たちがざわめき始める。
嘲笑の色は消え失せ、そこにあるのは純粋な「畏怖」だった。
あやかしの世界において、単純な戦闘力以上に、「血の濃さ」と「保有するタヌキ力の大きさ(=フグリのデカさ)」は絶対的な権威を持つのだ。
俺はどうしていいか分からず、とりあえず重さを逃がすために、ズシンと一歩前に踏み出した。
ドスゥン……!(物理的に重い音)
その一歩が、決定打となった。
「ひっ! お、お許しをぉぉぉッ!」
長老狐が額を地面に擦り付けた。
それに続き、周囲を取り囲んでいた黒狐たちが、ドミノ倒しのように一斉に平伏、土下座する。
「ははぁーッ! タヌキの若君とは露知らず、数々の無礼、平にご容赦を!」
「命だけは! 命と、我らの貧相な袋だけはお助けください!」
「戦争だけは勘弁してくださいぃぃ!」
境内を埋め尽くす狐たちの土下座の波。
その中心で、俺は裂けたズボンと巨大な股間を抱え、呆然と立ち尽くしていた。
「……えっ? 何これ」
印籠は効かなかったのに、キャンタマの影を見せただけで世界がひれ伏した。
俺の家系、どうなってるんだ。
そして……今まで恐怖に震えていた永久とチャコの二人が、ゆっくりと顔を上げた。
彼女たちの視線もまた、俺の股間の一点に釘付けになっている。
だが、その瞳に宿っているのは恐怖ではなかった。
「…………」
「…………」
二人の肩が、小刻みに震え始めている。
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