第2話 氷の滝の前で
目の前には巨大な氷の滝と、凍り付いた橋。
進まなければ頂上へ行けない。
滑落するかもしれない氷に覆われた橋を通るべきか、引き返すべきか。
引き返せ、と理性は言う。
……だが、せっかくの休日。ここまで来て帰れるか。
意地が引き返す足を止め、どうにか通れないか、と氷結した箇所とその周囲を観察する。
橋の周囲に目をこらしていると、一つ方法を見つけた。
「どうする……」
できるか、やっていいか。
頭の中で何度もシミュレーションする。
「……やってみるか」
決心して前に出た。
橋の前まで行くと柵を越えて滝の下へ。
凍った滝と橋の間にある隙間、滝口にある大きな岩の凍っていない部分を足場にして進んでいく。
転倒しないように橋の柵を両手で掴み三点支持で進み、反対側へたどり着いた。
柵を乗り越えて、無事に渡り切る。
「登山道から外れているので、ルール違反かもしれないけど、危険だったからやむを得ない……ってことで」
誰も見ていないのに言い訳めいた独り言を残し、再び歩き始めた。
徐々に急になっていくが、山頂に近い証拠だ。
しばらく歩くと巨大な岩壁にぶつかった。
百メートルはあろうかという一枚岩。
クライマーが練習によく使う岩壁で、多い時には数十人ものクライマーで覆われる場所だ。
だが今日はこの悪天候で誰もいない。
「霧でかすんでいても巨大だな」
すべて見えなくても、首を上げて数十メートルある巨岩を見るだけで価値がある。
よく見ると岩から染み出した水が凍り、白い筋となって氷瀑を作っていた。
さらに岩の間から生えた杉や松らしき木々の緑が彩りを添える。
「あと少しだ」
それらの景色を後にして、気を引き締め、最後の急登に挑む。
傾斜はきついが、手すりと整えられた階段を頼りに登っていく。
「はあはあ」
肺が苦しく、足が重い。
それでも力いっぱい登り続けた。
頂上が近いと傾斜がきつくなる。
きつい分ゴールが近いと心の中で言い続け、前進する。
「ぷはっ」
最後の一段を登りきった後、息を吐くとともに前が開けた。
ようやく、頂上にたどり着いたのだ。
苦しくて顔を下げ、肩で息をする。
呼吸を整えると、顔を上げた。
「……なんだ、これ」
周囲を見渡すように振り返って見て、愕然とした。
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