第21話 先代魔導王
新たに加わったルシアンたちと共に、一行はついに最上階、ダビデの玉座の間へと辿り着く。
そこに座るダビデは、醜悪な笑みを浮かべて一行を見下ろした。
「……素晴らしい。ソル、君が連れてきたその人間(カイ)こそ、余が求めていた最後の欠片だ」
「何の話だ、ダビデ!」
「カイ・ヴァロー。その身に宿した『循環』。それは魔力を浄化する力ではない。……魔界に充満する『世界の毒』を一身に集め、一つの核(コア)にするための器。……お前は、この世界を救うために『死ぬため』に生まれてきたのだよ」
ダビデが指を差すと、カイの右腕の紋章が、黒く、不気味に脈動し始めた。
「カイ……? どうしたの!」
セーラの声が震える。カイは自分の右腕を掴み、苦しげに顔を歪めた。
カイの右腕から溢れ出す黒い奔流。それは、彼がこれまで仲間を救うために「循環」させていた清浄な魔力とは正反対の、濁り切った絶望の塊だった。
「カイ・ヴァロー。この魔界を維持するには、何千万という魂の澱みを一身に引き受ける『器』が必要なのだ。貴様はそのために選ばれた、究極の濾過装置(フィルター)だ」
ダビデが玉座から立ち上がり、傲慢に腕を広げる。
カイの血管が浮き上がり、肌を裂いて黒い魔力が噴き出し始める。これが「循環」の真の姿——世界中の「死」をたった一人の人間に押し付け、その命を削って魔界を延命させる残酷なシステム。
「嫌よ……! カイ!!」
セーラが、悲鳴に近い声を上げて駆け寄る。だが、カイの周囲に発生した魔力の渦が、彼女を拒絶するように弾き飛ばした。
「ぐ、あああああッ!!」
カイの叫びが玉座の間に轟く。
王の宣戦布告
「――ふざけるな、ダビデ」
低い、地を這うような声。
ソルの銀髪が、怒りによって白銀の光を放ち始める。
「カイは、僕の親友だ。世界を救うための道具じゃない。……そんなもののために世界が回ってるって言うなら、僕がその世界を叩き潰してやる!!」
「無知なる若造が。循環を止めれば、魔界は数日のうちに崩壊するのだぞ?」
「だったら、崩壊しない新しい仕組みを僕たちが作る! カイ一人に背負わせるような不完全な世界なんて、僕がいらない!」
ソルの言葉に、解放されたばかりのルシアンやバルカンたちが突き動かされるように立ち上がった。
「……そうだ。俺たちはもう、誰かの犠牲の上に胡坐をかくのは御免だ!」
「愚かだ、だがすべては神の定め、余はここで死ぬであろう、だがそれでよい。それが神が私に与えた役目」
「「「おおおおおッ!!!」」」
ルシアンの剣、バルカンの拳、そしてセーラの魔導銃が、一斉にエルセデスへと向けられた。
長きにわたる死闘の末、ソルとカイの合技がダビデの胸を貫いた。
塔の最上階が崩落し、先代魔導王の支配が終わりを告げる。
「……はぁ、はぁ……。やったな、ソル」
「……うん。……カイ、腕は?」
カイの右腕の黒い紋章は、ダビデの死と共に一度は沈静化したように見えた。だが、その芯には消えない「黒い澱み」が確実に残っていた。
「……大丈夫だ。セーラが手当てしてくれれば、すぐ治るさ」
カイは無理やり笑ってみせ、駆け寄ってきたセーラを抱きしめた。
アークが生まれるまで、あと数年。
魔界に新しい太陽(ソル)が昇り、一見すると平和な時代が幕を開ける。
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