第13話 招集

「……おいアーク、これ食えるか? 購買で投げ売りされてた『魔界トカゲの燻製パン』だ」

​キースがどこからか持ってきた、青白く光るパンをアークのベッドに放り投げた。

アークたちはいつものように、旧校舎の埃っぽい談話室に集まっていた。

​「……見た目は最悪だけど、味は意外と普通だな」

「でしょ? でもそれ、噛むとたまに痺れるから気をつけてね」

​ルナが呆れたように笑いながら、アークの傷口に新しい薬を塗ってくれる。


学園全体がアークを怪物か英雄のように見る中で、この場所だけは昨日までと同じ「落ちこぼれのアーク」として扱ってくれる。

​「なあアーク。お前、本当に『騎士』になっちまうのか?」

キースが少し寂しげに呟いた。

​「魔導王様の直属なんていったら、もう僕らとは住む世界が違うだろ。お前、そのうち七魔神様たちと一緒にかっこいい鎧着て、高い塔の上でワインとか飲むようになるんだ」

​「そんなわけないだろ。……僕は、ただ強くなりたかっただけだ。父さんたちがいた場所に、少しでも近づきたくて」

​アークの言葉に、ルナが手を止めて真剣な目で言った。

​「いい、アーク。あんたがどこへ行こうと、ここが『家』よ。もし辛くなったら、いつでもこのボロい椅子に戻ってきなさい。……あんたの分のおやつ、キースに食べられないように取っておいてあげるから」

​「……ありがとう、ルナ」

​温かい空気が流れる中、不意に、アークの右手の甲が熱を持った。

そこには、査定戦の後に魔導卿セルによって刻まれた『見習い騎士の紋章』が、禍々しく紫色の光を放っていた。

​「……招集だ」

​ゼファー先生が、部屋の隅で窓の外を見つめながら低く言った。

空を見上げれば、巨大な「ソルの塔」から一本の光がアークの紋章へと繋がっている。

​「アーク。言っておくが、これは『遠足』じゃねぇ。魔導卿がわざわざAランクに引き上げたのは、お前にそれ相応の死地を歩かせるためだ。……行ってこい。仲間のこと、忘れるんじゃねぇぞ」

​「……行ってくる。キース、ルナ、また明日な」

​アークは二人に背を向け、談話室を後にした。


​塔の低層部。

​そこには、魔導卿セルと、不機嫌を隠そうともしないガレスが待っていた。

​「遅いぞ、人間。貴公を待つために、私の貴重な数分が奪われた」

​セルは二人の少年をみて、机の上に一枚の地図を広げた。

​「……慣れ合いは済んだか。では、最初の任務を言い渡す。場所は学園北方に位置する『腐りゆく精霊の森』。そこで発生している原因不明の『魔力枯渇』を調査し、原因を排除せよ」

​セルの目が、眼鏡の奥で鋭く光る。

​「ガレス、お前には結果を。アーク、お前には『生存』を期待する。……どちらかが欠けても、任務は失敗だ。ゆけ」

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