第5話
「すまなかったな君たち。面白そうだったから、つい出来心でね」
「良いんですよ、藤原さん。藤原さんは悪くありません!元を辿ればあの二人が原因なのよ!!」
「彩花さん、別に二人も悪いことをしたわけじゃないと思うけどなぁ……」
彼女らを背にし、痩せこけた僕ら二人はコンパスとなり、宝島を目指すため荒れ狂った海を航海する。
「悠真先輩……。あの人、怖いっす……」
「あの人って、どっちのほうかな……?」
「二人ともですけど、藤原さんは特に底が知れない恐怖があるっす……」
バリカンで丸裸にされた心情の翔に、情なさと申し訳なさが入り混じる。僕はそっと肩に手を乗せる。
「ごめんね翔くん。藤原さんには今回VRの件、経緯を話してたんだ。こんなに事が大きくなるとは……」
僕は藤原さんに対して、ジロリと小さな反抗を見せつける。
「仕方ないだろう。君の発言を完全に予測するなんて不可能なんだから」
その努力虚しく、化けの皮を剥いだ藤原さんの口調は元に戻っていた。
彼女の優越感に浸る顔は純粋で美しかった。
その隣には今にも般若になりそうな森下さんと、はにかむ天使、森下さんが手を振る。
「大丈夫っす……!森下姉さんの評価は激落ちっすけど、VRゲームで良いところ見せれば、プラマイゼロっす!」
プラマイゼロでいいのか。そもそも許されるのか?と思いつつ、へこたれない彼の姿は、僕が一番見習わなければならない要素であることに間違いない。
「みなさん、そろそろ着くっすよ〜」
基盤の目を抜け出し、僕らは大通りに出る。
周囲はいかにも大企業を象徴する植栽が施された建物に囲まれており、目的地であるにビルに到着した。
見上げると太陽光が青い窓ガラスを反射させ、輝く宮殿のような神々しさを演出していた。
「長かった……。予定とは違いますが、こっからが俺の逆転劇が始まるっす!」
選挙ポスターの様に拳を握る翔。
「始まってすらいない物語を終えてやろうか?」
翔へ再度闘魂注入しようとする森下さん。
「彩花さん……」
その手を止めようとする天使、高橋さん。
「いいぞ、もっとやれ」
この乱世を生み出した戦犯、藤原さん。
「……」
そしてそれを見つめる自分。
うまく言葉に出来ないが、僕はこの瞬間が愉快で、かけがえのないものだと感じた。
それはきっと死ぬまで、例え生まれ変わったとしても、この情景は忘れたくないと心が叫ぶかのような、そんな気持ちになった。
ピコン!
感傷に浸っていた僕のスマホに、トークの着信音がバイブレーションと共に響く。
ポケットから取り出し、画面を開く。
「なんだこれ……?」
トークの宛先を確認する。名前が空白だ。
新手の乗っ取りアカウントかと思い、スルーする選択肢もあったが、内容が気になったのでメッセージを確認する。
『縺雁燕縺檎衍繧九↓縺ッ縲√∪縺�譌ゥ縺� 』
意味不明な文字化けした文章の羅列が一文のみ、記されていた。……気味が悪い。
「どうしたんすか、先輩?」
翔の言葉に気づくと皆、不思議そうな顔をして僕を待っている。
「ごめん、何でもないよ」
高揚していた僕に薄い影を残したそれを、何事も無かったように押し込んだ。
機械仕掛けの観測者 ―Mechanical Observer― 榊󠄀原軍人 @isato_ss
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