第13話 父の盾と、私の盾

「やっと帰って来れたねー。」

「疲れた〜。」

二人の声で、やっと私も座る事が出来た。


山間部からの帰還。


「お疲れ様です。魔石の採取…どうでした?」

ギルドの受付嬢さんの声。


「ありがとう…カウンターに行くね。」

「いえ、ここで大丈夫ですよ。」

うわぁ〜、優しい。


私達が疲れているのを気づかって、駆け寄ってくれたんだ。


「あ、ここにあります。」


エタルナが台車に乗せた魔石を受付嬢さんに手渡す。


「凄い!こんなに沢山!マスター、ギルドマスター!」


「おぅ…お前達、頑張ったな。」


え?

ギルドマスターが私達を褒めた?

褒め言葉、知ってたんだ。


「何だ、変な顔して。」

「いえ、ギルドマスター程では無いです…」


「何?」

「あ、違います…立派なお顔です。」

ヤバー、つい本音が出ちゃうのは、悪いクセね。


「まぁ、良い…そのまま座りながら聞け。」

何よ?偉そうに…


「お前の父親が在籍していたパーティーの仲間が1人、今、この町に来ている。」

「え!?」

お父さんの仲間!?


「そ、その人は今、どこに!?」

すがるような気持ちでドワルクに尋ねる。


「盾役だった男だ。」

「アイツの娘がお前を探している事…伝えたのだがなぁ。」

頭をかきながら言うドワルク。


「そうか…と、言うだけで去ってしまったんだ。」

え?一体、どういう事?


せっかく会えるかも知れないタイミング。


待ってくれていても良かったんじゃないの。


「で…その人の特徴は、どんな感じ?」

ユミエルの質問にドワルクが答える。


「んー、とにかくデカいヤツだ。」

デカい?…トロール並かな?


そんな訳…ないか。


「その人は、まだこの町に?」


エタルナの質問にドワルクが少し押し黙る。


「それは…分からない。」




「はぁ…」

ため息が溢れるのも仕方ないと、許して欲しい。


せっかく父の事が聞けると思ったのにな。


遠征からの帰還。


とりあえず…お腹を空かせた私達は、町外れの食堂へと足を運んだ。


「かんばーい!」

「お疲れ様だねー。」

「ウッス。」


採取成功を三人で喜び合う。


と…その時、右肩の球体が震えた。


「ん?何?」


辺りを見渡すと…壁際に立てかけたエタルナの盾に触る人物が居る事に気づいた。


「ちょっと!」


私が声をかけようと立ち上がる前に、盾の持ち主であるエタルナが立ち上がった。


「何、あたしの盾に触っているの!」


温和なエタルナが激しくののしる。


あれ?エタルナってば、こんな風に怒るんだ。


「お前のか…良い盾だ。」


盾を撫でながら言った人物は、とても大柄な男。


「だが…まだまだだ。」


怒りに溢れた、エタルナが肩を震えているのが分かる。


「あたしの盾に触るな!」

エタルナが、大柄の男の襟元をつかむ。


「ちょっ、エタルナ!」

臆病なエタルナの筈が…何があった?


「この盾は、守るべき相手をちゃんと見ていない。」


「何、訳の分からない事を言っているんだ!」

「あたしは、昨日も仲間を守った!」


ん?待てよ…見知らぬ大柄の男性。


先程のギルドマスターの言葉を思い出す。

…もしかして、お父さんの元仲間かも!


「待ってエタルナ!その人、お父さんの仲間だった人かも!」

慌てて二人の間に割って入る。


ギョロリとした目で私を見る大柄の男。


エタルナが小さく見える。


「ん?お前がさっき聞いた…アイツの娘か?」


間違い無い…お父さんが所属していたパーティー"エターナルインテンション"の元メンバー。

ギルドマスターが言ってた…盾役。


「はい…アンジュと言います!」


まさか、出会う事が出来るなんて…

自分の幸運を褒める。


「そうか…良い目をしている。」


「あ、ありがとうございます!」

「それで…お父さんの事、聞かせて欲しいんですけど…」


そう頼んでみたけど…その人は険しい顔つきとなった。


右肩に浮かぶ球体が熱く光を増す。


「悪いが…それは出来ない。」


はぁ?

大男の言った意味が分からない。


「えっと…どういう事ですか?」


質問をする…が…


「今は、まだその時では無い…」


何?

どういう事?

男は、会計を済ますと店の外へと出て行った。


追いかけようとした私をユミエルが引き止める。


「何よ…」


せっかく見つけたお父さんの元メンバー。

何も情報を得られなかった。


「アンジュちゃん、大丈夫?」

「ありがと…そういえばエタルナは?」


「私は…大丈夫。あの男…アンジュのお父さん盾役か…只者では無いな。」


その後…私達の食事は沈黙に包まれた。


「あ、お代はもう貰っているよ。」

支払いをしようとすると、店の人から告げられる。


「えっと…大柄の男からですか?」

「そうだよ。お釣りが出るくらいさ。」


冷たい感じだった盾役の男。


実は…そうでも無いのかも知れない…

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