第12話 淡い魔石と、転がる岩
朝食後、テントを片付けた私達は目的地に向けて出発する。
今回の目的地は、山間部だ。
依頼は魔石の採取。
少し歩き始めたところでユミエルが言う。
「魔石の採取は簡単だけど、遠いのが難点ねー」
「まぁ、あの山はモンスターが強くないから良いじゃない?」
強いモンスターとの戦闘は避けたい。
怖いのは勿論だけど、何より怪我をするリスクの回避。
また、エタルナがバーサーカー化しちゃったら困るからねぇ。
「ところで魔石って、どういった使い道があるんだ?」
エタルナが聞く。
彼女が育った村には魔法使いが居なかったという。
なので、魔法と因果関係の深い魔石について知らないのは当然かも。
「えっと、魔石はね……魔法を貯める事が出来たり」
「加工して、魔法を強化するアーティファクトを作ったり」
「まぁ、使い手次第で万能な訳よ。」
魔法使いのユミエルが丁寧に答える。
…正確には"魔法使いでは無い"かもだけど。
お昼までには目的地に到着したいところね。
道中の草原は広く、目印を見失うと迷うレベル。
ギルドから地図は貰ったから、まだマシ。
しばらくすると、ユミエルの歩みが遅れ始めた。
「その道具、重いだろ…あたしが持つよ」
力持ちのエタルナがユミエルの荷物を半分持った。
「じゃぁ、私はその杖を持ってあげる。」
「ダメ!この杖は…絶対」
冗談交じりに言ったつもりだったけど、真剣に断られてしまったわ。
国宝級のアーティファクト。
冗談でも言っちゃダメだったかも。
「ごめん…」
「うん、ウチこそゴメン。」
杖の代わりに食器類が入ったバックを受け取る。
ユミエルは時々、杖を太陽に向けてかざし、
魔力が貯まっているかの確認をしていた。
今、思うと…ユミエルは同じような行動を以前もしていた気がする。
山間部に入った。
目的地までは、もうすぐかも?
だけど、そこからの地図は不鮮明だった。
ここのモンスターは、それほど強く無いと聞くけど、それでも相手はモンスター。
出くわさない事を祈る。
山道は思ったより険しい。
ハァ、ハァ、とユミエルの息使いが荒くなっているのを感じる。
パラパラ…
不自然に小石が転がる。
ん?なんだろ?
そう思った時、
右肩に浮かぶ球体がかすかに揺れるのを感じた。
が…すぐに止まる。
―気のせいだったかな?
「アンジュちゃん、もうすぐ?」
「えーっと、あの岩を超えた辺りかな?」
指を差す方向に…数体のトカゲ型のモンスターが見えた。
「伏せて!」
大きな声は出せない。
同時に右手でかがむように、指示を出した。
「あれは…ロックリザード。」
お父さんが書いてくれた絵にあった。
確か…攻撃力は低いけど物理攻撃が効きにくい相手。
「ユミエル、杖の魔力…溜まっている?」
「大丈夫、十分に濃いわ」
見つかったら、ユミエルの先制攻撃が重要。
ロックリザードの弱点は水魔法である事を伝える。
「行ったみたいだ。」
恐らく、私達のパーティではエタルナが一番、目が良い。
「よし、進もう。」
周囲に気を付けつつ歩くと、
山肌の所々に淡くオレンジ色に光る石を見つけた。
「魔石とやら…これで合ってるのか?」
「うん…確かに、これは良い魔石だわ。」
エタルナの質問にユミエルが答えた。
なるほど…成功報酬が高額な理由が分かる。
太陽は頭上にて存在感を示す。
昼食を取って休みたい所だけど、さっきのモンスターの存在が気になる。
「急いで採取しよう」
ユミエルとエタルナも頷いた。
採取用の道具を持ってきているので、作業はスムーズ。
「ウチもこの魔石、使ってみたい。」
「もしかしたら、杖への魔力補充に使えるかも。」
疲れていた筈のユミエルは、この魔石群を見て元気が出たようだ。
「よし、依頼よりも多めに取って帰ろう。」
そう言うと、ユミエルが微笑んだ。
エタルナも張り切って採取している。
ふぅ。
「そろそろ良いんじゃないかな?」
幸い、ロックリザードは出現しなかった。
「沢山、取ったから重いな…結構。」
「ウチの荷物、自分で持つわ。」
ユミエルは再び、自分の荷物を持った。
力持ちのエタルナは魔石の運搬を一手に引き受ける。
「エタルナ、ありがとう」
「おう、さぁ…帰ろう」
…ブルブル
え?何?
右肩に乗る球体が熱を帯びた。
「どうしたの?球体ちゃん?」
見た事が無いくらいに横揺れしている。
「アンジュちゃん、どうしたの?」
「何かあったのか?」
『揺れ…来る』
球体の異常を知らせる前に、頭の中に声が響いた。
「地震!」
地面が揺れる。
カラカラと石が上部から転がる。
「アンジュ!ユミエル!あたしの後ろに!」
エタルナの大きな楯の後ろへと移動。
揺れはさらに大きくなり、落ちる石は……変化。
大きな岩が転げ落ちる。
『…発動』
球体の声が聞こえる。
でも…ダメ、私だけじゃ!
「ユミエルとエタルナも守って!」
ドーン!ドドーン!
山頂の方から、大きな音が聞こえる。
上を見ると大きな岩が何個も落ちてくる。
マズイ…
「グラビデ!!」
え?グラビデ?
それは…魔法使いの最上級魔法の筈。
大きな音は瞬時に消える。
岩が…大きな岩も小さな石も…宙に浮かんでいる。
「何?」
隣を見ると、真剣な眼差しをしたユミエルが杖を頭上へと上げていた。
「凄い…」
―グラビデ。
お父さんから聞いた事がある。
魔法師が使う最上級の魔法。
重力を操り、重力を制御する。
揺れは収まり、山は先程までの静けさを取り戻した。
―バタっ
「ユミエル!」
咄嗟に動いたエタルナがユミエルの体を抱き起した。
「ユミエル!大丈夫!?」
そう声を掛けると、ユミエルは小さな声で答えた。
「うん、大丈夫だよ。」
青白い顔となったユミエル…あきらかに息を切らしている。
山から下り、草原を歩く。
「ねぇ、ユミエルってば…あんな凄い魔法もアーティファクト?」
「そだよ…凄いでしょ。私のアーティファクト。」
そう伝えるユミエルの横顔はどこか不安化だった。
「ところで…さっき、アンジュの球体は私達を守ってくれたのか?」
「ん-」
エタルナの問い掛けに返答に困り。
「―分からない」
正直にそう答えた。
すると右肩が少し温かくなり、声が聞こえる。
『今回は…回避』
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