第7話 依頼完了と、アンジュの父
「お前ら…俺をナメてるのかーーーー!!!」
ギルドマスター、ドワルクの怒鳴り声が重厚なギルド室に響き渡った。
いくら立派なキルド長室とは言え、防音は大丈夫なのかと不安になる。
「えっと…コレはレッドゴブリンの亡骸って事で合ってますよね?」
聞くと、ドワルクは大きく息を吐いてから言葉を発した。
「合ってる…が、もう一度聞く。」
「このレッドゴブリンをお前達はどうやって倒したんだ?」
「ちゃんと答えろ!」
そう言われて私達は、練習した答えを繰り返した。
「確か…ウチが魔法でバババッってして…」
「その後…あたしが槍でズンってして…」
「ほんで…私がこの剣でザンッて…」
3人で考えた通りに答えると…ドワルクの顔がみるみる赤くなる。
「このレッドゴブリンの致命傷は強烈な弓矢によるものだ!」
「魔法でもなければ槍でも剣でも無い!」
えええーーー、どうして分かるのよ。
驚きのあまりギルドマスターをじっと見つめる。
「そんなの…分かるんだ。」
しーーー!エタルナ、ちょっと黙ってて。
「分かるに決まってるだろ!」
ダメだわ~、完全に頭に血が登っちゃってるわぁ。
「結果論…このレッドゴブリンを倒したのは私達じゃないわ。」
「ただ、この亡骸はレッドゴブリンで間違い無い…」
「と言う事は、依頼達成って事でオッケー??」
うん、怒ってるわね…
人間の顔って、こんなに赤くなるものなのね。
「バカヤロー!俺はレッドゴブリンを倒せ!と言ったんだ!」
「倒してないだろ!?」
「このレッドゴブリンは、一体どうやって手に入れたんだ!?」
そんなに大きな声を出さなくても聞こえるわ。
「えっと…他のパーティーの人がくれたのよ。」
ダンジョンの入り口でレッドゴブリンの事を聞いた方が2階層で笑い合ってた私達に向かってやって来て…
「ほら、これがレッドゴブリンだよ。」
「て、差し出してきてくれたの。」
もう、ラッキー以外の何ものでも無かったわぁ〜感激だったわよ。
「親切な人だったわよねー。」
「あぁ、そう言えば弓の装備を持っていたな、あの人。」
ユミエルとエタルナと一緒に手を繋いで小躍りした事を思い出す。
あの弓使いの人は困惑してた様子だったけど…
「で…お前達は嘘をついた訳だな…」
ドワルクは、椅子に座り直すとそう言った。
「えっと…ウチ達の人徳ってヤツよ…ウチ達の魅力がレッドゴブリンを倒したも同然って事なのよ。」
ユミエル…厳しいわ。
ちょっと厳しい言い訳だわ。
「あの親切な弓使いの人に報いるには、こうするのが最良だと結論づけたのだ。」
エタルナ…強引だわ。
ちょっと強引すぎる結論だわ。
ニラみつけるドワルク。
こうなったら、正直にあやまるしか無いわね。
「スミマセン、嘘でした。」
「正直に言うと報酬を貰えないかも?って思ったから機転を利かせましてね…」
とりあえず、謝罪してこの場を逃げ切る事に専念。
「お前達に与えた依頼は失敗だ!」
カッと目を見開いて告げるドワルク。
「えー、報酬はゼロ…って事ですか?」
顔の前で両手を握り、可愛い感じに聞くユミエル。
が…ドワルクには効かない。
「当たり前だろ!ゼロだ!ゼロ!」
そうなるわなぁ…
あぁ、2日間の苦労が水の泡よ。
「ゼロか…とても悲しい。」
泣かないでね、エタルナ…今回の成果は、エタルナの秘密が分かった事くらいね。
「報酬ゼロどころか…謹慎処分にしたいくらいだ。」
「ギルドに嘘をつこうなど…言語道断!」
ちゃんと謝ったのに、ドワルクってば心が狭いわ。
「えー、謹慎処分になんてなったら依頼を受けられないじゃない。困る〜。」
ユミエル、まだ可愛い子モードになってるな…効いていないと思うぞ。
「そこを何とか…あたしに免じて御慈悲を!」
エタルナ…本人だから、エタルナも謹慎処分対象だから。
「ドワルクさん、次は、次こそは!何卒〜!」
仕方ないわ、ごはんを食べる為に働かないとっ。
ここは、頭を下げて懇願するしか無いわ。
「あー、まぁ、アレだ。」
「お前の父親には世話になったからな…今回は処分保留にしといてやる。」
「いいか、今回だけだぞ!」
その一言で、私の感情は高ぶった。
「はは〜。ドワルクさま〜。」
「ギルドマスターさま〜、寛大な御慈悲に感謝。」
ユミエルとエタルナが盛大に頭を下げる。
私は、ドワルクに質問を投げかけた。
「ドワルクさんって、お父さんの事を知ってるの?」
お父さんからドワルクの話を聞いた事は無かった。
「あぁ、何も聞いていないのか?」
「アイツらしいな。」
意味深なドワルクの発言に私の心は驚きと共に喜びを感じた。
「聞いていないです、聞きたいです!」
お父さんの話…聞きたい。
だって、もう直接お父さんに聞くことは出来ないから…
「まぁ…そうだな。」
ドワルクは少し考えたようで、間を置いてから話し始める。
「俺が所属していたパーティーは、そこそこ強くてな。Aランクだった。」
「ある日、ダンジョンの奥深く、新たな階層を見つけて我先にと飛び込んだ。」
「勿論、新階層を見つけた時は、まずギルドに報告というルールは知っていた。」
「だが、調子に乗っていた俺達は、報告を他のパーティーに依頼して、単独で降りた。」
「そこに待ち受けていたのが、混乱攻撃を得意とするモンスターだったんだ。」
「俺達は敵味方の区別が分からなくなって、お互いに攻撃をする事態に陥ってしまってな…全滅しかけた。」
「そこに登場して助けてくれたのが…」
「アンジュ…お前の父親が所属していたパーティーだった。」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が、ぎゅっと掴まれた。
知らなかった。
そんな話…一度も、聞いたことがない。
話し終えるとドワルクは、机の上にあった飲み物を口へと運んだ。
「お父さん…」
一言、そう言うと…自然と涙が溢れてきた。
「アンジュ、大丈夫か?」
エタルナが心配そうに声をかけてくれる。
「おっちゃん、アンジュちゃんを泣かしたらあかんで!」
ユミエル、一応、ギルドマスターだから…ドワルクにおっちゃんは、ヤメてあげて。
「あの…他に、他に話しはありませんか?」
「お父さんの話を聞きたいです。」
懇願するかのような言い方になっちゃったけど…それほどにまで聞きたいと思った。
もう会えない…お父さんの話。
「うーん、俺が直接、話をしたのはその時くらいだからなぁ。」
「お前の父親が所属していたパーティーのメンバーなら、色々と話を聞けると思うが。」
ドワルクの話に思わず前のめりになる。
「会いたいです!お父さんの所属していたパーティーの方々に。」
その人達だったら、お父さんの話も、お父さんが言っていた宝具の話も聞ける筈!
「残念だが…解散してしまって、今はそれぞれどこに居るのか分からないって話だ。」
そんな…解散しちゃったなんて…
「それじゃさー、探そうよ、ウチ達で。」
「うん…力になる。なりたい。」
ユミエル…エタルナ…ありがとう。
「仕方ない…ギルドも出来る限りの情報を集めよう。解散したパーティーの名は"エターナルインテンション"だ。」
エターナルインテンション…そう言えば聞いた事がある。
お父さんは言っていた。
俺達は最強のパーティーなんだって…
でも…どうして…
最強のパーティーが解散しちゃったのかな?
そして…どうして…
お父さんは戻って来れなかったのだろう?
私は、その答えを知りたいと思った。
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