第6話 エタルナの秘密と、これから

「出血、止まった?」


「うん、でも…一応、包帯は巻いたままにしておくわ。」


エタルナがおかしくなってから、しばらくが経過した。


遠くで、モンスターの鳴き声が反響する。


心臓のドキドキは、まだ収まらない。

それでも……怪我の具合は確認しなきゃ。


バーニングウルフから受けたユミエルの傷も塞がった様子。


一体、何が起こったのかしら?


突然、エタルナが狼のような形相になって…狂ったようにモンスターを倒したかと思ったら、私にまで攻撃を加えて来た。


それも凄い力で…もし"球体"の強化魔法?が無かったら私もヤラれていたかも知れないわ。


「う…うぅ…」


離れた位置で倒れていたエタルナからうめき声が聞えた。


「ユミエル…一応、下がって。」


座っていた岩から立ち上がり、ゆっくりとエタルナに近づく。


すると、エタルナは上体を起こして、私の方を見た。


うん…いつもの表情だ。


「2人共…ごめん。」


小さな声で謝罪の言葉を口にするエタルナ。


すぐにあやまった事から察すると、狼のような状態を、どうやらエタルナ自身も分かっていたって事ね。


「エタルナちゃん、大丈夫?」


後ろから恐る恐る近づいたユミエルが声をかけた。


「うん…もう、大丈夫。」


私達からは目をそらしながら、エタルナはそう答える。


そして小刻みに震えている…置かれている状況に怯えているのか。


すぐ近くにいるエタルナが、まるで知らない人かのように感じる。


「えっと…さっきのは一体…」

「何があったのか説明できる?」


少し迷ってから、私はエタルナに問いかけた。


「うん…でも、詳しくは分からないんだ。」


そう言うと、エタルナはゆっくりと私達の方を見た。


「分かる範囲で良いよ。」


ユミエルが優しく声をかけると、エタルナは言葉を選ぶかのように少し考えた後、口を開いた。


「バーサーカー。」


「…え?バーサーカー?」

思わず聞き返した馴染みのない言葉。


「簡単に言うと……自我を抑えられない戦士になる。」


「自分をコントロールできないってこと?」


ユミエルの顔を見てみたが、同じく…よく分からないといった反応をしている。


「狂った戦士っていう職業みたい。」


職業??


まるで狼が暴れていたかのような姿だったエタルナ。


あれが職業だって言うのか?


「職業って言うと…剣士や魔法使いみたいな?」


私が何も口に出せずにいると、ユミエルが代わりに質問する。


「うん…長老がそう言っていたんだ。」


長老?エタルナが産まれた村の長老の事かな?


「もしかして、エタルナの出身の村の人達は全員、バーサーカーっていう職業なの?」


言いたくない事かも知れないけど、聞かないと何も分からない。


「いや…あたしだけ。」


そうなんだ…村に一人だけって、辛い話かも。


そう思いながら、じっとエタルナの顔を見つめた。


「その…さっきの状態だと、記憶は無い訳?」


ユミエルの問いかけにエタルナは小さく頷いた。


「何ていうか…少し離れた頭の上から自分の行動を見ている感じ。」

「止められないんだ。」

「さっきはごめん、アンジュ。」


そこまで言うとエタルナは泣き出してしまった。


「すんごい強かったね、エタルナちゃん!」

あわてた様子でユミエルが、そう伝える。


確かに強かったけど…あの様子じゃとても戦闘には使えない。


ユミエルが気を遣って言っているのは間違いない。


「ごめんなさい…ごめんなさい…」


エタルナは泣きながら、謝罪の言葉を繰り返す。


「大丈夫よ!私は全然、何ともないわ!」

「エタルナの攻撃なんて、へっちゃらよ。」


本当はギリギリで受け止めたエタルナの攻撃。


そう伝えると、エタルナは泣き止んで、ゆっくりと顔を上げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る