第20話
日輪、拗ねる
酒宴の翌日。
――いや、正確には
翌日という概念が成立しない時間帯。
俺は、再び呼ばれた。
今度は、
光が明確に不機嫌だった。
「……」
高天原。
前回よりも、
明らかに“暑い”。
「……」
天照大神は、
玉座に座ったまま、
こちらを見ていない。
須佐之男が、
すぐ横で肩を揺らしている。
「おいおい姉上」
「顔見ねぇのかよ」
「……」
返事がない。
月詠は、
少し後ろで腕を組み、
口元を押さえている。
「……作家さん」
天照が、
ようやく口を開いた。
声は、低く、
だが確実に刺がある。
「昨夜は――
楽しそうでしたね?」
「……どこから聞いたんですか」
須佐之男が即答する。
「嵐が見てた!」
「嵐に監視機能つけるな!」
天照は、
ゆっくりと立ち上がる。
光が、
じわじわと圧を増す。
「酒宴」
一歩。
「焚き火」
二歩。
「月」
三歩。
「……私の席は?」
完全に拗ねていた。
須佐之男が、
腹を抱えて大爆笑する。
「ははははは!!」
「姉上、拗ねると太陽が近い!」
「近いのはあなたの態度です!」
月詠が、
とうとう吹き出した。
「ふふ……」
「これは珍しいですね、姉上」
天照が、
ぴたりと止まる。
「……月詠?」
「はい」
「あなたも、
“楽しんでいた側”ですよね?」
月詠は、
一瞬だけ目を逸らし――
にっこり笑った。
「ええ、とても」
須佐之男が、
さらに笑い転げる。
「だってよ姉上!」
「呼ばれてねぇんだから仕方ねぇ!」
「呼ばれていないのではありません」
天照が、
きっぱりと言う。
「呼ばれなかったのです」
重い。
重いが、
完全に論点がズレている。
俺は、恐る恐る口を挟んだ。
「……あの」
三神の視線が、
一斉に俺に向く。
「呼ぶっていう概念が、
俺の中になくてですね……」
須佐之男が、
膝を叩いた。
「ははは!
人間に神の酒宴マナー求めるな!」
月詠が、
静かに頷く。
「姉上、これは不可抗力です」
天照は、
しばらく黙った後――
ふっと、笑った。
「……そうですね」
光が、
少しだけ和らぐ。
「では、次は」
ちらりと俺を見る。
「必ず呼びなさい」
「……善処します」
須佐之男が、
肩を組んでくる。
「決まりだな!」
「次は姉上も飲ませるぞ!」
「須佐之男」
「あなたは、もう少し慎みなさい」
「無理!」
月詠が、
くすくすと笑う。
「この三柱で飲めば、
世界が一晩持たないかもしれませんね」
天照が、
満更でもなさそうに言う。
「……それも、
悪くありません」
俺は、遠い目をした。
「次は、
耐震補強してからにしましょう」
須佐之男が、
再び爆笑する。
高天原に、
珍しく笑い声が響いた。
太陽も、嵐も、月も。
その中心で、
俺はただの作家だった。
それが――
この酒宴の、一番の奇跡だった。
次元遊歩者(ディメンション・ウォーカー) ――全世界を踏破する男の叙事詩――』 @hitroshi
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