第2話 デイリーダンジョンは効率がすべて

デイリーダンジョンには、いくつか種類がある。

討伐、探索、採取。


今日は採取だ。


鉱石採取。

地味だが、報酬はいい。


「おにい、今日は石掘るやつだね」


「そうだな、今日もナビ頼むぞ」


「うん、任せといて」


ルナが俺の横でしゃがみこむ。

目の前には、壁から突き出した青白い鉱石。


すでに何人かのプレイヤーが集まっていた。


「よし、掘るぞ」

「はいはい、採取っと」


一斉に、同じ動き。


ピッケルを振り上げ、

同じ角度で叩きつける。


カン、カン、カン。


――遅い。


一定のリズム。

一定回数。


そして、ピタリと止まる。


「はい、終わり」

「次だ、探すぞ」


全員、同じタイミング。

同じ硬直。

サポート特有の挙動。


得られたのは、最低限の鉱石だけだろう。

もったいない限りだ。


「おにい、掘ろう?」


「ああ」


俺は一歩踏み込み、

鉱石の根元にピッケルを当てる。


角度を変える。

力を抜く。


カン。


ひびが走る。


カン、カン。


手応えが軽くなる。


がらり。


鉱石が一気に崩れた。


【鉱石×3】

【鉱石×4】

【鉱石×2】


通知が止まらない。


俺は欠片を拾いながら、

薄くなった部分を叩く。


カン、カン、カン。


【鉱石×6】

【レア鉱石×1】


おお、初っ端からレアとは幸先がいい。


「……は?」


背後で、誰かが声を漏らす。


「チートだろ、それ!」


俺は首を傾げる。


「マニュアルでやってるだけだ」


「マニュアルでそんな――」


「お前らには無理だろうな」


それだけ言って、次へ向かう。


「おにい、あっち」


「サンキュー」


ルナの指差しは迷いがない。

最短距離で次の採取ポイントへ導いてくる。


オート勢が周囲を見回している間に、

俺はもう次を叩いている。


カン。


【鉱石×4】


カン、カン。


【鉱石×2】

【鉱石×3】


ううん、さすがに二連続でレアはこないか。

まぁいい、数をこなせばいいだけだ。


「ちょっと待てよ!」

「なんだよそれ、NPCのえこひいきだろ!」


男が声を荒げ、

一歩前に出た。


その手が、

ルナのほうへ伸びかける。

俺の大切な妹に何をする気だ?


「汚い手で触るな」


次の瞬間、

男は地面に座り込んでいた。


何が起きたのか、

男は理解できていないようだった。


周囲が静まる。


俺は視線を戻す。


「二度目はないぞ」


最終警告だ、とにらみつける。


「散れ」


誰も動かない。

それなら、それでいい。

まだ絡んでくるなら、実力でわからせるだけだ。


「おにい、ありがとう」


ルナがにぱっと笑う。


「気にすんな、そんなことより鉱石だ」


俺は次の鉱石へ向かう。


カン。

カン、カン。


【鉱石×4】

【レア鉱石×1】


よし、今日も絶好調だ。


「……いこうぜ」


自分たちを完全に無視して、

黙々と鉱石を掘り続ける様子に脈がないと判断したのか、

背後で、誰かがぼそっと言った。


あたりに静けさが戻る。

やっと採取に集中できるな。


まったく貴重な周回時間が減ってしまった。

余計なことは忘れて、鉱石に向き直る。


まあ、どうでもいい。


今日のデイリーは、

まだ続く。


俺の楽しいVR生活は、

今日も効率よく回っていく。


必要なのは、

鉱石と、

ルナと、

いつもの日課だけだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る