エピローグ

田舎のバスは、本数が少なかった。


駅前から少し離れた停留所。

色あせた標識と、見覚えのある舗道。

同窓会の集合時間には、まだ余裕がある。


涼一は、ベンチに腰を下ろしたまま、空を見上げていた。

雪は降っていない。

それでも、空気だけが、あの頃とよく似ている。


ふと真横で、足音が止まる。


声がした。


「まだまだバス来ませんよ」

「……おじさん」


一拍。


涼一は、視線を足元に落とす。

心臓が一瞬弾んだ。

少しだけ口元を緩めて、息を吐く。


「そっちだって、もうおばさんだろ」


笑い混じりに、そう返す。


返事はない。

けれど、それで十分だった。


これは恋の物語ではない。

運命の話しでもない。


「ほんの少しの心残りが、少しだけ形を変えただけ」

ただ、それだけの話しだ。



終わり

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記憶の中の名づけられなかった感情 ほとり @Solagami

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