第19話 ダメかな?うん?
ハードボイルド・セブン
エピソード3. 彗星
第19話
「孤児たちが売られるのを止めたい。確かにマサピが今までしてなかった行動だね。」
日光は小言は他の場所で十分聞いたと手を振った。ひまわりのベッドに無気力なポーズで横たわった日光は、目の上に腕をのせて、何度も重い溜息をついていた。ひまわりはその姿が気に入らなかった。
一体あの赤見明という男は何者で、私のマサピがこんなに苦しまなければならないの?愉快でずる賢い態度を取ってはいるが、実は冷血なキラーであるマサピは、ひまわり自身を含めて誰にも私的な領域を許さなかったのに。あの陰湿なおじさんは、どうやってこんなに短期間でマサピの心を奪ったのよ。
酒に酔ってひまわりの家の玄関前に蹲り込んでいた昨夜の日光の姿を思い出し、ひまわりは唇の奥をぐちゃぐちゃ噛みしめた。最初には日光が自分に弱い姿を見せ、こんな辛い時に訪ねるくらいに頼りにしてくれていたことがただ嬉しかった。しかし、心から悲しんでいるような表情をして、舌を噛みながら、不明瞭な発音で他人の話ばかりを嘆く日光を知りたかったわけではなかった。
私がマサピの最初になれないのなら、誰にも手に入らない風のような存在でいて欲しかったのに。
「そうは言っても、あのおじさんみたいにマサピの意見を無視したり、貶めたり、非難するつもりではないよ。私だけは最後までマサピの味方だから。マサピの話ならどんなことでも真剣に聞き、尊重するよ。」
「ひまちゃん……。」
日光は顔の上に置いていた腕を少し上げて、ひまわりを見つめた。あんなに凶悪なヤクザのような目をしていながら、戸惑った表情をしている顔がとても可愛かった。おそらくマサピ、あなたには理解できないだろう。マサピの世界には友達という概念が存在しないから。どれだけ長く知り合った私でも、ただ近くにいる他人でしかない。だから、より直接的な表現を浴びせて、あのおじさんが私のような他人よりも劣った奴だと感じさせてあげる。
ひまわりはゲーマー用の椅子に座ったまま、足を組んで微笑んだ。サラサラと揺れるひまわりの睫が華やかな曲線を描き、まさに花のような美しい微笑みが咲いた。
「マサピと私。二人だけで一緒にやるのよ。彗星狩り。」
-
赤見の家を出た後も、日光はまだ彗星インターナショナルの社員の身分を維持していた。ひまわりはあえて外部人として潜入する理由がない点で非常に楽になったと、日光の先見の明を褒めた。実はそれは赤見の催眠術が効いたおかげだったが、ひまわりにそんな全てのことを正直に説明できるわけでもなかったため、日光はただ頷きながらその部分を曖昧に流した。
東京、特に渋谷内で最高の情報屋兼ハッカーであるひまわりが自身が立てた計画を明るい声で次々と語った。企業のウェブサイトや社内メインデータベースをハッキングすることは難しくて長い時間がかかるが、日光が企業の内部者として堂々と入り込み、偽造したIDカードを提示することは比較的簡単だ。そして、社内のセキュリティレベルに応じて、日光としてはアクセスできないポイントがあれば、時々その部分の防御壁をハッキングすればよいので、それもまた簡単だ。
すなわち、ひまわりが日光のバックアップをしながら、日光が少しの芝居で関門を通過すれば、彗星総一郎というターゲットが駐屯している最上層まであっという間に到達できる。日光はシトラスの香りでも漂わせるほど爽やかに微笑むひまわりを見て、本当に役立つ奴だと思った。
計画も決まったので、次は実戦だ。日光はひまわりから受け取った通信機を右耳に挿した。黒いスーツをスリムな体に巻きつけ、片耳に通信機まで挿している姿に、日光からはどこかのガードのような雰囲気がぷんと漂っていた。その姿をじっと見ていたひまわりは、せっかくキラーを辞めてガードに転職するなら、あの陰気なおじさんよりも自分のガードになるのはどうかと提案をした。日光はくすりと笑いながらその言葉を冗談として受け取った。日光はひまわりの言葉を真剣に聞くことはなかった。日光にとってひまわりのことの評価は、どんな理由があるのかは分からないが、自分に限りなく寛大な面がある変な奴に近かった。
翌日。以前に赤見の前で彗星インターナショナルの全社員を殺すと言っていた日光も、本当に騒ぎを起こせばマスコミと警察の追跡を避けるのが難しくなるため、再び『西村真』を装って普通に出勤した。
「気持ちとしてはビルの入り口を封鎖して皆殺しにしたいところだけどな。」
「キラーはもう卒業したんでしょ?さあ、さあ、文句を言わずにボス戦まで頑張ってね、マサピ。」
低層のセキュリティレベルは粗雑に極まりなかったので西村真の出勤はとても容易だった。しかし、彗星インターナショナルが占領している高層に近づくにつれ、警備は次第に潔癖的に厳しくなった。そしてついに、ひまわりが予想していたセキュリティカードを出すところまでたどり着いた。若い男性のガードが、ガードらしい防御的なポーズで扉の前を守っている様子を遠くから見張りながら、日光がひまわりに囁いた。
「まずカードを端末に接触させる。そしてすぐにそのカードを使ってお前が家からあの端末をハッキングするけど、約5分くらいの時間がかかる。その通りか?」
「正確だよ。」
「その5分間を俺が何とかカバーしなければならないしな。」
「それもまた正確だね。マサピは正しいことしか言わないから。」
「5分は思ったより長いんだよ?お前がもっと早くハッキングすることはできないのか。渋谷一のハッカーだろ?」
「悪いけど、私が手をもっと早く動かしたからといってハッキングが早くなるわけじゃないんでね。マサピが約束の時間に遅れたからといって、マサピが乗った地下鉄が早く走ってくれるわけじゃないのと同じだよ。」
「完璧に理解した。なんとかやってみる。」
日光がううんとうめき声を上げながら、扉を守っているガードに向かって歩いている最中に、突然何か思い出したように、ひまわりがアドバイスした。
「普通女の子にするように話しかけてみるのはどう?私はいつもマサピの色仕掛けが男性にも通じるんだと思ってたよ。」
「何だって?」
日光は馬鹿げた話だと聞き返しながら、とにかくそれで相手を慌てさせて5分は稼ぐことできると判断した。まあ、もしかしたらあのガードの好みがそっちかもしれないし。そこで日光はひまわりのアドバイスを受け入れ、本当に普段女性に対して自分の性的魅力をアピールするように、体をガードの方へびったりと寄せた。
「……何かご用でしょうか?お手伝いしましょうか?」
あまりにも近い距離感に、男性のガードは不機嫌な気配を出した。日光は誘惑はダメだと早くも結論付けながらも、とりあえず続いて演技に没頭してみることにした。口説くのは失敗したが、今やこのガードを慌てさせてでも時間を稼ぐしかなかった。日光は素早い手つきで端末に社内セキュリティカードとそっくりなひまわりのハッキング用カードを差し込み、ガードにやんわりと目でそっと笑いながら、低く優しい声で言った。
「ここにずっと立っているとお疲れですよね。俺の名前は西村真です。あなたは?」
「斉藤ですけど。ご苦労様です。」
斉藤は完全に顔を背けた。まだ30秒しか経っていなかった。ひまわりのカードがこの端末をハッキングして、この扉の向こう側に日光を導くためには、4分30秒もこの男といざこざしなければならなかった。日光は強硬に出ることにした。日光は185cmの自分より2センチほど小さな斉藤の肩越しに片手を伸ばし、壁に手をかけ、顔をさらに近づけた。斉藤はまだ顔を背けたままだったので、日光の息遣いは斉藤の耳元にまっすぐ届くだろう。日光が聴き心地良い声で囁いた。
「実は、斉藤さんを前からずっと気にしていました。いつもかっこいいなと思っていたんですけど……。ダメかな?うん?」
右の耳に挿した通信機からひまわりが口笛を吹く音が聞こえてきたが、日光は無視した。斉藤の頬が少し赤くなるのを捕らえた瞬間、日光は斉藤の胸のあたりに自分の反対側の手を置いた。斉藤の心臓がドクドクと鳴っているのを確認した日光は、逆に少し気まずくなってしまった。マジか!
「や、やめてください、会社で……!」
「何の関係があるんですか?俺たち二人だけだし、ここにはCCTVもないから誰も気づかないですよ。でしょうね?」
斉藤の唇からはわずかなタバコの香りがした。日光は喫煙者ではなかったので、男の唇という事実よりもその香りがより不快に感じた。
「キスまでしろってわけじゃなかったけど……。」
ひまわりがぼんやりと呟いた。
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