第七章 古代遺跡の秘密

神殿からの告発状が届いてから一ヶ月。


 勝男は工事を続けながら、対策を練っていた。


 その間にも、新しい発見があった。


 水道橋建設のための測量中、工事現場の東側で地下構造物が見つかったのだ。


「これは……」


 勝男は崩れかけた地下室を覗き込んだ。


 石造りの部屋。壁には配管らしき溝が走っている。中央には大きな水槽の跡。


「貯水槽だ」


 古代文明の水道システムの一部。地上の水道橋から水を引き込み、ここに溜めて、そこから各戸に配水していたのだろう。


「すげえな……」


 隣で見ていた石工の親方が呟いた。


「こんなものが地面の下にあったなんて」


「千年前の人たちは、俺たちが考えている以上に高度な技術を持っていたんだ」


 勝男は地下室を詳しく調べた。


 壁の溝は、計算された傾斜で配置されている。水が自然に流れるように。


 水槽の底には沈殿槽があった。砂やゴミを沈めて、上澄みだけを次の工程に送る仕組み。


「これ、俺が設計したものとほぼ同じだ」


 勝男は感嘆した。


「千年の時を超えて、同じ結論に達している」


 水の物理法則は変わらない。


 だから、水を扱う技術も、本質的には同じになる。


 勝男はこの遺跡を詳しく記録し、現在の工事に活かすことにした。


「この構造を参考にして、城下町の配水システムを設計し直します」


 辺境伯に報告すると、彼は目を輝かせた。


「古代帝国の技術を復活させるのか」


「復活というより、発展ですね。彼らが千年前に到達した地点から、さらに先に進む」


「素晴らしい」


 辺境伯は遺跡を見下ろしながら言った。


「私の治世に、このような偉業が成し遂げられるとは」


 しかし——


 その喜びも、長くは続かなかった。


 遺跡発見から二週間後。


 神殿の使者が、正式な召喚状を持ってやってきた。


「田所勝男。汝を異端の疑いで王都にて審問する。直ちに出頭せよ」


 使者は高圧的な態度で宣言した。


 勝男は冷静に答えた。


「異端とは、具体的に何を指すのですか」


「神の定めた秩序を乱す行為だ。汝は『聖なる水』の神聖性を否定し、民を惑わせている」


「俺は水を綺麗にしただけです。神を否定した覚えはありません」


「詭弁だ。汝の行為は、神殿の権威を傷つけている」


 つまり、神殿の商売を邪魔したということか。


 勝男は内心でそう思ったが、口には出さなかった。


「わかりました。王都に行きます」


 リーゼが慌てて割り込んだ。


「カツオさん! 王都に行ったら、処刑されるかもしれないのよ!」


「だからこそ行く」


 勝男は冷静に言った。


「逃げたら、永遠に追われることになる。それより、正面から戦った方がいい」


「でも——」


「大丈夫。俺には切り札がある」


 勝男は辺境伯を見た。


「辺境伯様。王への紹介状を書いていただけませんか」


 辺境伯は頷いた。


「書こう。王は合理的な方だ。お主の技術の価値がわかれば、きっと味方になってくれる」


「ありがとうございます」


 こうして——


 勝男は王都への旅に出ることになった。


 神殿との対決の時が、近づいていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る