執筆8
残念ながら人生はゲームではないので、ステータスの更新が目に見えることは基本ありません。もちろん、レベルアップなんていったい何を定義してるのかすら定かではありません。ですが、そんな中でもやはり、明確に「成長した」と言える局面が多かれ少なかれ人にはある気がします。私にとって、あの家出は成長の一種だったと自身で思っています。とはいっても、じゃあなにが成長だったのかと言われると難しくて、それは謝罪を口にできる素直さとか、小説を書けるようになったこととか、ましてや先生が成長を尊いといったからとかではなくて、たぶんあの一連の流れが、それこそ先生に私の下らない質問に付き合ってもらったことも含めて、全てをひっくるめた家出という子供じみた事象を経験したこと自体が、そうなのではないかと私は今考えてみたりします。ところで、あの後みおちゃんと遊びに行ったとき、「なにかいいことあった?」と聞かれたんです。ステータスの更新は目に見えないはずなのに。これってみおちゃんの才能なんでしょうか。それとも私って意外と顔に出やすかったりします?もしそうだとしたら、私にも表情っていうのが存在する証明になる気がするので、できれば理由は後者であってほしいものです。その日私とみおちゃんが出かけたのは別に単なる遊びで、それは私と先生のものと違って約束された、必然の事象でした。そしてそういう出来事の度に決まって思い出すのです。私と先生が会っているのはあくまでたまたまで、そこに見惚れるほど苦い顔の生きる理由を必要とした少女と、吐き気を覚えるほどに甘いお人好しな先生が偶然居合わせて、気まぐれで同じテーブルでコーヒーを飲んで、お互いの自己満足を満たすためだということを。私に生きる理由をくれた恩師の先生にこんな言い方をするのは失礼だと頭でわかっていても、やっぱり先生は誰かを救うことに縛られていたんだなと思います。そして、私はそれを満たしていたのじゃないかなと思います。いえ、そうであってほしいというわがままです。なれないとわかっていても、私は先生の生きる理由になりたかったんです。
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