第32話 猫叉





「・・・・・・ここから皆にはミストで誤魔化すんだよね?」

「あぁ。そうしたら俺達はここから出ている出雲のバスに乗って向かっていく」

「そうですわね。そしたら復活した大蛇を倒しますわ」

「先輩達にも伝えたし近いうちに来てくれるはずだよ」


俺達は4人で固まってこれからの行動のことを話し合っている。俺達5年生は学校に戻るためにバス移動をしており、今はその途中の休憩地点にいる。ここで、昼食をとるようになっており俺達は周りと離れた席に陣取り話し合っている。


ミストとは、爺ちゃん達が人間にバレないように作ったピンク色の霧だ。このミストを使えば人には幻を見せるようになり、俺達が抜けていることに気づかれない。そのため、俺達は自由に動くことができるようになる。


「・・・それじゃあ、そろそろ行こうよ」

「そうですわね。出雲行きのバスがそろそろ出ますしね」


俺達は席を立ち上がりミストを使って気づかれないように移動し始める。ほかの生徒や先生達から俺達がどう見えているか分からないが、少なくとも気づかれていないのは確かだ。


俺達は学校の移動用のバスのことを遠くから見ながら出雲行きのバス停で待機する。出雲行きのバスを待ちながら学校のバスの方を見ていると徐々に生徒が戻ってきている。


「なんか・・・申し訳ないですわね」

「といっても、こっちもこっちで対処しておかないとこの世界が荒れてしまうからね・・・」

「だな。そのためだと思って割り切るしかない」

「そうだよ、天鈴ちゃん。私達しかやれないんだからやるしかないんだよ?」

「分かってはいるのですけどね・・・」


鳳凰は形容詞がたい顔で答えた。確かに、そう思ってしまうのは俺にもあるけど、これから先のことを考えたらどうしても割り切るしかない。そう思ってこれらを終わらせないとどこかで壊れてしまいそうだし。


そう思っている間に、バス停の前にバスが止まった。俺達は降りてくる人達のことを待ち、降りきったと判断したら1人ずつ乗っていく。俺達は乗って、バスの一番奥の横一列に座れる座席に向かっていく。俺達は奥に詰めて一列に座る。左側から順にルト、ルーシャ、俺、鳳凰の順になっている。


「ここからですとほかの乗客も少ないですわね」

「そうだね。僕達が乗った時に確認できた人は3人だったしね」

「だね!やっぱりここからだとバスとかよりも電車や車で行く人が多いんだろうね」

「だろうな。確かこのバスは下道で行くようになってたはずだからな。それなら自家用車で高速道路から行くのを選ぶ人が多いんだろ」


俺達は後ろで、他の乗客の迷惑にならないように声を潜めて話す。そうしている間にバスが動き始める。動き始めると同時に俺達4人での会話は無くなる。俺はズボンのポケットに手を入れてある物をちゃんと持っているかを確認する。ほかの3人は各々が好きなように過ごしている。それこそ、外の風景を見ていたりスマホを弄っていたりだ。


俺達の学校は行事だろうがなんだろうが、携帯のアプリで予定などの情報を流してくるため必ず必要となるのだ。そのため俺達4人といわずに生徒全員が今回の交流会で持ってきていた。


「天気怪しくなってきたね・・・」


外の景色を見ていたルトが呟く。俺達はその言葉につられて顔を上げては窓から外の様子を見る。

外の景色は、灰色の雲が空を埋めつくし少し赤黒く見えるような風景だった。俺は一度その景色を見て流しそうになったが、ある事を思い出した。それと同時に俺はポケットからボールペンを取り出す。


「ッ・・・!違う、これ天気が悪いんじゃない!怪物がいるって証拠だ・・・!」


俺がそう言い終わるとほぼ同タイミングでバスに乗っていた乗客が俺達の方に攻撃を仕掛けてきた。俺は咄嗟にボールペンのキャップを取って霊剣津水剣を出して攻撃を受け止める。


俺が受け止めて押し返したところで、ほかの3人のことを見てみると3人は驚いていた。

俺達に向けて攻撃してきたのは、お尻から2つの尾がユラユラと揺れて人の姿をしていた人物だった。


猫叉ねこまた・・・・・・」


俺は静かに、だが確実に呟いた。


猫叉ねこまた。それは、基本的には人に害意はない妖怪。死んだご主人様に良いように働いたり悪いように働いたりする妖怪。または、山の中にいる獣。今回は山の中にいる方だったみたいだ。


「で、ですが猫叉ねこまたなら基本的に攻撃してくることは・・・!」

「それは山の獣じゃなく家の猫だった場合・・・な!」


俺は爪で攻撃してくる猫叉ねこまたを津水剣で弾き返しながら鳳凰に答える。その後、別の猫叉ねこまたが鳳凰へと向かって攻撃を仕掛けたため、俺は懐に隠していた短剣を投げて倒す。その猫叉ねこまたは鳳凰に攻撃を当てる前に塵にすることができた。あとは、さっきから攻撃を仕掛けてきているヤツと奥に陣取っているリーダー的な猫叉ねこまただけだ。


「た、助かりましたわ神威」

「礼は後で。今はこの場を切り抜けないと!」


俺と猫叉は同時に攻撃を仕掛ける。俺の剣と猫叉ねこまたの爪が交差し、そのまま俺が刀を押して猫叉ねこまたの頭と体を切り離す。そして、その勢いのまま俺は前にいる猫叉ねこまたに近づいて攻撃を仕掛ける。猫叉ねこまたは俺の刀に爪をあてて勢いを殺された。


「ふっ、流石神々の愛し子といったところだ」

「なっ・・・!?話せたのか・・・!?」

「ふふっ、君の知り合いの妖怪だって話せるんだ。僕に話せないことはない」

「それでも・・・・・・関係ない!」


俺達は猫叉ねこまたが話したことに驚いた。それでも俺は倒す必要があったため刀を振りかざす。


「おっと。少々血の気が盛んだな・・・」


猫叉ねこまたは俺の刀を受け流しながら言ってくる。俺は足も使ってバランスを崩そうとするが、上手く対処されて、逆に横腹に攻撃を与えられた。


「ッ・・・!」

「それ以上神威君に攻撃させないよ」

「・・・ひゅ〜。愛されてるね・・・。だけど、そろそろ時間だ」


俺が攻撃された後、猫叉ねこまたは追撃しようと爪を振りかざしてきた。が、どこからともなく生えてきた金色の鎖で猫叉ねこまたは行動を止められた。後ろを振り返ると、ルーシャが空中に本を開いて左手を前にかざしていた。その状態でルーシャが言った言葉に猫叉ねこまたはお見事といった風に顔を歪ませた。


「何の・・・!」

「このバスに爆弾を仕掛けた。ボクがこの場を去って少ししたら爆発する。さぁ、君達はどうするんだい?」

「えっ!?消えた!?」


猫叉ねこまたがそういうと指をパチンッと鳴らして幻影のように消えていった。それに対してルトが驚きの声をあげた。俺も少し呆けたが、すぐに意識を切り替えて指示を出した。


「ルト!横の窓を蹴破って外に出ろ!」

「えっ!?だけど!」

「いいから早くしろ!そのまま続けてルーシャと鳳凰も出ろ!俺もすぐに追いかける!」


俺は運転席に近いところにいるため、まだ1番後ろにいた3人に指示を出す。ルトは少し悩んだが、すぐに行動に移った。両手で窓の外縁を掴んで両足で蹴り破ってそのまま外に出る。それを見たルーシャと鳳凰もすぐに続いて外に出ていった。俺も急いで後ろに戻って蹴り破った窓から飛び出す。


俺が飛び出てすぐに後ろでバスが爆発した。俺はまだ地面に着地できていなかったため、その爆発の爆風によって、より遠くに投げ出された。


「神威!?」

「そ、そっちは・・・!」

「ぇ・・・」


3人が驚きを含めた声をあげる。俺が投げ出された先はガードレールを通り越した雑木林だ。俺は急いで風をまとって対処しようとしたが、それよりも先に体が木にあたり意識を落とした。意識を落とす前に確認したのはこちらへと走ってきている3人の姿だった。



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2026年1月15日 18:00

俺達は神の力を持っている!!〜神の力を持つ子達が歩む道筋(ストーリー)〜 冬城剣 @turugi0217

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