第16章:5万ポイントの無駄遣い? からの「万能メイド(SSR)」降臨

*第2部「王都の英雄と、新たな火種(ハーレム)編」


王都の一等地にそびえ立つ、白亜の豪邸。  元は貴族の別荘だったというこの物件を、俺は機神竜の素材を売った金であっさりと買い取った。


 広大な庭。ふかふかの絨毯。シャンデリア。  だが、今の俺にとってそんなものはどうでもいい。  重要なのは、リビングのテーブルに投影された、輝かしいホログラムウィンドウだ。


 【現在の因果ポイント(CP):50,000 pt】


「……ふふ、ふふふ。笑いが止まらん」


 俺は怪しい笑みを浮かべていた。  横では、新しいソファの感触を確かめているシルヴィアと、書庫のリストを作っているルナ、そしてキッチンからいい匂いを嗅ぎつけているポムがいる。


「おいマスター。さっきからニヤニヤして気味が悪いぞ。ついに頭のネジが外れたか?」 「失礼な。これから『儀式』を行うんだ。お前ら、正座して見届けろ」


 俺はウィンドウを操作し、**【10連召喚(必要CP:10,000)】**のボタンを表示させた。  今までの単発(1,000pt)とはわけが違う。  ボーナスとして「SR以上1体確定」。さらに、俺の『確率視』ですべての乱数を「当たり」に誘導すれば……。


「狙うは**『生活魔法(家事)特化』**のユニットだ」


 俺は宣言した。  豪邸は広い。掃除、洗濯、料理。今のメンバーを見てみろ。  ・シルヴィア:家事スキル皆無(皿を割る確率90%)。  ・ルナ:研究以外興味なし。  ・ポム:食材を盗み食いする害獣。


 このままでは豪邸がゴミ屋敷になるのは時間の問題だ。  だからこそ、俺の生活(QOL)を支える「メイド」が必要なのだ!


「いくぞ……確率収束! 乱数固定! 10連、回れぇぇぇッ!!」


 俺がボタンを叩き込む。  部屋中がまばゆい光に包まれた。


 シュイン、シュイン、シュイン……!


 次々と排出されるカプセル。  1個目……青(ノーマル):『無限トイレットペーパー』  2個目……青(ノーマル):『決して湿気ない塩』  3個目……赤(レア):『怪力の手袋』


「……実用的だが、地味だな」  ルナが冷めた目でツッコミを入れる。


 だが、10個目。  そのカプセルだけが、神々しい**「虹色(レインボー)」**の輝きを放っていた。


「来たッ! 確定演出!」


 パァァァァァンッ!


 光が弾け、リビングの中央に人影が現れる。  静寂。  光が収まると、そこには一人の少女が立っていた。


 プラチナシルバーのショートボブ。  透き通るような白い肌。  そして、白と黒のコントラストが美しい、完璧な仕立ての**「メイド服」**。


 彼女はゆっくりと瞼を開いた。その瞳は、機械的なまでに透き通ったアメジスト色。


「……起動シークエンス、完了。個体識別名『アリス』。マスター、命令(オーダー)を」


 抑揚のない、しかし鈴を転がすような美しい声。  俺は『確率視』で彼女をスキャンした。


 【個体名:アリス・コード(SSR)】  【種族:古代機動人形(オートマタ)】  【クラス:殲滅メイド】  【スキル:『超・家事手伝い(物理)』】


「……オートマタ? 機神竜と同じ古代技術か?」


 俺が呟くと、アリスは無表情のままスカートの端を摘み、優雅にカーテシー(お辞儀)をした。


「肯定します。私は旧文明の遺産。貴方様の生活を『最適化』するために再構築されました。掃除、洗濯、戦闘、暗殺……あらゆる業務を遂行可能です」


「暗殺はいらんが……掃除はできるか?」 「造作もありません。埃ひとつ、分子レベルで排除します」


 大当たりだ。  俺はガッツポーズをした。  科学的な(ロボット工学的な)意味でも、俺の趣味的にも完璧だ。


 だが、シルヴィアが警戒心を露わにして剣に手をかけた。


「ま、待てマスター! こいつ、機神竜と同じ匂いがするぞ! それに、なんだその『メイド』というふざけた格好は! 騎士への冒涜か!?」


 アリスが首をコテリと傾け、シルヴィアを見た。  そして、無機質な声で告げた。


「……分析完了。個体名『シルヴィア』。部屋の汚染源と認定。靴の裏に泥が付着しています。即刻、洗浄が必要です」


「は? 何を――」


 ザッ!


 アリスの姿が消えた。  次の瞬間、シルヴィアが「あひゃっ!?」と変な声を上げて宙吊りにされていた。  アリスが目にも止まらぬ速さで背後に回り込み、シルヴィアの襟首を掴んで持ち上げたのだ。


「ちょ、離せ! 貴様、速すぎるぞ!」 「非効率な動きです。洗濯機へ投入します」 「やめろぉぉぉ! 私は洗濯物じゃない!」


 ジタバタするSSR騎士と、それを冷静に運搬するSSRメイド。  リビングは一瞬でカオスになった。


「ふむ……オートマタか。機神竜の小型端末といったところか。興味深い構造だ」  ルナが興奮してアリスの後ろをついて回る。


「ごはんは? ごはんは出るのかの?」  ポムは我関せず、アリスのポケット(四次元収納)から飛び出したクッキーを勝手に食べている。


「……賑やかになりすぎたか?」


 俺が苦笑いしながら、騒動を止めようとした時だ。  玄関のベルが、厳かに鳴り響いた。


 ピンポーン。


「……おや? 引越しの挨拶にしては早いが」


 アリスにシルヴィアを解放させ(シルヴィアは目を回していた)、俺は玄関へ向かった。  扉を開けると、そこに立っていたのは近所の住人ではない。


 煌びやかな紋章入りの鎧を着た、王宮近衛騎士団の兵士たちだった。


「――救国の英雄、相馬レン殿とお見受けする」


 先頭に立つ騎士団長らしき男が、恭しく敬礼した。


「王城よりお迎えに上がりました。国王陛下が、機神竜討伐の功績を称え、貴公に『謁見』を求めておられます。……至急、同行願いたい」


 謁見。  国王からの呼び出し。  普通なら名誉なことだが、俺の『確率視』には、騎士団長の背後に**「面倒事(トラブル)の予兆」**を示す赤い数値がチラついていた。


(……単なる褒美授与じゃなさそうだな)


 俺は振り返り、カオスな仲間たちを見た。  露出騎士、マッド研究者、暴食幼女、そして毒舌メイドロボ。


「……アリス、留守を頼む。俺たちはちょっと『お城』に行ってくる」 「了解。帰宅までに、この『汚物たち』をピカピカに磨き上げておきます」 「「「えっ?」」」


 ヒロインたちの悲鳴を背に、俺は王宮への馬車に乗り込んだ。  英雄になった代償は、思ったより高くつきそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る