第10話 ~守護代置~後編
俺が退院してから美穂(舞)は毎週、
日曜日の午前中は
どこかに出かけて、昼過ぎに帰ってくる。
(誕生日を境に本名で呼ぶことにした)
俺は眠いから気にもせずに美穂が帰ったころ起きる。
いつもなら・・・。
しかしその日だけは、前ちゃんの話が気になり
美穂が出て行ったときに目が覚めた。
ベッドから起き上がらず、
ただ天井を見上げて考え込んだ。
(どうすりゃいいんだ?)
(俺なんかに何かできるのか?)
考えても、考えても・・・。
わからない・・・。
「え~くそ!」
「とにかく前ちゃんの田舎に行ってみるか~」
とにかく動いてみるしかないと思い立ち
俺はトリじぃ(あ、師匠)にバイクを借りる事にした。
師匠のバイクはスズキの“GT380(サンパチ)”
昔、競馬で“3-8の大穴”当てて、買ったそうだ。
(いつから?ギャンブラーなんだよ?)
師匠には詳しい事は話さなかったし、師匠も聞いてこない?
だだ、
「気をつけて行け、無理はすんなよ」
と、だけ声をかけてくれた。
美穂には店の用事で2日ほど“修行“に行かせたと言っておくと・・・。
俺は前ちゃんの田舎にひたすらバイクを飛ばした。
三王子を抜け奥多摩からさらに山奥へと入っていく・・・。
(前ちゃん一家はどうなってんだろ?)
ようやく深菅村について、前ちゃんの実家
中森木材・・すぐに分かった。
なんて、尋ねよう?
前ちゃんの生まれ変わりです!なんて言えないし・・・。
道に迷ったんで泊めてください!・・・は図々しいか。
そんな時、木工場の片隅に段ボールに目が止まった。
(焼き鳥の木串の絵が描いてある)
これだ💡
師匠に言われて木串が作られてるところを見て来い!
それも大事な修行だ!
(言われてないけど、これで行こう)
それと、死んだ親父が
いや、祖父ちゃんにしよう!(年が合わないから)
前ちゃんとバイク仲間だった事まで付けくわちゃえ!
そんな、なんかで俺は前ちゃんの家を訪ねた。
前ちゃんの親父さんはもうかなりの歳で、
後を継いで、親方社長は前ちゃんのお兄さんになってる。
毎日のように取り立てに山王組はやってきては
脅しに、嫌がらせと繰り返され
親父さんたちは追い込まれ
寝るに寝れない毎日みたいだ?
そんな雰囲気が話さなくても伝わってくる。
いかにもって感じの黒塗りの車が近くに止まってるし
見張ってるみたいだ・・・。
今日は遅いからと離れに泊まらせてくれた。
母屋から親戚一同で話し合いが行われてるのだろう?
時折、泣き声やら罵声やらと大きな声が聞こえてきた。
「どうすんだよ♯」
「親父♯、叔父さん♯」
「一億なんて博打の借金♯払えるわけないだろ?」
(おいおい?一億って・・・。)
普通ならこんな山林に一億なんて値段は付かない。
山王組は明らかに本気で産廃場にするために
そこまで膨らませたんだ。負けを、借金として・・・。
「あの六芒鉢の、あの土地を産廃場になんてしたら・・・。」
「ご先祖様にも、村の人たちのも申し訳ないじゃあ~」
「すまないんだぞ♯」
前ちゃんのお兄さんは声を荒げてる。
(これは?俺なんかで解決できる問題ではないな?お手上げだ)
翌朝、一応、木串の事を聞くふりだけはして帰る時
山王組がやって来た。
山王組、若頭の栗原と名乗ったその男は・・・。
“最終通告”として期限は2か月。
それまでに1億払うか?山林を渡すか?
どちらかだと・・・しっかり聞こえた。
俺は、俺にはどうすることも出来ない・・・。
そう思いながら神武楽町にバイクを走らせた。
(次郎さんに相談するしかない)
“蛇の道は蛇だ“”やくざにはやくざだ“
そんなことぐらいしか思いつかなかった。
バカだから・・・。
次郎さんを訪ね、事のいきさつを話した。
(ビビりながら、前ちゃんとの事は内緒で)
「シンザ、他人の米櫃に手を突っ込むようなことはできない」
だが、山王組の栗原は組は違うが兄弟分の間柄だから
手洗い真似だけはするな!
と話はしてやると言ってくれた。
(やっぱ、そうだよな?次郎さんは・・・。)
だが?
そんな?
不思議で面白い土地なら考えようがあるな?
次郎さんは平さんの方が力になってくれるかもしれないからと
平さんと話してみると言ってくれた。
(平さんは不動産ではあるけど・・・。なんか知恵でもあるんかな)
取り合えず出来る事はこんなもんだよな~
(情けないな~俺・・・。)
そんな思いを浮かべながらとり仁、師匠の元へ帰った。
それから、2週間ほどたったある日
平さんから俺は呼び出された。
「シンザ、あの山の件な、どうにかなりそうだぞ!」
(え~“目からうろこ”の何とかってこんなとき使うんかな?)
「あの山な、六芒鉢というところ・・・。」
平さんは色々調べてくれたそうだ。
大卒である平さんは色んなツテをあたって
農林水産省に山野庁、文部省に大学教授とありとあらゆる
ところと話をしたそうだ。
するとあの“六芒鉢”は大昔も大昔に
いまだに謎とされている隕石で“リビモルサイト(仮称)らしき
物があの底にあるらしい。
それもかなりの大きさだそうだ。
それの力かどうかはまだ、わからないが?
だから、あの山林周辺の樹木はあんなきれいな年輪の木が
育つのではないか?と・・・。
昔から調査をしたいという話はあったそうだ。
(そんな?複雑な秘密が・・・。)
「それでもな、シンザ、相手はやくざだ!」
「表立って国や大学が出て行く訳には行かん」
そこで、表向きは平さん方でその金を
中森林業に貸し付ける形で
やくざに手を引かせる。
からくりはこうだ。
1億円は国(農水省と文部省)と大学が“六芒鉢”を
調査、研究したいので国有として買い取る。
研究はそこに育つ樹木だけではない?
ありとあらゆる分野の研究をするそうだ。
(俺は頭悪いからチンプンカンプンだった)
但し、やくざが絡んでたという事も有り
表には出さない。
中森林業には管理が特に困難な山林という事も有り
今まで通り樹木の植林や管理をしてもらう。
商売も今まで通りで構わない。
こんな着地点で決着すると・・・。
俺は涙が止まらなかった・・・。
(すげ~な、平さん、それに次郎さん・・・。この二人は・・・。)
平さんは次郎さんに話したそうだ
(心三朗にその山林の中森林業は何の関係があるんだ?)と
次郎さんは
(わからん?ただ、心三朗の奥になんか?あるような気がして・・・。)
(それに、あいつから相談してくれたことが嬉しくてな)
そんな会話をしたらしい。
1か月ほど経ち、ようやく前ちゃんの実家の問題が
解決した。
平さんは相当、骨を折ったみたいだ。
次郎さん、平さん本当にありがとう。
二人の方には足向けて寝ませんから・・・。
疲れ果てて俺は美穂に甘えながら寝入った。
その夜、前ちゃんは“転生”で何度も何度も泣きながら
俺にありがとうを繰り返した。
(来ちゃんはそれを見て笑ってる・・し)
(うっすら涙も浮かべてる・・)
(え?来ちゃん目が開いてる?見えるの俺!)
来ちゃんは笑顔でうなずいた(美人だ~~~。)
そんな日曜日の朝。
美穂はいつものように出かけようとしている?
俺は聞いた
「毎週日曜日の午前中にどこいってんの?」
「私は~、しんちゃんのエンジェルちゃんでしょ!」
「日曜日は美穂のエンジェルちゃん達とデートなの・・・。」
そう言って舌出して笑って出かけて行った。
(は~堂々と浮気宣言か~)
(ん?達って言ったよな?・・・複数⤴?)
次号、美穂の秘密の行動は?
第9話 ~美人薄命~
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