第9話 ~守護代置~前編

「やっぱり、店、無くなったか?」

トリじぃは薄ら笑いで俺に話しかけた。



「後ろ足で、砂かけられっちまったな。」

「で、これからどうするんだ?シンザ?」


「ゆっくり考えていいよ❣、舞が食べさせるから」

舞は焼き鳥、咥えて右肘をまげてポーズをとってる。


(ヒモみたいなこといつまでも出来るか~)

と、口には出さずに、

「お願いしま~す、こっちのお世話も~。」

ふざけるしかなかった。


しばらく天井を見上げた。

「バイク便でもやろうかな~」


『ダメ♯「だめだ♯」』


声がかぶって聞こえた?


舞は不思議そうに上を見ながら首を振ってる。


トリじぃはまた薄ら笑いをしてる。


もう一つの声の主は前ちゃんだ。

「シンザ、すること無かったら」

「この店、手伝わんか?」


トリじぃは俺に焼き鳥、焼かないか?と誘ってくれた。

そろそろいい歳だからお前さえよかったらゆくゆくは

店を譲るぞとまで言ってくれた。


「それいい~そうしなよ!しんちゃん」

「お店が終わったら私も手伝うし~」

舞は乗り気だ!


暫く考えた俺は、前から気になってたことをトリじぃに聞いた。


「なぁ、トリじぃ?」

「なんで?ここの串は竹じゃなくて、木の串なんだ?」

竹串の方が安いだろうと俺は単純に思って聞いた。


トリじぃは

「竹が悪いわけじゃないが、木の、ここの木の串がしっくりくるんだよ。」


「な!」


って誰に声かけた?

よくわかんないが?


俺は“とり仁”で働くことに決めた。

「シンザ、これからは“トリじぃ”は止めろよ♯」


「そうだよ!しんちゃん❣」

「これからは、“師匠”と呼べ!ね~仁さん」

舞は笑顔で話した。

(こういうのを満面の笑みっていうんだろな)


暇、持て余すとろくな事しね~からと

「明日から来い!」


「へい、“師匠”明日からお世話になりやす」

(テツもたまには思い出してやらないとな!)


こうして、俺は焼き鳥屋に“覚悟”を決めた。


“とり仁”は、蓮園神社の北側にある通称シルバー通りの端にある。

年配の人たちが営む店が多いからそう呼ばれるようになったみたいだ。



俺は仕込みがあるため昼過ぎには店に行き、

掃除に買い出し、やきとりの串刺しと意外と楽しく

俺は修行に励んだ。


一番大変だったのは、鶏丸という一羽のにわとりを

部位ごとに解体しそれを串にさしていく。

(肉屋に頼んだら楽だろうに?)


トリじぃ(師匠)は“この手間が銭だ”って・・・。

手抜きを許さない!


焼くのも“炭火”だし、面倒や手間は惜しまない。


そんな、師匠の下でどうにかこうにか・・・。


5か月ほどが過ぎて行った・・・。


6月3日今日は舞の誕生日。

師匠がやきとりでツリーを作って祝ってくれた。

(ツリーってクリスマスの季節じゃないっちゅうの!)


舞は“キャッキャッ”と喜んで食べてる。

(楽しそうでホント良かった!)

(でも、鼻血が垂れるくらい騒いで興奮しなくてもいいのに・・・。)


その夜の事だった・・・。

久しぶりに前ちゃんが現れた・・・。



あれから時々二人は現れてはいたがこれというほどの

話も変化もなかったのに・・・。


今日の前ちゃんはちょっと変だ?


「ん?どうした?前ちゃん?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


「心三朗。ちょっと行かないか?“転生”に・・・。」

俺はいつの間にか“転生”のあの席にいた。


喫茶Rinne(輪廻)その奥にあるあの空間。

(ここに来るのはあの時以来か・・・。)


前ちゃんは話す内容によっては

ここでしか、話せない事が?

ここでしか、話してはいけない事が?


そんな決まりがあるらしい・・・。


自分(前世)に事に関する生い立ちやおかれてた境遇。

それに、残された身内のことなどは

ここでないといけないと・・・。


「どうしたん?前ちゃん?」再び俺は聞いた。


前世はゆっくりと息を吐き

「これから話す事はいや、話させてもらう事は」

「もどかしい自分への戒めであり愚痴だ。」

・・・と話し始めた。


前ちゃんの実家は奥多摩のさらにその奥にある。


深菅村という所で“中森木材工業”という地元じゃ有名な

林業一家だったそうだ。


先祖代々の山林を管理し運営している・・・と


その土地は不思議なところで“六芒鉢”といい

山を大きなすり鉢状に削った様な山林で


そこで育つ、杉に檜、桐、ケヤキや桜、それに黒檀と

様々な木が植林されているんだが・・・。


なぜか?


全てが綺麗に、まるで機械で描いたような年輪の木が

育ち出来上がり伐採することができる。


東西南北、陰日向も関係なく。


その為、加工もしやすいし、無駄も少ないから

非常に重宝され色んなところで使われてる。


会社は親戚ともども繁盛してるそうだ。

(前ちゃんも、元は金持ちボンボンかよ)



なぜ?

そんな樹木が育つのかはまったくわかっていない?


言い伝えではすり鉢の底にあるものが

影響してるのではないかと・・・。


そんな前ちゃんの実家が今危機を迎えてる。


前ちゃんの親父さんの弟が叔父さんが“嵌められた”


良いように誘われ“野球賭博”に手を出し

多大な借金を背負はされた、

相手は三王子を拠点とする山王組

(ま~たやくざかよ)


2年前からじっくりじっくりと賭博に引き込み嵌められていったみたいだ。

狙いはその“すり鉢状の土地“


産業廃棄物処理場の建設だ。

(考える事がすげ~なあいつらは・・・。)


前ちゃんは3.5慈源(ジゲン)にいるから

状況とかは知ることができるし、見ることも出来るが

どうすることも出来ない



どうしようもない・・・。


もどかしさの中での愚痴なんだと・・・。


前ちゃんはこうも言った。


「有名人や歴史に名を遺すような人物なら」


「3慈源に生きていた、存在したという“証”が多くの人が知っている」


「しかし、そうじゃない人たちの“生きた証“をしってるのは・・・。」

「家族であり、子孫たちなんだ」


「前世や来世とはまた違ったつながりがあるんだ」・・・と


そうだな、かぁちゃん(縁)が生きていた証は俺が知ってる。


これから俺にもし子供が出来たら、


その子が俺の生きた“証“になる。


・・・そういう事だよな。


前ちゃんは俺にどうにかして欲しいとは頼まない。


自分が生きていたら、あんなに早く死んだから・・・と。


そんな事への後悔ともどかしさの愚痴なんだと

そう言って消えた・・・。


(そういや?来(来世)ちゃん今回はいなかったな?)


次号、前世の思いを聞いた心三朗は・・・。

第8話 ~守護代置~後編

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