第3話 ~暗雲低迷~
「しんちゃん誰?この・・」
『“かっこいい人~”』
舞とユージが同時に発した。
「俺が、かわいがってもらった先輩、兄貴分みたいな人だ」
この人は茂貞さんって言って俺が昔、
働いてた警備会社で知り合った先輩で、
しょっちゅう飲みに連れて行ってもらったり、
つるんでにナンパしたりとバカなことを一緒に遊んだ人だ。
(ホントバカなことしかしてなかったな)
昔はヤンチャで、暴走族で、死んだ親父さんはやくざ。
ホストもやってたらしく、結構稼いで遊びまわってたらしい?
(まぁ顔はいいからな)
俺に都会の遊びを色々教えてくれた人だ。
「シンザ、傷は?もう大丈夫なんか・・?」
(久しぶりに聞く先輩の声は小さく静かだ・・・?)
「しんちゃん、大丈夫なの?」
一緒にいるのは先輩の彼女の和美さんだ。
(なんか二人の声は小さくなんとなく落ち着きがない・・・。)
「うん、平気。1週間くらいで退院もできるって言われた」
「そうか、良かったな・・・。」
(やっぱり、なんか?変だ)
「お前の店に行ったらお前が刺されて入院したって・・・聞いて」
「部屋に残ってたお前の荷物持ってきた」
俺は店に勤め始めて、店の寮に入る前は先輩の部屋に居候していた。
(そんときの荷物か・・・。)
「あの部屋、引き払ったから」
「それからお前のバイク邪魔だったから売っぱらったぞ。」
「滞納してた家賃の足しさせてもらった」
(俺のカブ号だ)
「あ、いいです。いいですよ、どうせ動かなくなってたし」
「よく売れましたね?あんなボロバイク」
東南アジアとかに持ってくらしい?
結構、高くで取引されてると聞いた。
「で、先輩これからどこに住むん?すか?」
(俺にはどうでもいい事)だが聞いた。
今はこの人と距離を置いてる関係だったから・・・。
「うん、こいつの田舎に行こうと思う」
(和美さんの田舎に行くって・・・。)
(和美さん東京生まれじゃないか、何言ってるんだ?)
先輩も和美さんも東京生まれの東京育ち、
特に和美さんは下町の“江戸っ子”だって・・・。
変だな?
とは思ったけど黙ってた聞いてた。
「シンザ、元気でな。もう会う事は無いかもしれないが・・・。」
(なんかあったな?ついに・・・。)
俺は直感した。
でも俺は深くは聞かなかったし、聞こうとも思わなかった。
ほんの5分もたたないうちに、二人は出て行った。
和美さんは目に涙を浮かべてた・・・。
先輩が持ってきたボロボロのボストンバッグだけが残った。
「何?なに?何が入ってるの?開けていい?」
舞が口を開いた。
(こいつ?勘がいいな?俺に、何も・・聞いてこない)
「たいした物は入ってないよ」
出てきたのはフルフェースのヘルメット。
カビの生えかけた革ジャンと手袋。
時間が止まった壊れかけたダンヒルのコピー時計。
(先輩が売りさばいてたやつだ)・・・。
「わ~きれい、素敵~」
(なんだ~?)
「ねぇ、しんちゃんこれちょうだい?」
(十字架だ、おふくろのだ。)
先輩の部屋にあったのか?
木製のケースに入ったおふくろの形見の十字架のペンダント。
形見だから「だめだ♯」って
断るのが普通の事なのだろうが?
なぜか・・・。
「いいよ、舞にあげるよ」って自然と言葉が出た。
「ありがとう~しんちゃん!」
「お礼にちゃんとお世話してあげるね❣」
また股間をポンポンってたたく、
舞にオカマのユージが文句言ってやりとりしてる。
ユージは店の準備があるからってまた、ポンポンして帰っていった。
(やっぱB級コメディだなこれ?)
「コンコンコン」
(今度は誰だ~もう夕方だぞ!飯の時間かな?)
眼鏡をかけ、スーツを着た、いかにもって感じの男が入って来た。
男は弁護士だと名乗って名刺を渡した。
(やっぱそのまんまだな!)
俺を刺した男は結構な金持ちのボンボンみたいで、
その親が雇った弁護士で示談金を持ってきたという。
慰謝料も払うし、入院・治療費もすべて払うから示談に応じてほしいと・・・。
アタッシュケースをテーブルに置いた。
(??????)
俺はそんなことはどうでもいい?
(金は欲しいけど・・・。)
被害者は、一番怖い目にあった舞の方だ。
舞の気持ちが一番大事だ。
(治療費はお願いしたいけど、生命保険入ってないし・・・。)
舞に俺は聞いた「どうする?舞?」
「しんちゃんが死にかけたんだから、しんちゃんに任せる」
「しんちゃんが決めて・・・。」
「舞はもう、大丈夫だよ」
舞は笑ってるが右手は十字架を握ってる
(もうあの時の恐怖は・・・。もう大丈夫なんかな?)
弁護士は示談に応じてくれなくても金は受け取ってもらう。
慰謝料と見舞金として!・・・と
その犯人の親から強く言われてるそうだ。
(どんだけ、金持ちだよ!)
(その親にとってはあんな犯人でも可愛い息子なんだな・・・。)
(あの野郎~いいとこに生まれ変わってきやがって♯)
しばらく・・・考えた・・・。
無い頭で・・・。
(金は欲しいが、舞がまたあんな目に合う様な事があるなら・・・と。)
(決めた!とにかくこの事を早く終わらせる。舞の為にも・・・。)
「わかった、示談に応じるよ」
「但し、今後一切、舞の前に現れない事、近づかない事、それが条件だ♯」
弁護士は言った。
その心配はないと。
この件が片付いたら犯人の男は海外にある親の関連会社に永久的に
行く事になってると、日本に帰ることは無いと。
(そいつの親?なにもんだよ)
俺はとにかく舞がもう二度と怖い目に合わなければ・・・。
そいつが付きまとわなければ、ただそれだけだった。
(金も少し・・・。)
(え?俺?舞に惚れてる?風俗嬢だぜ?)
示談書ってのにサインし、それをもって弁護士は出て行った。
「すごい!こんなお金見たこと無い、しんちゃん1,000万あるよ」
舞がケースをあけた。
「そうかー?え~~~~っ」
(痛って・て・て)
「大丈夫?しんちゃん?」
「あ、大丈夫、大丈夫」
(腹の痛さとニヤける自分が・・)
「トントン」今度は誰だよ。
とっさに舞にケースをサイドテーブルの引き出しに隠させた。
「どうぞ~~。」
「夕飯お持ちしましたよ~」
病院らしさが戻って来た。
翌朝に、また騒がしい病室になるとは・・・。
知らずに・・・。
ニヤケながら俺は寝た。
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