5.ア・ポーン
この小説は全てが現実世界には皆無の存在だけで成り立っているわけではない。この世界には現実世界の片鱗が満ち溢れているのだ。
1921年1月4日。
SCP財団のサイトの出口へ向かっている男性は、機動部隊π-1(シティ・スリッカーズ)のスティーヴン・ウォーカー指揮官だった。彼は怒りを床にぶつけるかのような力で歩みを進めた。その様子を危惧したトニー・ジャックマン博士は彼の肩に手を置いた。トニー・ジャックマン博士は言葉を発するために口を開き、スティーヴン・ウォーカー指揮官がその口に弾丸を打ち込んだ。その弾丸は、彼の口蓋垂を破裂させ、喉を破壊しながら体内にまで飛んだ。デフォーポストドクターは目を見張り、気絶した。また、周りの職員は驚きを隠せずにいた。
その中の1人は静かに拳銃を構え、音を立てずに彼の元へ向かった。彼は拳銃をスティーヴン・ウォーカー指揮官の頭に突きつけ言った。
「職員を、要注意団体との内通やその他の罪状以外の理由で殺害する行為は違反の筈だ。今すぐこのサイトから出て行け。スティーヴン・ウォーカーから機動部隊π-1(シティ・スリッカーズ)の指揮官の権利を剥奪し、新たな指揮官にお前は選ばれないものとする。また、スティーヴン・ウォーカーをSCP財団本部から解雇し、永久に出入り禁止とする。」
スティーヴン・ウォーカーは口角を上げ、言った。
「問題ない。私はシカゴのマフィアやクリミナルを撃退する任務がある。私は数日前からSCP財団から離反している。私は、アメリカ合衆国の大統領府の人間だ。私は、政策及び戦術計画担当大統領補佐官の部下だ。」
「天下り先か。だが、お前の人生は今日をも…。」
SCP財団の職員はスティーヴン・ウォーカーに射殺された。
俺は扉がユニットの構成員にノックされる前に革靴を履き、外に出た。外には俺の扉をノックしようと待ち構えていたシドとルーク、カスパー、アル・スワードが直立していた。
アル・スワードはこのユニットを守備するために配属されたボディーガードである。彼は周囲の危険を察知するため、険しい表情をしているが、プライベートや宴会では温厚な表情だ。彼はボディーガードとして体が鍛え上げられていて、身体がとにかく大きく屈強だ。彼の髪は細かく縮れている。また、鼻がやや丸みを帯びていて存在感がある。彼の顎は安定してラインを保っている。逞しい彼の雰囲気に敵も怯えて欲しい所だが、シカゴ・スピリットの連中は必ず狙われる。
SCP財団との休戦を除き、シカゴ・スピリットは寸暇を惜しんで、他の組織と抗争を繰り広げていた。その様子に他の勢力も腰を抜かしていた。スピリットの組織員は今のスピリットは抗争に現を抜かしていて、内政を疎かにしていると推測している者が多くいる。しかし、最下層のアソシエイトであるシドがビジネスに精通していると考えると、スピリットの上層部は、ユニットが毎日の如く抗争を繰り返している裏で、財政や外交について考えていると考えるのが妥当だ。そもそも、マフィアは内政の上で抗争をすることができている。ならば、スピリットは抜かりなく内政を整えているに違いない。カスパーは言った。
「SCP財団側に異変はない。任務を遂行して良い。」
ルークは言った。
「ノースサイド・ギャングか。強靭なマフィアに必ず打ち勝ってやる。腕がなるぜ。」
ノースサイド・ギャングは、密造酒製造業者のオバニオンがシカゴのノースサイドで醸造所や蒸留所を支配下に置いて創設されたギャングである。酒の密輸だけでなく、武装強盗や違法賭博の運営など、あらゆる犯罪に手を染めて、多額の金を稼いでいる。ノースサイド・ギャングの影響力は凄まじく、政治家のゴシップや不正選挙などに関与までしていた。様々な犯罪に手を染めているノースサイド・ギャングは、国民に対するイメージを良好なものにするため、孤児への多額の寄付や貧困層への慈善的な活動を積極的に行い、それらをマスメディアに対して過剰に宣伝させた。また、ライバルであるアル・カポネのシカゴ・アウトフィットとは凄惨な抗争を繰り広げている。シドは言った。
「ノースサイド・ギャング強靭だと?シカゴ・アウトフィットを味方につけた以上、彼らに勝ち目はない。」
俺は言った。
「シカゴ・アウトフィットの上層部の目は何かを企んでいるような眼差しでコンシリエーレを見つめていた。彼らを信用することはできない。」
「アル・カポネは我々と協力的な関係を結びたいと考えている。」
「一単語忘れている。
一同はノースサイド・ギャングの醸造所に向かった。マフィアの正体を隠しながらも、俺たちは軽い気持ちで歩みを進めた。その時、ようやく慣れてきたアル・スワードの声が響いた。
「危ない!」
アル・スワードは俺たちを横に蹴飛ばし、俺たちの方向へ発射された弾丸を手で受け止めた。弾丸を発射した者は通りの奥にいた。彼はアル・スワードを睨んでから、スナップを行った。すると、家屋と家屋の間や、洗濯物干し、庭の木の裏といった場所から、マフィアの連中が数多く現れた。シドは言った。
「お前ら、どこの連中だ?」
マフィアの一員は腹を抱えて笑い、答えた。
「どこの連中って、シド・キャシディ、正気かよ。俺たちはノースサイド・ギャングだ。」
ユニットを待ち構えていたノースサイド・ギャングらは懐から銃を取り出し、ユニットの構成員全員に狙いを定めた。
「時すでに遅し。シド・キャシディ、お前がSCP財団の機動部隊に攻撃された時の台詞だ。」
「何故その言葉を知っている?」
「我々はこの日に備えて入念にスピリットを監視していた。1920年は激動の年だった。ドミニック・リッツォよ、お前がローランド・マックデル率いるユニットの一員になった時から、我々はスピリット、勿論君も含めてを監視していた。まず、4月6日。シカゴ・スピリットとシカゴ市警察が衝突し、シカゴ市警察が惨敗を喫する。次に、4月7日。シカゴ・スピリットがバーで宴会を開き、ボスが残酷な仕打ちで部下を粛清する。4月8日。シカゴ・スピリットと連邦捜査局異常事件課が衝突し、連邦捜査局異常事件課が敗北する。4月9日。ローランド・マックデル率いるユニットが内輪揉めを要因に解散する。6月14日。ドミニック・リッツォ率いる新たなユニットがアーティストディーラーであるドノヴァンと闘う。6月29日。シカゴ・スピリットとSCP財団の機動部隊が抗争を繰り広げ、SCP財団は敗北し撤退を余儀なくされる。6月30日。シカゴ・スピリットとSCP財団が協力し天然痘と似た病原菌を解消する。」
俺は言った。
「やめてくれ。」
「それはボスに言ってくれ。ボスは部下の要求を真摯に受け止めてくれる。そして、1921年1月4日シカゴ・スピリットとノースサイド・ギャングが衝突し、スピリットが惨敗を喫する。では、さらばだ。」
ノースサイド・ギャングは一斉に銃を撃ち始めた。アル・スワード手汗をかいた手を握り締め、一同を屈強な体で地面に叩きつけた。アル・スワードはノースサイド・ギャングから何発もの弾丸をくらった。彼の瞼は瞬きをしたまま永遠に閉ざされ、彼は永遠の眠りについた。まるで、希望が閉ざされたかのように。俺の目からは涙が流れた。そのため、俺の瞼は閉じることはなかった。全く、皮肉な話だ。俺はノースサイド・ギャングに復讐を誓った。俺はアル・スワードの体を動かそうと手を伸ばした。しかし、ここで俺が撃たれてしまえば、アル・スワードの願望は叶わずに終わってしまう。俺は体勢を維持し、アル・スワードの脂肪と筋肉で体を囲んだ。すると、革靴と道の石が衝突する音が耳に響いた。万が一、アル・スワードの体が動かされでもすれば、俺たちは弾丸の嵐に争うこともできずに天国、いや、地獄へ召される。俺は今日が命日であると死を覚悟した。そして、銃声が鳴り響いた。俺はアル・スワードが遂に倒れると推測した。
しかし、俺の推測は命中しなかった。何故か、ノースサイド・ギャングが次々と倒れていった。俺はアル・スワードの脇から顔を出した。通りでは、既視感のあるSCP財団の指揮官がアサルトライフルを駆使して、ノースサイド・ギャングの一員を射殺していた。名札には、スティーヴン・ウォーカーと書かれていたが、左胸にSCP財団のマークが見当たらなかった。念入りに名札を見てみると、彼の名前の下には政策及び戦術計画担当大統領補佐官と記されていた。恐らく、天下り先か何かだろうが、トニー・ジャックマン博士の、何者かの血がかかった名札を持っている面だけが不可解だ。俺の頭の中で、トニー・ジャックマン博士が彼に殺されたかもしれないという考えがよぎった。俺はタイミングを見計らい、アル・スワードの重い体を横に動かして立ち上がった。ルークやシドも俺の行動に倣って立ち上がった。
ノースサイド・ギャングらは殲滅され、俺たちはアル・スワードの体を密かに引きずり、彼に存在が明らかなにならないよう逃走した。
1928年5月26日。
シド・キャシディはシカゴの薄暗い路地裏を歩いていた。その時だった。シドの背後からリチャード・デイヴィス・チャペルと、カスパー・メッツィンガーらしき人物が近づいてきた。2人はまるで存在感を消し去ったかのようにシドに歩み寄り、彼の腕を掴んだ。シドは抵抗しようとしたが、カスパーに首を叩かれ気絶した。
同年11月2日。
賭博場で賭けをしていた2人の廃人男性は価値品を交換した。その時、その価値品が謎の肉片に置き換わった。後にこの肉片はSCP財団に回収された。その肉片の正体は、シド・キャシディの物であることが分かった。
ノースサイド・ギャングのボスであるダイオン・オバニオンは賭博場で賭博を済ませてから、近くで同じように賭博をしていたジェンナ兄弟の元に向かった。ジェンナ兄弟とは、アンジェロ、アントニオ、マイク、ピーター、サム、ヴィンチェンツォの6人兄弟を指す密造酒業者である。ただし、ウイスキーの味は、質より量を優先していて、酷い物であった。オバニオンは言った。
「久しぶりだな。近頃、スピリットが製造しているとされるワクチン入り酒よりも、不味いウイスキーを製造しているジェンナ兄弟。量より質という酒の骨髄さえも分かっていないガキ。」
兄弟の中で1番性格が激しく粗暴なアンジェロは言った。
「この中で1番暴力的な俺に喧嘩売ってんのか?」
「お前が自ら名乗り出たんだろ。」
アンジェロは何かを察したような顔で言った。
「もしかして、借金の件で俺を脅してるのか?人をこんな風に追い詰めて楽しいか?」
「俺がマフィアだからだ。ガキには分からないよな。」
「マフィア?両足の長さが異なる障害者に言われたくないね。気持ちが悪い。そんな足で歩けてるのが不思議で仕方ない。」
「お前は女みてぇだな。話を違う方向に持っていくな。まあ、俺から逃げようとしても、無駄だ。俺はお前のサインが記された借金証明書を厳重に保管している。まあ、ガキは大人の話は分からないよな。なあアンジェロ、お前のお母さんが俺に金を渡せと言ってるぞ?」
「俺をガキ扱いしやがって。兄弟揃って全員大人だ。こちとら国とも契約を結べるほど頭が働く。」
「大人気取りのガキは俺みたいなボスの苦悩を知らない。兄弟で平和そうに金を稼ごうとしたって無駄だ。」
「兄弟を馬鹿にすんなよ。」
アンジェロはダイオン・オバニオンの頭を強く殴った。
「落ち着けおチビちゃん。」
アンジェロはダイオン・オバニオンの股間部や顎を殴った。ダイオン・オバニオンは少しの間を置いてから言った。
「大人を怒らせると、どうなるか分からせてやる。」
ダイアン・オバニオンはアンジェロの胸ぐらを掴み、その勢いで首を締めてから賭博場の床に叩きつけた。
「ガキがこんな風に育ったのには、生涯を共にしたお前ら兄弟にも責任がある。シチリアのガキどもは全員死にやがれ!」
ダイオン・オバニオンとジェンナ兄弟の喧嘩は賭博場にいた誰もが見ていた。アンジェロは目を開き、顔を赤らめた。アンジェロは公衆の面前で
自分自身を罵倒されたため、腹の底から怒りが込み上げていた。アンジェロは言葉では言い表せないほどの殺意に満ちていた。
同年11月3日。
アル・カポネの家に何者かが訪れ、扉を3回叩いた。アル・カポネは注意深く自室を見回してから、拳銃を懐に隠した。アル・カポネは自室の扉を開け、玄関に行き、扉越しに訪問者と会話を交わした。
「何者だ?」
「アンジェロ・ジェンナだ。」
「何か用か?賭博に連れていってやることもできる。」
「賭博はうんざりだ。」
「ならバーでも行かないか?風俗でも良い。」
「俺は真面目な話をしにここに来た。」
「そうか。」
アル・カポネは家の扉を開き、アンジェロを迎入れた。アル・カポネはすぐに扉を閉めた。
「リビングに設置されているソファーで寛いでいてくれ。」
アンジェロは廊下を歩き、リビングの扉を開け、ソファーを眺めた。
「随分とソファーが汚いな。」
「折角の来賓に迷惑をかけて申し訳ない。少しでも上質なソファーや物を買うために必要な金は母に渡しているんだ。この前バーテンダーに貰った赤ワインを出すから少々待っていてくれ。」
アル・カポネは早歩きでキッチンに向かい、箱に格納されている寝かせていた赤ワインを取り出した。アル・カポネはコルクを取り外し、中々の手捌きで赤ワインをワイングラスに注いだ。アル・カポネはキッチンの台から自分自身のワイングラスを取り出し、同じように赤ワインを注いだ。アル・カポネは皿を取り出し、ワイングラス2つをそこに置き、リビングに持っていった。アンジェロはランチマットを年季の入った机に敷き、ワイングラスを置いた。アル・カポネはアンジェロの反対側の席に座った。アル・カポネは早速ワインを一口飲んだ。
「真面目な話とは、どのような話だ。」
アンジェロは酒を一気に飲み干した。
「俺はダイオン・オバニオンに借金をしていた。昨日、兄弟全員で賭博をしていたんだが、俺は同じく賭博場にいたオバニオンに見つかった。そこで口喧嘩になり、俺は殺意が湧いた。」
アンジェロは今にも暴れそうになっていた。アル・カポネは薄汚い笑みを浮かべた。
「何故私に相談した?」
「オバニオンのライバルだから、この話に乗ってくれると思ったんだ。」
「その話とは一体全体。」
「その顔は何かを察した時の表情を浮かべている。オバニオンを暗殺するんだ。」
「実に面白い。では、彼の情報を元に彼の暗殺計画を立てる。細部まで拘泥るのがマフィアだ。」
1924年11月1日。
ダイオン・オバニオンはマフィアというキャリアとは裏腹に、自身で花屋を営んでいた。また、この日はダイオン・オバニオン直々に来店している日であった。アル・カポネとアンジェロはそれぞれ偽名を名乗り、来店した。アル・カポネはフィンリー・コックスを名乗り、アンジェロ・ジェンナはマイルズ・チェスターと名乗った。アル・カポネは言った。
「マイク会長の献花はどのような花にするべきか。」
アンジェロは言った。
「白い花がそれに相応しいと考える。」
「白菊はどうだ?」
「私的には白い百合が望ましい。」
「献花は私的な理由で選んではならない。間を取って、カーネーションを献花にしよう。」
「確かに。」
アンジェロは会計場所に行き、カーネーションを渡した。店員は値段を口にした。
「1万8000$だ。」
アル・カポネは言った。
「金は私が支払おう。」
アンジェロは言った。
「マイク会長の献花の金を払いたい。」
「ならば、9000$ずつ払うとしよう。」
その時、マイク会長という言葉を耳にしたダイオン・オバニオンは店を後にし、近くにいたフランチェスコ・イオエーレ、通称フランキー・イェールに近寄り、握手を求めた。恐らく、ダイオン・オバニオンはアル・カポネとアンジェロの存在に気付いたのだろう。フランキー・イェールは握手を受け入れた。しかし、イェールはダイオン・オバニオンの手を引っ張った。ダイオン・オバニオンは体勢を崩し、フランキー・イェールと同行していた2人のマフィアが彼に向けて銃を発射した。その弾丸は彼の胸と喉と頭に合計6発も命中した。彼は即死し、地面に倒れ込んだ。アル・カポネは十字架を立て言った。
「
ダイオン・オバニオンの暗殺後、アル・カポネ率いるシカゴ・アウトフィットに危機が訪れていた。シカゴ・スピリットの中尉であるジュリアス・ローリー・マクガランはシカゴ・アウトフィットに潜入していた。彼はソーティースと呼称され、恐れられていた。ソーティースはポケットに隠し持っている銃を持ち、密かに人を射殺していた。彼の任務はシカゴ・アウトフィットの内部情報をスピリットに知らせることである。
ソーティースはシカゴ・アウトフィットの資料が収納されている部屋に入り、その資料を眺めた。ソーティースはその資料を盗もうと画策したが、その行動は野暮だと思い、メモ帳に資料の内容を記した。黒いペンのインクがメモ帳の薄い紙に滲む。ソーティースは1枚目の資料を確認し、2枚目の資料もメモに取った。
その時、ソーティースの背後にシカゴ・アウトフィットの構成員が現れ静かに彼の頭に銃を突き立てた。ソーティースは頭に銃を突き立てられたまま拘束器具を用いて拘束された。シカゴ・アウトフィットの構成員は彼を部屋から追い出した。ソーティースは死を覚悟しながら廊下を歩いた。そして、ソーティースは構成員により監禁室に閉じ込められてしまった。
アル・カポネはジェンナ兄弟と共に賭博場にいた。アンジェロは言った。
「それでよ、最後にあいつが、シチリア生まれのガキどもは全員死にやがれ!と捨て台詞を吐いたんだ。」
兄弟は大いに笑った。アル・カポネは嫌な顔をしていた。
「死者の話は縁起が悪い。賭博が失敗する。しかも、その話は何回目だ?彼を暗殺してから数年経ち、俺たちは賭博を共にしているが、お前は毎回その話をしている。」
アル・カポが言い終わると、賭博場に足音が響いた。アンジェロはダイオン・オバニオンの足音を思い出し、冷や汗をかいていた。アル・カポネらの前に現れた者は、彼の部下であるオットーネ・トレヴィサンだった。
オットーネ・トレヴィサンの彼の頬骨は高く、顎のラインが非常にシャープで、全体的に彫りの深い、角張った輪郭をしている。オットーネ・トレヴィサンは眉をひそめてきて、強い意志を感じさせる鋭い眼差しでアル・カポネを見つめている。その視線は非常に力強い。彼の髪型はサイドを短く刈り上げた、トップにボリュームを持たせたウェービーなヘアスタイルである。また、スタイリッシュに整えられている。彼の唇は固く結ばれており、彼の決意の固さや厳しい性格を物語っている。彼はスリーピースのスーツを着用しており、重厚感を与えている。アル・カポネは言った。
「悪いな。ラッキー。今はこの7人と賭博を楽しんでいる。7は縁起が良い数字だ。賭博が成功するかもしれないんだ。」
オットーネ・トレヴィサンは非常に運が良いことから、しばしばラッキーと呼称されている。口を開いた。
「シカゴ・アウトフィットにスピリットの連中が現れました。」
アル・カポネの顔は楽しげな表情から冷酷な表情へと変貌した。
「誰だ?」
「ソーティースです。」
「ジュリアスめ。彼は今どこにいる?」
「監禁室です。」
「今すぐそこへ向かう。賭け事は終わりだ。」
アル・カポネは只者ならぬ雰囲気を醸し出していた。2人は早足で賭博場を後にした。通行人はアル・カポネを物珍しげに見つめていた。一同はシカゴ・アウトフィットの拠点の内の1つである醸造所に向かっていた。数分後、一同は醸造所に辿り着いた。醸造所にはシカゴ・アウトフィットの構成員らが待ち構えていて、アル・カポネを迎え入れた。オットーネ・トレヴィサンはアル・カポネを監禁室まで案内した。
監禁室には手錠で手を繋がれているソーティースが胡座をかいていた。ソーティースはアル・カポネの存在に気づくと、彼を睨んだ。オットーネ・トレヴィサンは言った。
「ソーティースよ、俺がいる限りお前は脱獄できない。」
ソーティースは不敵な笑みを浮かべた。
「何故だ?」
アル・カポネは冷酷な表情のまま答えた。
「彼は確率を改変するテュケキネシスを有している。すなわち、彼が監禁室の近辺にいる以上、お前が脱獄する可能性は皆無になるというわけだ。」
ソーティースは拘束用具で両手を縛られながらも、鉄格子を強く握り、爪で引っ掻いた。爪と金属が互いに削れ合う音が辺り一体に響き渡った。オットーネ・トレヴィサンはソーティースが鉄格子を爪で引っ掻く可能性を歪めた。すると、ソーティースはただ単に拘束用具で縛られた両手で鉄格子を強く握っているだけの無力な存在となった。オットーネトレヴィサンはソーティースをせせら笑った。そして、彼はタバコを取り出し火をつけた。
「手を挙げろ!」
SCP財団機動部隊π-1(シティ・スリッカーズ)と酒類取締局らアサルトライフルを2人に向けた。声を発したのは、酒類取締局で名を馳せているパット・ロシュであった。オットーネ・トレヴィサンは言った。
「パット・ロシュか。何年ぶりだ?」
「どうだろうな。元シカゴ市民の私が遂にお前を武力で制圧できる身分になるとは、光栄だ。下剋上が完了した。」
「SCP財団が背後にいなければ何もできない癖して。」
SCP財団機動部隊π-1(シティ・スリッカーズ)の指揮官は言った。
「これより、SCP-123-EX、ラッキーを収容する。」
「何のつもりだ?」
「現実改変者を悉く収容し、人類のために研究をするのが我々の役目だ。」
「多勢に無勢だ。マフィアはそんなことをしない。」
アル・カポネはオットーネ・トレヴィサンが時間を稼いでいる間に醸造所から脱出し、数人の構成員と共に次の拠点へ向かった。オットーネ・トレヴィサンは涙を堪えていた。機動部隊はオットーネ・トレヴィサンを監視してから、監禁室の鍵を開けた。機動部隊は彼を射殺しようと企んでいた。
その時、オットーネ・トレヴィサンがタバコと火がつけっぱなしのライターを落とし、その火がソーティースに燃え移った。ソーティースのボロボロの服に火が引火したのだ。ソーティースはその火を叩こうとしたが、逆に手にも火が燃え移った。ソーティースは一目散に逃げ回った。その様子を見たアイルランド系の構成員は彼に水をかけようとしたが、ソーティースはそれを油と勘違いし、彼らを射殺した。ソーティースは途中で減速し、床に転がり頭を強く打った。そして、ソーティースは失意のうちに世を去った。しかし、彼に引火した火は燃え続けていた。
オットーネ・トレヴィサンは不適な笑み浮かべた。機動部隊員は彼の腕を掴み、連行した。
シカゴ・スピリットのボスであるリチャード・デイヴィス・チャペルは、机に座り、シカゴに地図を眺めていた。彼はチェスの駒を2つ地図に配置し、黒い駒を倒した。
「SCP財団は我々シカゴ・スピリットの駒だ。SCP財団のおかげで酒の質は少し落ちたが、売り上げは上がった。利益について彼らは理解がある。他にも、彼らはライバルであるシカゴ・アウトフィットのボスの側近であるオットーネ・トレヴィサンを収容した。ア・ポーンとでも言うべきだろうか。」
リチャード・デイヴィス・チャペルは大きく口を開いてあくびをした。彼は席を立ち、部屋を出て行った。シカゴの地図の上に配置されている白い駒が影で黒みを帯び、揺れ動いた。
俺は眠い目を擦り、布団を退かしてからベッドから飛び降りた。俺は水道から出た水で顔を洗い、湿ったタオルで水を拭き取った。俺はハンガーに吊るされているダークトーンのスーツを着用した。俺はキッチンで、カスパーから授かったライ麦パンと、コーンブレッド、ポテトフライを取り出し、皿に適当に盛り合わせた。俺はフォークでポテトフライを味わった。久しぶりの塩味だ。この塩味の効いたポテトフライを酒のつまみにしたいところだが、俺は、2日酔いの影響で酒が飲めない。いや、シドが何者かに連れ去られて以降、行方をくらました影響だろう。
食事中、扉がノックされた。俺は口の中に入れたポテトフライをすぐさま噛み切り、廊下を通った。俺は扉越しに話しかけた。
「何の用だ?」
ルークは涙ぐみながら答えた。
「シドの墓見舞いだ。彼の葬式は彼がマフィアであるという理由だけで断られた。」
「マフィアは漢だ。そんなに泣くな。」
「お前も元気がないだろ?」
「まあ、21年にアル・スワードを失い、その3年後にシドも失ってしまった。どう立ち直れば良いのだろうか。」
「酒を飲んでも無駄、新たな仲間を加えても喪失感は拭えない。」
「墓に行き、別れを告げよう。わだかまりを無くすんだ。」
「同感だ。」
デフォーポストドクターは気絶から目覚めた。デフォーポストドクターは病棟を急いで出て行った。医者は言った。
「今出ていくとまた気絶するリスクが高まる。」
デフォーポストドクターは医者の忠告を無視した。デフォーポストドクターはサイト内でSCP財団の職員に声をかけた。
「忙しいところすまない。尋ねて良いか?」
SCP財団の職員は答えた。
「良いとも。かのトニー・ジャックマン博士の助手じゃないか。」
「彼が死んだことを覚えているんだが、それ以降気絶して何があったか分からないんだ。」
「私もうろ覚えなのだが、武装したマフィアが彼の口蓋垂を破壊し、弾丸の動きを巧みに利用して殺害した気がする。」
「マフィアだと?どのマフィアだ?」
「私には分からないが、SCP財団に攻撃を仕掛ける程度のマフィアなら、シカゴ・スピリットが妥当なのではないか?」
「スピリットめ。覚えてろよ。」
デフォーポストドクターは拳を強く握り締め、どこかに向かって走り出した。
ジュリアス・ローリー・マクガランの死体は、SCP財団が即時回収した後、スピリットに譲渡された。ダークトーンのスーツを着用した、円筒印章を持つ何者かが、彼の死体を眺めていた。彼は椅子に座って足を組んでいた。その時、彼の死体が置かれた部屋に黒紫色の煙幕が充満した。
煙幕が消えると、死体は手を挙げた。
「貴方は…。」
シカゴ・スピリット 骸骨 @matcha_latte42
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