第二十章 浄化の光

「終末の炉」の停止から、半年が経った。


 「緑区」の汚染は、劇的に改善していた。


 魔素の供給源が断たれたことで、残留汚染は自然に減少し始めていた。清一の土壌改良技術と組み合わせることで、浄化のペースは以前の五倍に跳ね上がった。


「進捗報告です」


 エルダが、清一の執務室に報告書を持ってきた。


「『緑区』浄化完了率——四十二%。このペースなら、目標の五年を、三年で達成できます」


「上出来だ」


 清一は頷いた。


 そして、窓の外を見た。


 王都の街並みが広がっている。かつて灰色に沈んでいた空気は、今は澄み渡っている。


 街角では、人々が笑い合っている。


 塵拾いギルドの活動は、もはや王国全土に広がっていた。王都だけでなく、地方の都市や村にも支部ができ、環境改善事業を行っている。


 かつて「塵拾い」と呼ばれていた人々は、今や「環境技術者」として尊敬されるようになっていた。


「レイドさん」


 エルダが、微笑みながら言った。


「あなたが——この世界を変えたんです」


「俺だけの力じゃない」


 清一は、首を横に振った。


「お前たちが——みんなが、一緒に戦ってくれたからだ」


 その時——


 執務室の扉がノックされた。


 開けると、リーゼロッテが立っていた。


「レイド。父上が、お呼びです」


   ◇


 王城の私室で、清一は国王と対面した。


 アルベルト三世は、以前よりもさらに痩せていた。病が進行しているのは明らかだ。


 だが——その目には、かつてない輝きがあった。


「レイド」


 国王は、微笑んだ。


「お前は——約束を、果たしてくれた」


「まだ、完了していません」


「だが、道筋は見えた。残りは、時間の問題だ」


 国王は、清一を見つめた。


「お前に——報酬を渡したい」


「陛下、金貨は既に——」


「金ではない」


 国王は、首を横に振った。


「お前に——爵位を与えたい」


 清一は、目を見開いた。


「陛下……」


「『環境衛生男爵』。それが、お前の新しい称号だ」


 国王は、椅子から立ち上がった。


「お前は、塵拾いから始まって、王国を救う英雄になった。その功績を——正式に、認めたい」


「……光栄です」


 清一は、深く頭を下げた。


「ですが——私には、まだやるべきことがあります」


「何だ」


「リーゼロッテ殿下の弟君——第五王子の治療です」


 国王の目が、わずかに揺らいだ。


「……そうだったな」


「『緑区』の浄化が進めば——王子の症状も、改善するはずです。魔素汚染が原因なら——」


「頼む」


 国王は、清一の手を握った。


「息子を——救ってくれ」


「必ず」


 清一は頷いた。


「必ず、救います」

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