第十八章 終末の炉
清一の報告を受けて、リーゼロッテはすぐに王城に戻った。
そして、国王に緊急の進言を行った。
「父上、『緑区』の汚染源が判明しました」
リーゼロッテは、清一から受け取った報告書を国王に渡した。
「旧魔術研究施設に、『終末の炉』と呼ばれる古代遺物が存在しています。十年前の実験で暴走し、今も魔素を放出し続けています」
国王は、報告書を読み、顔を歪めた。
「『終末の炉』……聞いたことがある。千年以上前の遺物だ。かつての魔法文明が、戦争兵器として開発したものだと——」
「その暴走が、『緑区』の汚染の原因です。炉を止めなければ、いくら周囲を浄化しても、汚染は止まりません」
「止められるのか」
「レイドが——塵拾いギルドの長が、方法を探っています」
国王は、しばらく黙っていた。
そして——
「……あの男に、任せる」
「父上?」
「他に、頼める者がいない」
国王は、疲れた顔で言った。
「聖堂は、もはや信用できない。王家の魔術師たちは、十年前の失敗で信頼を失った。残っているのは——あの塵拾いだけだ」
「……分かりました」
リーゼロッテは頷いた。
「レイドに、伝えます」
◇
清一は、「終末の炉」の解析に没頭していた。
施設への滞在は、一度に十五分が限界。だが、何度も通い詰め、少しずつデータを集めていった。
そして——三ヶ月後。
「分かった」
清一は、拠点の机に向かいながら呟いた。
目の前には、「分解鑑定」で得たデータをまとめた図面が広がっている。
「炉のコア部分——超高純度の魔素結晶。これが、エネルギー源であり、同時に暴走の原因だ」
エルダが、隣で話を聞いていた。
「どうすれば、止められるんですか?」
「結晶を——『分解』する」
清一は言った。
「俺の『分解鑑定』は、物質の構成要素を分析するだけじゃない。理論上は——分解そのものを、誘導できるはずだ」
「でも、それは——」
「危険だ。分かっている」
清一は、図面を睨んだ。
「結晶を分解する過程で、大量のエネルギーが放出される可能性がある。最悪の場合——爆発する」
「レイドさん……」
「だが、やるしかない」
清一は、立ち上がった。
「このまま放置すれば、汚染は永遠に続く。王国の北半分は、やがて人が住めなくなる」
清一は、エルダの目を見つめた。
「俺がやる。一人で」
「一人で!? そんな——」
「巻き添えを出すわけにはいかない。万が一のことがあったら——お前がギルドを引き継いでくれ」
「レイドさん!」
エルダの目に、涙が浮かんだ。
「私は——私は、あなたがいなくなったら——」
「泣くな」
清一は、微笑んだ。
「俺は、死ぬつもりはない。ただ——覚悟をしておけ、と言っているだけだ」
清一は、窓の外を見た。
北の空が、夕焼けに染まっている。
「……明日、行く」
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