1 巫女、見つかる

「父上?お話とは何でしょうか。」


「ソリオス、今日の月を見たか。」


「月、でございますか?今晩は半月に近かったかと。」


「では、月に関して不思議に感じたことは?何かなかったか?」


「特にはなかったように思いますが…強いて言うなら、少し光が弱かったことくらいでしょうか。書き物が少しやりづらかったです。」


「そうか。ソリオスももう10歳だからな。言わぬわけにいかないだろう、其方の…母について。」


「母上、についてでございますか?私も妹も小さいうちにご病気で亡くなったと…」


「いや、重要なのはどうして亡くなったのかではない。母が、エリシアが何をしていたかだ。其方の母は「月の巫女」だったのだ。」


月の巫女?母が巫女だったなんて聞いたことがない。月の魔術は遺伝するものではなく、ごく稀な満月の日生まれの子供に受け継がれるのだ。だからこそ、自分にも妹のソリュシアにも月の巫女の影は少しもない。


「月の巫女…では、母上は月に捧げられたということでございますか?」


「いや、私に嫁入りし王家となったため、王家が減ることを危惧して月捧げを避けていたのだ。しかし、月の光が弱くなりすぎ、国が危機に陥ってしまった。そこでやむなく、其方らが幼いうちに月捧げの儀を行ったのだ。しかし、エリシアは、今のこの国で最後の巫女だったのだ。他に王国が「月の巫女」と認められるほどの魔術を習得している満月生まれは、いない。」


「っ!ですがっ!月の巫女は必ずしも月捧げを行わなくとも国を守っていけるのではなかったのですか!?」


父はゆるりと首をふり、うつむいて言った。


「…「月の大巫女」だけだ、月の魔力に直接干渉する魔術を使えるのは。普通の月の巫女は、魔力の供給が追い付かなくなったら月捧げをするしか月の光を保てる方法がないのだ。」


「では今、我が国に「月の巫女」は…?」


「いない」


いない…?この国の植物はみな、月の光で育っていくのだ。それなのに、月を守る巫女がいない?となると、食料となる作物が取れず、国の滅亡一直線なのでは?


皇太子とはいえ幼いソリオスが自分の力でそんな結論を出したころ、父上の側近の一人が慌てつつもノックをして父上の自室に入ってきた。


「どうした?珍しいではないか、自室まで来るとは。」


「お話、中っ…申し訳、ありません…巫女が。「月の巫女」と呼べる者が見つかりました。」

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月明かりの守り手 戸塚 小夢(こゆ) @Koyu_minaraidesu

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