月明かりの守り手
戸塚 小夢(こゆ)
プロローグ 辺境から始まる物語
「今日はまた一段と月明かりが弱いですね、陛下。書き物をなさるのでしたらランプをお持ちいたしましょうか?」
「よい、今日はもう頭が回らぬ。代わりにソリオスを呼んできてはくれんか。」
「承知いたしました。…ですが、皇太子とはいえまだ幼子でございます。すでにお休みになられていましたら、無理に起こす必要はございませんね?」
「ああ。寝かせておいてやってくれ。…それと、月の巫女はまだ見つからぬか。」
「えぇ。各地の情報を集めてはおりますが、いまだ月の魔術を持つ者は見つかっておりません。」
「そうか。急かすようで悪いが、早急に見つかるよう尽力してくれ。」
「もちろんでございます。」
ー
「ねぇおかあさま。きょうのおつきさまは、ないてるよ。」
「あら、どうしてそう思うの?」
「いつもよりもひからないから。ちからがたりないよって、ないてるの。」
「ルミナエッタは想像力豊かなのね。きっと、芸術や音楽なんかも上手にこなすのでしょうね。」
「ルル、おえかきすきだよ!」
「えぇ、また明日、たくさんお絵描きしましょうね。おやすみ、ルル」
「おやすみなさい、おかあさま…」
ここはアウレルティア王国最北端の国境の街、ティア・ノースレン。代々アーベルク家が静かに隣国との国境を守ってきた、雪の街だ。
そんな静かな街に6年前、思いもよらぬことが起きた。
「月の巫女」の誕生。領主夫妻の間にできた赤子が、予定が大幅にずれ、満月の日に生まれたのだった。
「ルルは寝たかい?」
「えぇ。また、月明かりについてお話して寝ましたよ。」
「こんな…幼子でも例外はないのだろうか…ましてや、まだ自分の持つ魔術に気づかぬほどの小さな手に、王国の重荷を背負わせなければならないのだろうか。」
「やはり、こんな辺境でも王国の者はやってきてしまうのですか?」
「ああ。隣町はすでに騎士団がやってきたと聞いた。ここまで来るのも時間の問題だろう。」
「ルル…どうしてあなたなのでしょうね…」
辺境の雪の街で月の巫女が生まれていたとなれば、中央の街に連れていかれることは目に見えている。それをルルが望まなくとも。
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