第4話 誰もいない音

「…ねえ、行方不明になった人がいるって話知ってる?」

「行方不明?何それ、知らない」

「私も別のフロアの知り合いから聞いただけだから詳しくは知らないんだけど─」


「あ、私知ってるかも。出勤途中で消えた子の話じゃない?えーと、たしか3階の。客先のアポの時間に来ないからって連絡が来て、電話も繋がらないからそこの課長が自宅まで行ったっていう」

「こわっ。それでどうなったの?」

「その子、親とか親戚がいないらしくてさ。管理会社に連絡して鍵開けてもらったけど、特におかしなところもなくて本人の姿も見えないから警察に通報したんだって」

「それで?その人見つかってないの?」

「そうみたい。あちこちで話聞いたけど何も手がかりはなかったみたいだよ」


「自殺…ってことはないの?」

「ちょっとやめてよ、不謹慎でしょ」

「でも…」

「何か事件に巻き込まれたかもしれないでしょ。警察が動いてるんだから、そのうちニュースになるでしょ。ほら、もう休憩終わるよ」

「14時からの会議やだなー、絶対眠いし」

「コーヒー買ってく?」


社員食堂が一気にガラガラになる。

そこには食洗機の音だけが響いていた。

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