第3話 朝のこと
…そういえばあの人最近来ないな。
朝の通勤、通学ラッシュのレジをこなしながらふと思った。
駅の構内にあるコンビニなので、この時間は正直客の顔をはっきり見る暇もない忙しさだ。
それでもいつも同じ時間に同じものを買って行く客が多いので、馴染みの客というのは声や持ち物だけでも何となくわかるようになる。
最近来ないな、とわたしが思ったのはいつもミルクティーのペットボトルとチョコを買って行く女性客だった。
わたしが欲しかったあるブランドの限定デザインのパスケースを使っていることと、いつも『ありがとう』とお礼を言ってくれるので印象に残っていた。
見かけないな、と思ったがそれ以上深くは考えなかった。
単に引っ越してこの駅を使わなくなったんだろう。
わたしはそのことをすぐに忘れた。
…そういえばあの女の子見ないな。
あれ、今日は乗ってこないな、休みかな?と思ったのはいつのことだったか。
いつも乗る電車で、途中の駅からミルクティーとチョコの入ったレジ袋を持って乗ってくる女の子が若い頃に憧れていたアイドルに少し似ていて、可愛いなと思っていたのだ。
結婚して子供もいる身なので、その子とは話をしたこともないし、目があったことすらない。
あの女の子にしたって、自分のことなど気にも留めていないだろうし、仮に気に留めたとしていつも乗る電車で同じ席に座っているサラリーマンという程度のことだろう。
見かけなくなって半月くらいは経った気がするが、単に乗る車両を変えただけかもしれない。
この路線、痴漢が多いらしいしな。
朝のささやかな楽しみが減ったなと少し残念な気はしたが、それ以上あの子のことは考えなかった。
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