5-13

「じゃ、帰りはパウラもいることだし街道を通って行こう。

 さあ、ナズナ姫。オレと一緒の馬に乗りましょうか」


「は、はい…!」


ソルーシュに手を引かれて、ようやくナズナはパウラの前に姿を現した。パウラはじいっとナズナを凝視している。

 そういえば自己紹介がまだだった。見下ろす竜人族の女騎士の前におずおずと前へ行き、貴族の礼を取る。


「は、初めまして…!私はビスマルク公の娘、ナズナ=フォン=ビスマルクと申します…。本日は…えっと…」


 たどたどしく自己紹介するナズナを見て、パウラは肩を竦めた。

一応彼女の存在や大体の性格についてはヴィルヘルムやソルーシュ、そして彼女の父親であるジークから聞かされている。

パウラ自身、あまり愛想がいい方ではないので、彼女を怯えさせないように精一杯の努力をしつつ、騎士の礼を取りながら自己紹介した。


「初めまして、ビスマルク嬢。あたし…いえ、私はモニカ将軍率いる第三部隊に所属するパウラ=フランツと申します。

 貴方の父君であるビスマルク公の命により、ノイシュテルンよりお迎えに上がりました。これより、私も護衛としてお供致しますので、よろしくお願い致します」


「あ、ありがとうございます!その…出来たら…楽になさって頂けると嬉しいです…」


「ですが…」


ちらりと助けを求めるようにヴィルヘルムとソルーシュの方を見ると、彼らもナズナに同意するよう頷いた。


「パウラ、言う通りにしてあげてくれないかな。堅苦しい口調だと、ナズナが余計に緊張しちゃうからね」


僕もその方がいいし、とヴィルヘルムが一言付け加えるとパウラはすぐに改める。


「そういうことなら…えーっと、ナズナって呼べばいいかな?これからよろしく頼むよ」


パウラが普段の口調にしてくれたおかげで今度はナズナの表情が目に見えて明るくなる。


「は、はい!こちらこそよろしくお願い致しますね!」


はにかんだ笑みを見せてくるナズナにパウラの緊張していた表情が幾分か柔らかくなる。

 ヴィルヘルムの従妹の少女を間近で見たのはこれが初めてだ。

実際にこうして会うまでは、某ミッターマイヤー家令嬢のようなお高くとまった貴族令嬢のイメージしかなかったので、何だか拍子抜けといえば拍子抜けである。

それにこうして会ってみて、ヴィルヘルムやソルーシュが彼女を可愛がるのも納得出来る。出来るのだが、やはり何だかそれを複雑に思うのはパウラがヴィルヘルムに対して恋心を抱いているからだろう。

 過去に一度、ヴィルヘルムがあんまりこの従妹の話をするものだから、思い切って彼女に対する思いを尋ねたことがあった。

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